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3 乙女ゲーム世界の結婚事情(前)
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この世界の貴族の婚約・結婚は、前世に比べれば早いけれど、べらぼうに早いわけでもない。なぜなら男も女も、ある程度選ぶ権利が保証されており、選ぶためにはそれなりの年齢になる必要があるからだ。
女性の場合、社交界デビューする十六歳にはじまり二十歳くらいまでが、結婚相手を選ぶ年頃となる。決めるのにしばらく時間がかかり、さらに一年から二年ほどの婚約期間を経て結婚するので、多くの結婚は二十歳くらい。男性の結婚は少し力をつけてからのほうが好まれるので、それより数歳上になる。
そのような綺麗事が通用しない場合ももちろんあり、子どもの頃からほぼ相手が決められていて、他の異性を選ばせないよう人間関係を制限することや、嫌々年の離れた相手に嫁がされる場合もある。
けれど、多くの場合、家柄や年齢などの釣り合いがよい中から数人の婚約者候補と「仮のお付き合い」をしてから決めることができる。選択肢が少なすぎては意味があまりないし、多すぎると外聞が悪いということで大抵は三人から五人くらいに落ち着く。
この「仮のお付き合い」というのが乙女ゲームの世界らしいところだ。早ければ一年くらいの短い期間で見極めをしなければならない上に、お互いに候補が数人いるため、「仮のお付き合い」が同時並行になることも多々あるし、それが認められている。
さらに、仮の状態で試すことができる範囲がびっくりするほど広い。ぶっちゃけ、処女を守れればなにしてもいいというレベルである。相性を確かめるという名のもとに。
私は前世の記憶を取り戻したけれど、あくまでそれは知識を得たような感覚で、基礎となる性格や常識は今生のもののままだ。性格はあまり変わらなかったし、元々十一歳にしては大人びた思考だったため、大きな齟齬も感じなかった。萌えを得てテンションが上ったのと、ちょっと心の中の声がはしたなくなった程度だ。
ただ、子どもであるためにまだ教えられていなかった恋愛、結婚、そして性的な事柄に関しては、今生で学ぶ前に前世の記憶が入ってきてしまった形になる。
だから最初に思ったことは、「この世界の倫理観、緩っ!」だった。婚前交渉が普通だった前世でも、そういうことを複数人と並行してするのは浮気であり良くないことだと感じる。
まあ、乙女ゲームのハーレムエンドのためには、複数人と同時にそういういろいろをしながら関係を深めていく必要があったわけだけれど。(ただし、現実では、王や有力貴族で跡取りがなかなかできないといった事情がある場合以外は一夫一妻制だ。)
それでも、そうでない普通のハッピーエンドにも、他の攻略対象者に流されていちゃついているところを見られて嫉妬されるというイベントがあったし、個々のエロイベントも、かなり濃厚だったし、ルートによっては結構変態だった。
未婚の、婚約すらしていない男女なのに、それはどうなのだ。
前世の私は、フィクションならばわりとなんでもおいしくいただけてしまう質だったから、そういうあれこれも楽しめたけれど、現実で、今後の自分の人生にも起こりうることだと考えると、なかなかの衝撃である。
結構有力な伯爵家の娘としては、候補が少なすぎるのは体面上よろしくない。となると、最低三人は相手にしなければならない。年の離れた姉は、心を通じ合わせた相手のいる隣国へと早々に嫁いだから、この制度を経験しなかったというけれど、それだとシシリー様とお会いできなくなる。
(うん、私決めた。一生シシリー様のお側に仕えて生きていこう)
今まさに、「交流を深めている」最中の未婚の男女がそういうことをしているところに行きあってしまって、遠い目でそんなことを考えています。
そう、この世界、婚約者選びの制度に加えて、わりと性的なことについてオープンで、未婚の女性が婚活に忙しい王宮では特に、しょっちゅうこういう状況が垣間見られるのである。
さすがに幼い王女の目に触れるところでは気をつけているようだったが、今回はシシリー様が予定外の行動をして偶然見つけてしまったのである。
女性の場合、社交界デビューする十六歳にはじまり二十歳くらいまでが、結婚相手を選ぶ年頃となる。決めるのにしばらく時間がかかり、さらに一年から二年ほどの婚約期間を経て結婚するので、多くの結婚は二十歳くらい。男性の結婚は少し力をつけてからのほうが好まれるので、それより数歳上になる。
そのような綺麗事が通用しない場合ももちろんあり、子どもの頃からほぼ相手が決められていて、他の異性を選ばせないよう人間関係を制限することや、嫌々年の離れた相手に嫁がされる場合もある。
けれど、多くの場合、家柄や年齢などの釣り合いがよい中から数人の婚約者候補と「仮のお付き合い」をしてから決めることができる。選択肢が少なすぎては意味があまりないし、多すぎると外聞が悪いということで大抵は三人から五人くらいに落ち着く。
この「仮のお付き合い」というのが乙女ゲームの世界らしいところだ。早ければ一年くらいの短い期間で見極めをしなければならない上に、お互いに候補が数人いるため、「仮のお付き合い」が同時並行になることも多々あるし、それが認められている。
さらに、仮の状態で試すことができる範囲がびっくりするほど広い。ぶっちゃけ、処女を守れればなにしてもいいというレベルである。相性を確かめるという名のもとに。
私は前世の記憶を取り戻したけれど、あくまでそれは知識を得たような感覚で、基礎となる性格や常識は今生のもののままだ。性格はあまり変わらなかったし、元々十一歳にしては大人びた思考だったため、大きな齟齬も感じなかった。萌えを得てテンションが上ったのと、ちょっと心の中の声がはしたなくなった程度だ。
ただ、子どもであるためにまだ教えられていなかった恋愛、結婚、そして性的な事柄に関しては、今生で学ぶ前に前世の記憶が入ってきてしまった形になる。
だから最初に思ったことは、「この世界の倫理観、緩っ!」だった。婚前交渉が普通だった前世でも、そういうことを複数人と並行してするのは浮気であり良くないことだと感じる。
まあ、乙女ゲームのハーレムエンドのためには、複数人と同時にそういういろいろをしながら関係を深めていく必要があったわけだけれど。(ただし、現実では、王や有力貴族で跡取りがなかなかできないといった事情がある場合以外は一夫一妻制だ。)
それでも、そうでない普通のハッピーエンドにも、他の攻略対象者に流されていちゃついているところを見られて嫉妬されるというイベントがあったし、個々のエロイベントも、かなり濃厚だったし、ルートによっては結構変態だった。
未婚の、婚約すらしていない男女なのに、それはどうなのだ。
前世の私は、フィクションならばわりとなんでもおいしくいただけてしまう質だったから、そういうあれこれも楽しめたけれど、現実で、今後の自分の人生にも起こりうることだと考えると、なかなかの衝撃である。
結構有力な伯爵家の娘としては、候補が少なすぎるのは体面上よろしくない。となると、最低三人は相手にしなければならない。年の離れた姉は、心を通じ合わせた相手のいる隣国へと早々に嫁いだから、この制度を経験しなかったというけれど、それだとシシリー様とお会いできなくなる。
(うん、私決めた。一生シシリー様のお側に仕えて生きていこう)
今まさに、「交流を深めている」最中の未婚の男女がそういうことをしているところに行きあってしまって、遠い目でそんなことを考えています。
そう、この世界、婚約者選びの制度に加えて、わりと性的なことについてオープンで、未婚の女性が婚活に忙しい王宮では特に、しょっちゅうこういう状況が垣間見られるのである。
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