71 / 78
第69話 魔法のお勉強
しおりを挟む私は忙しい。
時間が無いからと、魔法具の製作ばかりをやっているわけにはいかない。
「それじゃ、特訓を始めるわよ」
「「おねがいします!」」
元気な声が、中庭に響く。
今日は晴天。
双子に稽古を施すには絶好の日だ。
「それじゃあ、まずは基礎知識から覚えていきましょう」
本来、二人に魔法のことを教えるのは誕生日を過ぎてからということになっていた。
だが、いつ命を狙われるかもわからない以上、力を付けるのは早めにやっておいた方が良いということになり、コンコッドの授業が終わった後の残った時間に、少しづつ基礎を教えていこうということになったのだ。
「魔法を操るには、まず最初に魔力を感じなければいけないわ」
「シェラローズさま、まりょくって、なに?」
バッと手を挙げ、ティナは首を傾げた。
「…………うん。まぁそうなるわよね」
双子は魔法に関わったことがないはずだ。
それを引き起こす元となる魔力を知るわけがない。
しかし、どうやって説明したものか……。
「魔力というのは、二人の中にも流れているのよ」
「わたしたちの?」
「なかにも?」
「ええ。今日はそれを感じ取れるまで、少しづつ魔力に慣れていきましょう」
「「はーい!」」
魔力には二種類ある。
一つが体内に宿る魔力。
もう一つが大気中に漂う魔力だ。
これらは使い分けが大切となる。
まず体内の魔力だ。
魔法を学ぶ者は、まず最初にこちらから勉強することになる。
理由は単純で、大気中のものよりも、体内に宿るものの方が魔力を感じ取りやすいからだ。
魔法はまず魔力を感じ取れなければ、何もかもが不可能となる。いきなり魔法を使おうとするのではなく、自分の力に触れることが、偉大なる魔法を学ぶ第一歩となるのだ。
「目を閉じて、自分の体に集中してみて。胸に手を当てて念じるの。そうしたらポカポカした光が見えてくる。それが魔力の源よ」
「…………うーん……」
「…………わからない」
「まぁ、そうよねぇ」
いきなりやってみろと言って、出来るとは思わない。
私の場合は気が付いたら魔力を自由に操れていた、いわゆる『天才気質』というものだったので、そこら辺の苦労はわからない。だから配下が言っていたことを思い出し、双子が魔力を感じられるように私も出来る限りの助力をしている。
「二人とも、これを見て」
私は両手を突き出し、その手に魔力を集合させる。
すると──
「ひかった!」
「まほう!」
反応がいちいち面白くて、私は微笑んだ。
久しぶりに目にする魔法に瞳を輝かせ、嬉しそうに尻尾を振っている姿はとても可愛いが、残念ながらこれは魔法とは呼べない。
「これが魔力よ。私の手を握ってみなさい」
「ポカポカ!」
「あったかい!」
「これが魔力よ。二人の中にも必ず、これに似たものがあるわ。感覚が掴めたら同じものを探してみなさい」
実はこれ、とても難易度は高い。
普通は視認できない魔力を無理矢理、可視化させているのだ。
消費魔力は凄まじいし、細かな制御も必要となる。
これを可能にするためには、回数を重ねて慣れる以外に方法はない。
私が本気を出せば、一年間は可視化させたままにすることが可能だが、この時代の普通の魔法使いは可視化させることも不可能だろう。
ちなみに、双子には魔力の可視化を習得してもらう。
一番身近に魔力を感じられて、なおかつ精密な制御を学べるのだ。これ以上に基礎を学ぶ方法は他にない。
制御を誤ってしまえば、魔力が暴走して爆発するが……そこは私が双子の魔力に干渉して抑え込めばいいだけの話だ。何も心配することはない。
「──あ!」
と、その時、ティアが驚いたような声を発した。
耳がピコンと伸びたが、すぐにそれはシュンと垂れ下がった。
「ティア。どうしたの?」
「……ポカポカ、みつけたの……でも、どこかにいっちゃった」
「…………え?」
やってみろと言ってから、まだ数分しか経っていない。
それなのに、もう魔力を見つけ出しただと?
──これは面白い。
私は内心、ほくそ笑む。
「その調子で魔力を探し続けなさい。大丈夫。焦らず、ゆっくりと自分の中身を見続けるの。そしたらまた必ず魔力を感じられるわ」
「うんっ!」
よく出来ましたと頭を撫でたら、ティアは嬉しそうに頷き、はにかんだ。尻尾もブンブンと大きく揺れて、ちょっとだけ風が巻き起こっている。
「……むぅ、ティアばかり、ズルい」
「ティナも出来たら撫でてあげるわ。だから頑張って」
「ティナもまけないもん! シェラローズさまにナデナデしてもらうのは、わたしなの!」
「ティアだってまけない。ティナより、いっぱいナデナデしてもらうの!」
──あれ? 目的変わっていないか?
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?
山咲莉亜
ファンタジー
ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。
だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。
趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?
ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。
※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!
没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました
藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。
逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、
“立て直す”以外の選択肢を持たなかった。
領地経営、改革、そして予想外の縁。
没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。
※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる