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第35話 本心
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「闇ギルドを排除する、だと……?」
「ええ、その通りですわ。お父様」
脅威になり得るものは、残らず摘み取る。
今回の件で双子にとって脅威となるのは、間違いなくベッケン率いる闇ギルドの連中。
ならば、奴らを纏めて排除してしまえばいい。
二度と手出しさせないよう、徹底的に奴らを監獄の中に閉じ込めてしまえばいい。
悪いことではない。
むしろ犯罪者の数が減って好都合だ。
──だったら何を躊躇うことがある?
私は私のために、そして双子のために平穏を望む。
そのためだけに私はこの国に蔓延る裏社会の連中を消す。
「彼らを排除するには、お父様の協力が必要なのです。どうか私のわがままを聞き入れてくれないでしょうか?」
可能ならば今すぐ脅威を取り除きたい。
しかし、雑魚の集まりだろうと『闇ギルド』の連中を全員相手にするには規模が大きい。流石の私でも全てを把握するのは困難を極める。
強行突破で成し遂げることは可能だが、私の理想は全員の排除だ。
連中を一人も逃さないためには、人手が要る。だから父親を頼ることにした。
「私は、何をすればいい……」
「今回の件はお父様が決断したと証言していただければ。それと幾人かの兵をお貸しください。……そうですね。十名から二十名ほどが好ましいです」
「それだけか? それだけでいいのか?」
「はい。問題ありません」
大部分の占領は私と、私率いる暗殺ギルドのメンバーに任せることにする。
借りた戦力を無駄な戦いに投じるわけにはいかないので、彼らには数カ所あるっと予想される出入り口を見張ってもらい、騒ぎを聞きつけて逃げ出した連中の仲間を取り押さえてもらう。
──逃げ場を徹底的に潰す。
連中はいわゆる『袋の鼠』というやつだ。
「我が娘ながら、恐ろしいことを考える」
連中に慈悲の欠片も与えない私の計画を聞き、父親の表情は引き攣っていた。
「だが、私の証言というのは?」
「今回の件は、他に存在する闇ギルドにも少なからず影響を与えるでしょう。もし反感を持たれた場合、実行したのが公爵家当主であるお父様であると知られれば、その者達への抑制にもなります」
私がこの件を率いていたと知られれば、どうせ子供だからと侮られるだろう。逆に子供がこんなことをしたと興味を持つ者も出る可能性があり、余計に変な虫が湧くかもしれない。
それは面倒だ。非常に面倒だ。
「……はぁ……」
と、父親は私を見つめて今日一番の盛大な溜め息を吐いた。
「…………なぁカナリア。流石の私も昔はここまで酷くはなかったよな?」
酷いとは、酷い言われようだな。
「昔のことなので詳しくは覚えていませんが、誤差ではなくて?」
母親も母親で、かなり適当だ。
「そうか。誤差か」
納得していいのか、我が父よ。
「とにかくわかった。私や陛下も最近の闇ギルドが見せる横暴な動きには対処すべきだと思っていたところだ。纏めて牢獄に突っ込めるのならば、喜んで協力させてもらおう」
聞けば、裏社会に対しては前々から監視体制を続けていたらしい。
処罰したいところだが、勢力を大きくされてしまったせいで影響力を与えてしまった。生半可な気持ちで処罰に動けば、被害を大きく受けるのはこちら側だ。
街中で兵士と闇ギルドの抗争が起きるのは最も避けるべきことであり、騎士や兵士を多く投入して騒ぎを大きくすることも出来ない。
そのため監視体制を続けるしかなかったと、父親は悔しさに顔を歪めながら教えてくれた。
「シエラ。賢いお前のことだ。すでに理解していると思うが、闇ギルドは想像以上に厄介な相手だ。決して相手を油断することなく、最後まで気を抜かずに行動してくれ。お前が怪我すれば──」
父親はそこで言葉を中断し、顔を俯かせて小刻みに震えた。
「お前が怪我をすれば俺が闇ギルドの全てを滅ぼすからな!!」
「いや、むしろありがたいのですが……」
一瞬「むしろ怪我した方が良いのでは?」と思ってしまったが、父親のマジな顔を見て流石にそれはやめよう。怪我無しで帰還しようと内心強く決意した。
本当に怪我をしてしまったら父親が暴走してしまう。
大怪我なんてした暁には……考えたくないな。
「私の方でも色々と動く。遅くても三日。それまで待ってくれるだろうか?」
「かしこまりました。では三日後。良い知らせをお待ちしています」
要件は全て伝えた。
これ以上は邪魔になると考え、腰をあげる。
「ああ、そうだ。最後に一つ聞かせてほしい」
「はい? なんでしょう?」
「どうしてお前は、あの双子にそこまでする? もうすでにあの子達が私達の家族だということは認める。だが、やはり元は赤の他人なのだ。手放すだけで面倒事に巻き込まれる心配はないのだぞ?」
…………サイレスにも同じことを聞かれたな。
父親にはすでに私が育てる。私があの子達の親代わりとなる。と言ってある。
つまり、彼が聞きたいのはそれ以上の理由。
私が真に抱いている『本音』を望んでいるのだろう。
「──ムカつくんですよ」
私はポツリと、小さく語り始めた。
「あの子達に何の罪もない。人の欲を満たすという理由のために家族を殺され、同族を殺され、何も知らない地に運ばれた。逃げ出さないように暴力を振るわれ、叫ばないように助けを呼ばないようと喉を潰されていた」
私はあの時、確かな憤りを感じていた。
「人の不幸を嘲笑い、人の幸せを奪う。そんな奴らを見ていると虫唾が走るんです。
そういう奴らがこの世にのさばっていることが許せない。
それで金を手に入れていることが許せない。
幸せと自由を奪った金で欲を貪っている連中を許せない。
そして何より──」
荒ぶる感情に呼応して、ドス黒い魔力がオーラとなって内側から漏れ出した。
二人分の息を飲む音。
私は閉じていた瞳を──静かに開いた。
「私の子供達に手を出した。その行為を許せるほど、私の器は広く出来ていないのです」
「ええ、その通りですわ。お父様」
脅威になり得るものは、残らず摘み取る。
今回の件で双子にとって脅威となるのは、間違いなくベッケン率いる闇ギルドの連中。
ならば、奴らを纏めて排除してしまえばいい。
二度と手出しさせないよう、徹底的に奴らを監獄の中に閉じ込めてしまえばいい。
悪いことではない。
むしろ犯罪者の数が減って好都合だ。
──だったら何を躊躇うことがある?
私は私のために、そして双子のために平穏を望む。
そのためだけに私はこの国に蔓延る裏社会の連中を消す。
「彼らを排除するには、お父様の協力が必要なのです。どうか私のわがままを聞き入れてくれないでしょうか?」
可能ならば今すぐ脅威を取り除きたい。
しかし、雑魚の集まりだろうと『闇ギルド』の連中を全員相手にするには規模が大きい。流石の私でも全てを把握するのは困難を極める。
強行突破で成し遂げることは可能だが、私の理想は全員の排除だ。
連中を一人も逃さないためには、人手が要る。だから父親を頼ることにした。
「私は、何をすればいい……」
「今回の件はお父様が決断したと証言していただければ。それと幾人かの兵をお貸しください。……そうですね。十名から二十名ほどが好ましいです」
「それだけか? それだけでいいのか?」
「はい。問題ありません」
大部分の占領は私と、私率いる暗殺ギルドのメンバーに任せることにする。
借りた戦力を無駄な戦いに投じるわけにはいかないので、彼らには数カ所あるっと予想される出入り口を見張ってもらい、騒ぎを聞きつけて逃げ出した連中の仲間を取り押さえてもらう。
──逃げ場を徹底的に潰す。
連中はいわゆる『袋の鼠』というやつだ。
「我が娘ながら、恐ろしいことを考える」
連中に慈悲の欠片も与えない私の計画を聞き、父親の表情は引き攣っていた。
「だが、私の証言というのは?」
「今回の件は、他に存在する闇ギルドにも少なからず影響を与えるでしょう。もし反感を持たれた場合、実行したのが公爵家当主であるお父様であると知られれば、その者達への抑制にもなります」
私がこの件を率いていたと知られれば、どうせ子供だからと侮られるだろう。逆に子供がこんなことをしたと興味を持つ者も出る可能性があり、余計に変な虫が湧くかもしれない。
それは面倒だ。非常に面倒だ。
「……はぁ……」
と、父親は私を見つめて今日一番の盛大な溜め息を吐いた。
「…………なぁカナリア。流石の私も昔はここまで酷くはなかったよな?」
酷いとは、酷い言われようだな。
「昔のことなので詳しくは覚えていませんが、誤差ではなくて?」
母親も母親で、かなり適当だ。
「そうか。誤差か」
納得していいのか、我が父よ。
「とにかくわかった。私や陛下も最近の闇ギルドが見せる横暴な動きには対処すべきだと思っていたところだ。纏めて牢獄に突っ込めるのならば、喜んで協力させてもらおう」
聞けば、裏社会に対しては前々から監視体制を続けていたらしい。
処罰したいところだが、勢力を大きくされてしまったせいで影響力を与えてしまった。生半可な気持ちで処罰に動けば、被害を大きく受けるのはこちら側だ。
街中で兵士と闇ギルドの抗争が起きるのは最も避けるべきことであり、騎士や兵士を多く投入して騒ぎを大きくすることも出来ない。
そのため監視体制を続けるしかなかったと、父親は悔しさに顔を歪めながら教えてくれた。
「シエラ。賢いお前のことだ。すでに理解していると思うが、闇ギルドは想像以上に厄介な相手だ。決して相手を油断することなく、最後まで気を抜かずに行動してくれ。お前が怪我すれば──」
父親はそこで言葉を中断し、顔を俯かせて小刻みに震えた。
「お前が怪我をすれば俺が闇ギルドの全てを滅ぼすからな!!」
「いや、むしろありがたいのですが……」
一瞬「むしろ怪我した方が良いのでは?」と思ってしまったが、父親のマジな顔を見て流石にそれはやめよう。怪我無しで帰還しようと内心強く決意した。
本当に怪我をしてしまったら父親が暴走してしまう。
大怪我なんてした暁には……考えたくないな。
「私の方でも色々と動く。遅くても三日。それまで待ってくれるだろうか?」
「かしこまりました。では三日後。良い知らせをお待ちしています」
要件は全て伝えた。
これ以上は邪魔になると考え、腰をあげる。
「ああ、そうだ。最後に一つ聞かせてほしい」
「はい? なんでしょう?」
「どうしてお前は、あの双子にそこまでする? もうすでにあの子達が私達の家族だということは認める。だが、やはり元は赤の他人なのだ。手放すだけで面倒事に巻き込まれる心配はないのだぞ?」
…………サイレスにも同じことを聞かれたな。
父親にはすでに私が育てる。私があの子達の親代わりとなる。と言ってある。
つまり、彼が聞きたいのはそれ以上の理由。
私が真に抱いている『本音』を望んでいるのだろう。
「──ムカつくんですよ」
私はポツリと、小さく語り始めた。
「あの子達に何の罪もない。人の欲を満たすという理由のために家族を殺され、同族を殺され、何も知らない地に運ばれた。逃げ出さないように暴力を振るわれ、叫ばないように助けを呼ばないようと喉を潰されていた」
私はあの時、確かな憤りを感じていた。
「人の不幸を嘲笑い、人の幸せを奪う。そんな奴らを見ていると虫唾が走るんです。
そういう奴らがこの世にのさばっていることが許せない。
それで金を手に入れていることが許せない。
幸せと自由を奪った金で欲を貪っている連中を許せない。
そして何より──」
荒ぶる感情に呼応して、ドス黒い魔力がオーラとなって内側から漏れ出した。
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