双璧の転生者

ミケメコ

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西の転生者

35.消去法で

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 システィーアはゼネルと一緒に食堂にいた。
 昼食を取りに戻ってきたのだが、システィーアは思いがけない出会いに諸手をあげて喜んだ。
 まさか食堂のメニューにおにぎりがあるだなんて!
 満面の笑顔でおにぎりを口に運んでいると、向かい席に座っていたゼネルが微笑ましいものを見る目でシスティーアを見る。
「それをそんなに美味しそうに食べる奴、初めて見たぞ。システィーアは上がってきた情報と随分違うな」
「情報?」
 口の中身を飲み込んでから、システィーアはゼネルの方をちらと見た。それからまたすぐにおにぎりを口へと運ぶ。
「次代の壁の管理者を捜索させた時に上がってきた情報だ。今回はすぐに見つかったから、本当に良かった。下手すると何年も行方が分からなくて、その間に死亡してたなんてこともあったらしいからな」
 笑いながらそんなことを言っているが、笑えるような内容ではない。
「情報ってもしかして、我が儘で癇癪持ちとかですかね?」
「よく知っていたな!」
「最近同じような話を別のところで聞かされたので、もしやと思いまして」
「そうか、そうか。まさか、うちのが情報集めに失敗するとは思わなかったけどな。だがまあ、情報通りではなくて良かったよ」
 ゼネルはそう言って分厚いハムの入ったサンドイッチをひょいっと口に運ぶ。それから視線を少し上にあげて、空いてる方の片手を上げた。
 なんだろう、とシスティーアが振り返るとサーティスの姿があった。朝食時と同じ、清楚そうな女性を連れたサーティスは、システィーアの隣の椅子に腰掛けた。
「終わった」
「そうか、お疲れ。どうだった?」
 サンドイッチを飲み込んだゼネルが、一度システィーアを見てからサーティスに視線を戻す。
「今のところは問題ない」
「そうか」
 首を傾げるシスティーアに、ゼネルが視線を移した。
「システィーア、午前中に話したと思うが、今、次代の壁の管理者を失うわけにはいかない。壁の管理者候補はまだ未成年だから、少しサーティスに管理神官達を調べてもらった」
「え?」
 システィーアは驚いてサーティスを見た。
「管理神官達はシスティーアの言う通り、リーティアに傾倒しすぎていた。理由は多々あるが、根本は火のところが集めた情報だろう」
「うちが原因だったかー⋯⋯」
 サーティスの話を聞いて、ゼネルが額を抑える。
「システィーアの悪い噂を信用できる情報源から聞いて、鵜呑みにしていた。それに加えて、リーティアの功績を比較していた。さらにそこに、リーティアの体調不良が重なった。見たところ、精神的に少し不安定になっていたから、原因はそれだろう」
「不安定、か。婚約者でも呼んでおくか」
 システィーアは、ばっと顔を上げて二人を交互に見た。
「リーティア、婚約者がいるんですか⁈」
 ゼネルが少し驚いた顔で、システィーアを見る。
「珍しいことではあるまい? システィーアにも婚約者候補がいるだろう?」
 システィーアは押し黙った。
 確かにそうだが、そうではない。リーティアに、ゲームが始まる時期より前に、婚約者が出来ていることに驚いたからだ。
 二年くらいずれてはいるが、もう攻略済みということになる。
 そういえば、主人公は転生者設定だった。これだけずれるということは、それだけ何かを変えたということなのかもしれない。
 システィーアはちらりとゼネルを見た。
 婚約者を呼んでおくか、とゼネルは言っていた。つまり、主人公の相手はゼネルではない。
 確か、他の攻略者は、クラングラン第三王子ファウゼル、クラングラン宰相の長男カインベル、フォンベルツ公爵家跡取のライオット、水の管理者のディゼアだったはずだ。
 だが、システィーアが母国を出て数日しか経っていない。弟に婚約者はいないし、ファウゼルとカインベルはシスティーアの婚約者候補である。だから、クラングランにいる攻略対象者は違うはずだ。
 となると、残るは⋯⋯。
「リーティアのお相手って、ディゼアですか?」
 ゼネルの目が点になる。
「何故そこでディゼアがでる?」
 驚いてるゼネルの代わりに真顔のサーティスが尋ねてきた。
「え? 消去法で⋯⋯違うんですか?」
「誰を消したのかは敢えて聞かないが⋯⋯リーティアの婚約者は、彼女がここに来る前から決まっていたぞ」
 復活したゼネルの言葉に、今度はシスティーアがフリーズした。
 つまり、何故かはわからないが、主人公は攻略対象者以外の人と婚約している。
 もしかすると、中央へ二年も早く連れて来られたのは、それが影響しているのかもしれない。
 そう思ったところで、システィーアはハッとした。
 主人公は転生者設定なのだ。
 この世界が崩壊することを知っていたとゼネルは言っていたから、ゲームのことも知っていることになる。その上で、攻略対象者以外の男性を選んだ。
 となると、世界崩壊を防ぐことができるであろうハッピーエンドを進んでいないということだ。
 それともシスティーアが知らない隠しキャラでもいて、その人を婚約者としているのだろうか。
 こうやってもやもやと考えているより、主人公と話すのが一番早いだろう。
 だが、どうしても気が進まない。前世で読んだ漫画や小説の中で、転生者設定のキャラと言えば話の通じない人や悪女など、怖い人が割といたからだ。
 でも、だが、とシスティーアが堂々巡りをしていると、ぽんと肩に手を置かれた。
「システィーア?」
 サーティスの手だった。
 呼ばれて顔を上げると、彼の前にはいつの間にか昼食が置かれていた。
「午後は私の宮へ」
「え?」
「聞いてなかったのか?」
 システィーアが向かいの席を見ると、既にゼネルの姿はなかった。
「ゼネルは急ぎの仕事が入った。だから午後は私の宮へ」
 システィーアは慌てて数度、頭を縦に振った。
「食事が済んだら一度、部屋まで送る。支度をしてから来なさい」
「支度、ですか?」
「管理神官が知っている」
「わかりました」
 サーティスより先に食べ終えたシスティーアは、おやつのおにぎりを確保する為、シェフの元へ向かった。
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