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第70話 双子の戦い
しおりを挟む魔力の勉強をしていたはずが、いつの間にかどちらが多く私に撫でてもらうかの対決になっていた。
突っ込みたいところはあるが、撫で撫で程度でやる気を出してくれるのなら、それはそれで問題ない。
双子の頭を撫でると、私は癒される。
それで双子もやる気を出してくれる。
ついでに魔力の感覚を覚えてくれる。
一石三鳥だ。
「二人とも、張り合うのはいいことだけど、休憩はしっかりと取るように。無理して倒れた子にはブラッシングしてあげないからね」
「「──っ!?」」
バチバチと視線で戦っていた双子は、私がそう言った瞬間、首が取れるのではないかと心配になる勢いで、こちらを振り向いた。
「いや、そんな涙目にならなくても……ちゃんと安全に頑張ったら、いつも以上に長くブラッシングしてあげるわよ」
「「──っ!」」
次はこくこくと、何度も頷いていた。
やはり首が取れるのではないかと心配になる。
「ふふっ、そんなに嬉しそうにしてくれるなら、そうね……最初に課題を達成できた方には、特別に私自らマッサージしてあげようかしら」
「ティア、がんばる!」
「それ、ティナ……ふり。ティアにはかてないよ……」
拳を握ってやる気を出すティアに対して、まだ魔力を掴めてすらいないティナはしょんぼりと落ち込んでいた。
「あら、ティナはやる前から諦めるの?」
少し芝居めいた口調で話すと、ティナの耳が僅かに動いた。
「困難にも立ち向かっていく強い子が、私は好きなんだけどな。ティナはそれが出来ないのか、残ね──」
「ティナもやるもん! ぜったいにまけないもん!」
「……ええ。その意気よ」
自分は一向に感覚を掴めないのに、双子の姉の方はすでに感覚を掴めそうだ。
そのことに劣等感を抱くのは当然のことだ。
だが、それをどうやって乗り越えるか、どこまで張り合って頑張れるか。
私はその先の頑張りに期待したいと思っている。
更なる闘争心を燃やすティナの強い心を、私は評価したい。
──でも、流石にティアの圧勝よね。
厳しいことだが、ティアの魔法適性は素晴らしいものだ。
未だに魔力の片鱗すら掴めていないティナでは、勝ち目は無いだろう。
──どうやって慰めてあげようかしら。
私は内心、この後のことを考え始める。
このままではマッサージ券を手にするのはティアだ。
もちろん、ティナは負けたことに落ち込み、マッサージ無しという事実に機嫌を悪くさせるだろう。
実力が物を言う勝負の世界なのだから、甘やかすべきではない。
それは理解しているが、それでもティナを慰める何かをしてあげたいと思うのは、私が優しすぎるせいなのだろうか?
いや、母親ならば誰でも甘やかすに決まっている。
だってうちの子はこんなに可愛いのだ!
そんな子を悲しませるなんてことを、母親が出来るわけない!
「シェラローズさま?」
変に思われたのか、ティナは首を傾げた。
……しまった。
流石に見つめ過ぎたか。
「何でもないわ。まだ感覚を掴めていないティナは、掴めるまで私の手を握っていなさい」
「うんっ!」
そう言った瞬間、ティナは私に抱き付く勢いで走ってきた。
ぎゅーっと手を握られ、ティナは嬉しそうに顔を綻ばせる。
「あーーーーーーーーーっ!」
と、そこで叫んだのはティアだ。
「どうしたの? 急に叫んで……」
「ティアも、まりょくわからなくなっちゃった。だからシェラローズさま、おてて……にぎっていい?」
「え、でも……さっきまで順調だったじゃない。急に忘れるなんて」
「このままだとティナにまけちゃう! ティアもおててつなぎたい!」
そう言い訳するティアの視線は、今も繋がれている私とティナの手に注がれていた。
──なるほど、そういうことか。
彼女の意図に気が付いた私は、小さく溜め息を吐き出した。
「…………仕方ないわね。ほら、満足するまで握っていいわよ」
「うんっ!」
こうして右手にティア、左手にティナという、いつも通りの配置になった。
「ティア、ずるい……むむむ……」
「ティナだけに、いいおもいさせない」
両側からバチバチと熱い視線を感じるが、私はあえて気づかないふりをした。
──可愛ければそれでいい。
私はそう思うことにして、今日の夕食は何かなぁと、他人事のように空を見上げるのだった。
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