双璧の転生者

ミケメコ

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西の転生者

55.クラス

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 学院の入学式は前世での学校の入学式と大差なく、ほぼ長い話を聞くだけのものだった。
 先程起こった出来事のことを考えていたシスティーアだったが、無事に何事もなく式が終わると、安堵の息を吐いた。続きは帰ってから考えることにして、他に何も起こらないように祈る。
 新入生はすぐにその場でクラスごとにわけられ、先生に誘導されてクラスメンバー達と共にまとまって教室へと向かうことになった。今年の初年度クラスは二クラス。記憶にあるゲームでは四クラスあったはずなので二クラス少ない。
 教室につくと並ぶ机の上にはそれぞれ、名前と時間割の書かれた紙が置かれていた。
 システィーアの席は一番後ろの廊下側の席だった。授業中もフォトムはそばに控えるらしい。それを考えれば、一番後ろの席というのも頷けた。配慮されているのだろう、隣はリプルである。
 想定より少ない二クラスとなった組み分けに、システィーアは内心戦々恐々しながら席へ腰を下ろした。本来なら四つに分けられるはずの登場人物達が二クラスに集まるのだ。それに先程の衝突イベントのこともある。他のイベントも多少変更された形で起きる可能性は高い。とにかく、システィーアは日常がカオスにならないことを祈るしかなかった。

「ティア!」
 呼ばれて顔を上げると、記憶よりも少し大人びて甘い顔になったファウゼルが嬉しそうにこちらへ歩いて来た。
「まあ、ファー!」
 システィーアが懐かしさに顔を綻ばせると、フォトムが少し警戒を解く。
「急に中央へ行ってしまったから、とても寂しかったよ。⋯⋯何だか綺麗になった?」
 ファウゼルがまじまじと顔を近づけて見てくる。
「そうかしら? ありがとう」
 実家に居た頃と比べて、明らかに生活水準は落ちている。管理者は各国の王族よりも上位の存在だと聞いていたのに、洗髪剤や石鹸などの日々使う日用品さえも、公爵家で使っていたものより遥かに劣っているのだ。
 おかげでシスティーアの癖の強い髪は、祖国を出てから以前のように綺麗にまとまったことがない。フォトムが時間をかけて綺麗に結い上げてくれなければ、システィーアは早々に諦めて雑に一つに括っていたであろう。
 そんなことを思いながら、システィーアはファウゼルのお世辞に小さく苦笑いを返す。
「ティアと同じクラスになれて嬉しいよ。また一緒に学べるね」
 ファウゼルが話を続けようとしたところで、先生らしき女性が教室に入ってきた。ショートボブで濃い青緑の色彩、柔らかな雰囲気の魔力を纏っている。
「このクラスを受け持つことになりました、ヤーナです」
 ぐるりと教室を見回したシスティーアは、他に知った顔が居なかったことに安堵の息を吐いた。

「必修科目は私が担当します。選択科目ですが⋯⋯」
 選択科目でどの神官になるかが決まる。というか、神官になる為に全ての貴族がここへ集まるらしいから、この選択科目こそがメインだ。配られた紙を見ながら、皆真剣な顔で先生の話を聞く。
 一年生は殆どが必修科目で、選択科目は週に3回ほどしかないらしい。必修の単位を一つも落とさなければ、二年生では全ての時間が選択した科目になるのだそうだ。そして闇、光、壁、火、水、風の中の最低一つを履修した者が卒業となる。
 どの神を選ぶかは自由だが、自分が一番恩恵を与えてもらっている神⋯⋯つまり一番魔力量の多い属性を選ぶのを学園は推奨しているそうだ。
 システィーアは壁以外は使えないので、選ぶまでもない。他の魔法を使えないことがとても残念だ。気落ちしながら先生の話を聞く。

 この世界での神官は、資格のようなもの、らしい。
 というのも、神殿は中央にしかないからだ。各国にあるのは風の祠だけなので、神殿に勤める神官は多くない。ちなみに、その神殿に勤める者は内神官、それ以外の神官は外神官と呼ばれるそうだ。
 神殿が中央にあるため、内神官はほぼ中央貴族が勤める。それ以外の者は各国に戻って王族や貴族として土地を治めながら、神官としての力を使う者が殆どだ。中には神官を副職として冒険者になる強者もいるそうだ。

 そんな話を一通り聞いた後、先生がパンパンと大きく手を叩いた。
「はい、ではその紙は授業終わりに提出して。すぐに決まらない人は、選択科目のある明後日までに提出するように。では授業を始めます」
 システィーアは思わず驚愕の声をあげかけて、慌てて口元を両手で押さえた。
 入学式の日から授業⋯⋯。
 詰め込みすぎだろうと思う自分がおかしいのか、辺りを見渡しても誰も反応している様子はない。
 ここでもブラック⋯⋯。
 システィーアは額を抑え、吐きそうになる大きな溜息を小さく堪えることで、気持ちをどうにか抑えきった。

「ティア」
 午前中の授業を終えたシスティーアは、机に突っ伏したい気持ちを堪えて、ゆっくりと声の方に顔を向けた。
「昼食は食堂?」
 クラスメイトが遠巻きにこちらを見てくる中、ファウゼルが笑顔で机の横に来る。
 システィーアが伺うように後ろに立つフォトムに視線を向けると、彼は肯定するように頷いた。
「ええ。その予定よ」
「カインと合流する予定なんだ。一緒に行かないか」
 システィーアは食堂の献立に思いを馳せた。
 光の管理者ミルミリアについて回っている間は米を我慢することが多かった。だが、今日からおにぎり生活の再開である。
「早く行きましょう!」
 システィーアは期待に胸を膨らませ、意気揚々と食堂へと向かった。
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