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第一部
パン屋さんのお仕事 1
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「んーーーっ!おいしい!!!」
リオンさんが焼き直してくれたパンは、本当に美味しかった。
特に、味付けはしていないコッペパンだけど、ビックリするほど甘くて……ほっぺたが落っこちないかと本気で心配する。
………ホカホカのパンは幸せの象徴だ。
この先も、毎日こんなおいしいパンが食べられるのか。と、幸せを噛み締めながら、パンを頬張る。
すると、リオンさんは小さな声で、「………可愛い。」と呟いた。
なので、コメの方を見ると、リオンさんのパンがたいそう気に入った様子で、テーブルに落ちているパンの欠片を必死に食べていた。
黄色のお尻がフリフリしていて、すんごく可愛い。
「そうですね。可愛い。」
リオンさんからの反応が返ってこず、リオンさんの顔を覗いて首をかしげる。
リオンさんは、とても驚いたような顔をしていた。
「?………。ああ。コメか。うん、そうだね。……タケルにも、コメにも気に入ってもらえてよかったよ。」
リオンさんは、すぐに爽やかな笑顔をすると、そう言った。
早めのお昼ご飯を終えて、俺は、リオンさんから、家のことと、仕事について、説明を受けた。
リオンさんの家は、一階がパン屋さんで、二階が、住むところになっている。
二階に、一つ空き部屋があるので、そこに住まわせてもらうことになった。
主な仕事内容は、パン屋さんの売り場での、会計。
あのパンのいい匂いに囲まれて仕事できるなんて、楽しみでしかたがない。
俺は、カフェでバイトしたこともあるので、商品と値段を覚えるのは得意だ。
早く覚えて、リオンさんにはたくさん助けてもらった分、恩を返したいと思う。
そのあとは、俺の生活必需品を買いにいった。
ベットや、棚などは元々あったものを使わせてもらえるので、この世界の服や、靴を買ってもらった。
学ランに、スニーカーはすごく目立っていたから、とても助かる。
服は、フワッとしたボタンのないブラウスを何枚かと、
無難な色のズボンを何枚か。あとは部屋着と、パン屋さんの時のエプロン。
帰りは買った服で帰ったが、今の自分の姿は、髪も目も色が変わって、服もこの世界の服になっていて、いよいよ、ここのネイティブの人に見える。まだ、気分的にはコスプレなので、早く自分の姿に慣れる日が来ればいいと思う。
形だけでもこの世界の人になれたので、中身も早く慣れて、
町の人とも仲良くなれたらいいな、とワクワクした。
翌朝、パンのいい匂いで目が覚めた。
見慣れない天井が目の前に広がって、異世界に来たことを思い出す。
周りを飛び跳ねているコメにおはよう、と言い、
さっと着替えを済ませて部屋を出た。
時刻は6時半。
二階のリビングのような所にいくと、サンドイッチとスープ、メモが置かれていた。
メモに書いてあるこの世界の文字は、読めないけれど、雰囲気でなんとなく、「スープは温めて食べてね。」的なことが書いてあると分かる。昨日、町に買い物にいったときも、雰囲気で分かった。
これは単なる推測ではなく確信だ。なぜ分かるのかは分からないが。
言葉が分かる時点でおかしいので、考えていたらきりがない。
俺には何かしらの才能があったのかもしれない、ということにしよう。
スープを電子レンジもどきで温めて、席につく。
サンドイッチをちぎってコメにあげながら、自分も頬張る。
うーん、おいしい。幸せだ。
パン屋さんは朝の8時から昼の3時ごろまで開くらしい。
リオンさんに7時頃に一階に降りてきてほしいと言われていたので、
すぐに洗面所で、歯磨き等を済ませ、階段を下りる。
パンの匂いがだんだんと強くなって、その匂いの先には、リオンさんが、厨房でパンが焼けるのを待っているところだった。
「おはようごさいます。」
「ああ。タケル、おはよう。今日からよろしくね。」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。」
「パン屋は、朝も忙しいから、頑張ろう。お客さんにたくさん話しかけられるだろうけど、異世界から来たことはバレないようにしないとね。」
「記憶喪失の普通の人間……ですよね。頑張ります。お客さんとも仲良くなれるといいんですが………。」
「大丈夫。タケルなら、すぐに馴染めるよ。
……もうすぐ、開店だ。パンを並べ始めようか。」
リオンさんが立ち上がり、二人で開店に向けて準備を始めた。
「お釣りは、二百カイトです。ありがとうございました。」
「ありがとう。ところで、お兄さん………」
「あ、はい。今日からここで働かせてもらっている、タケルで……」
「タケル!!!珍しい名前だね!」
「どっから来たんだい?」
「リオンの友達なのかい?………も、もしや………!!!」
「「恋人!!!!」」
「おお!リオンもついに相手を見つけたかぁ!!おめでとう!!!!」
「え、なんて?タケルくんはお嫁さんなの!?」
「ええっ?………あの、違います!!」
「嫁?今嫁って聞こえたぞ、もう結婚するのか?」
「「「「結婚だって!?!?」」」」
「何よ、リオン。あんた、なにも言わない何て、水くさいじゃないの。」
「言ってくれれば、祝いの品ぐらい用意したのになぁ!!!」
「……あ、…あの!!!」
「めでたい!今日は宴会だ!!宴会!!!」
「おじさんはただ飲みたいだけでしょ?」
…………い、忙しい!!!
忙しいといっても、お店の仕事の方は、すぐに慣れた。
リオンさんが、丁寧に教えてくれたので、困ることは少なかったし、
コメはエプロンの大きいポケットにおとなしくいてくれているので、衛生面の心配もない。
今は午前11時。朝のラッシュを終えて、パンを買いに来る人は、減ったはずなのだが。
ずっと一人でお店をしていたリオンさんのお店に、突如現れた俺を見ようと
たくさんの人が集まっている。
それにしても、このようなやり取りも、もう3回目だ。
可愛さの欠片もない俺が、こっ、恋人、何て流石におかしいと思うのだが…
リオンさんがそれほど注目される人気者ということだろう。
そして、こういうとき、リオンさんは、意外にも助けてくれない。
俺の方を見ながらニコニコしているだけだ。
俺と、お客さんが仲良くなれるように、見守ってくれているのだろうとは思うが。
……リオンさんが否定してくれないから、
皆が恋人説を本当だと思って話が止まらなくなってるんだけど!!!!?
リオンさんが焼き直してくれたパンは、本当に美味しかった。
特に、味付けはしていないコッペパンだけど、ビックリするほど甘くて……ほっぺたが落っこちないかと本気で心配する。
………ホカホカのパンは幸せの象徴だ。
この先も、毎日こんなおいしいパンが食べられるのか。と、幸せを噛み締めながら、パンを頬張る。
すると、リオンさんは小さな声で、「………可愛い。」と呟いた。
なので、コメの方を見ると、リオンさんのパンがたいそう気に入った様子で、テーブルに落ちているパンの欠片を必死に食べていた。
黄色のお尻がフリフリしていて、すんごく可愛い。
「そうですね。可愛い。」
リオンさんからの反応が返ってこず、リオンさんの顔を覗いて首をかしげる。
リオンさんは、とても驚いたような顔をしていた。
「?………。ああ。コメか。うん、そうだね。……タケルにも、コメにも気に入ってもらえてよかったよ。」
リオンさんは、すぐに爽やかな笑顔をすると、そう言った。
早めのお昼ご飯を終えて、俺は、リオンさんから、家のことと、仕事について、説明を受けた。
リオンさんの家は、一階がパン屋さんで、二階が、住むところになっている。
二階に、一つ空き部屋があるので、そこに住まわせてもらうことになった。
主な仕事内容は、パン屋さんの売り場での、会計。
あのパンのいい匂いに囲まれて仕事できるなんて、楽しみでしかたがない。
俺は、カフェでバイトしたこともあるので、商品と値段を覚えるのは得意だ。
早く覚えて、リオンさんにはたくさん助けてもらった分、恩を返したいと思う。
そのあとは、俺の生活必需品を買いにいった。
ベットや、棚などは元々あったものを使わせてもらえるので、この世界の服や、靴を買ってもらった。
学ランに、スニーカーはすごく目立っていたから、とても助かる。
服は、フワッとしたボタンのないブラウスを何枚かと、
無難な色のズボンを何枚か。あとは部屋着と、パン屋さんの時のエプロン。
帰りは買った服で帰ったが、今の自分の姿は、髪も目も色が変わって、服もこの世界の服になっていて、いよいよ、ここのネイティブの人に見える。まだ、気分的にはコスプレなので、早く自分の姿に慣れる日が来ればいいと思う。
形だけでもこの世界の人になれたので、中身も早く慣れて、
町の人とも仲良くなれたらいいな、とワクワクした。
翌朝、パンのいい匂いで目が覚めた。
見慣れない天井が目の前に広がって、異世界に来たことを思い出す。
周りを飛び跳ねているコメにおはよう、と言い、
さっと着替えを済ませて部屋を出た。
時刻は6時半。
二階のリビングのような所にいくと、サンドイッチとスープ、メモが置かれていた。
メモに書いてあるこの世界の文字は、読めないけれど、雰囲気でなんとなく、「スープは温めて食べてね。」的なことが書いてあると分かる。昨日、町に買い物にいったときも、雰囲気で分かった。
これは単なる推測ではなく確信だ。なぜ分かるのかは分からないが。
言葉が分かる時点でおかしいので、考えていたらきりがない。
俺には何かしらの才能があったのかもしれない、ということにしよう。
スープを電子レンジもどきで温めて、席につく。
サンドイッチをちぎってコメにあげながら、自分も頬張る。
うーん、おいしい。幸せだ。
パン屋さんは朝の8時から昼の3時ごろまで開くらしい。
リオンさんに7時頃に一階に降りてきてほしいと言われていたので、
すぐに洗面所で、歯磨き等を済ませ、階段を下りる。
パンの匂いがだんだんと強くなって、その匂いの先には、リオンさんが、厨房でパンが焼けるのを待っているところだった。
「おはようごさいます。」
「ああ。タケル、おはよう。今日からよろしくね。」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。」
「パン屋は、朝も忙しいから、頑張ろう。お客さんにたくさん話しかけられるだろうけど、異世界から来たことはバレないようにしないとね。」
「記憶喪失の普通の人間……ですよね。頑張ります。お客さんとも仲良くなれるといいんですが………。」
「大丈夫。タケルなら、すぐに馴染めるよ。
……もうすぐ、開店だ。パンを並べ始めようか。」
リオンさんが立ち上がり、二人で開店に向けて準備を始めた。
「お釣りは、二百カイトです。ありがとうございました。」
「ありがとう。ところで、お兄さん………」
「あ、はい。今日からここで働かせてもらっている、タケルで……」
「タケル!!!珍しい名前だね!」
「どっから来たんだい?」
「リオンの友達なのかい?………も、もしや………!!!」
「「恋人!!!!」」
「おお!リオンもついに相手を見つけたかぁ!!おめでとう!!!!」
「え、なんて?タケルくんはお嫁さんなの!?」
「ええっ?………あの、違います!!」
「嫁?今嫁って聞こえたぞ、もう結婚するのか?」
「「「「結婚だって!?!?」」」」
「何よ、リオン。あんた、なにも言わない何て、水くさいじゃないの。」
「言ってくれれば、祝いの品ぐらい用意したのになぁ!!!」
「……あ、…あの!!!」
「めでたい!今日は宴会だ!!宴会!!!」
「おじさんはただ飲みたいだけでしょ?」
…………い、忙しい!!!
忙しいといっても、お店の仕事の方は、すぐに慣れた。
リオンさんが、丁寧に教えてくれたので、困ることは少なかったし、
コメはエプロンの大きいポケットにおとなしくいてくれているので、衛生面の心配もない。
今は午前11時。朝のラッシュを終えて、パンを買いに来る人は、減ったはずなのだが。
ずっと一人でお店をしていたリオンさんのお店に、突如現れた俺を見ようと
たくさんの人が集まっている。
それにしても、このようなやり取りも、もう3回目だ。
可愛さの欠片もない俺が、こっ、恋人、何て流石におかしいと思うのだが…
リオンさんがそれほど注目される人気者ということだろう。
そして、こういうとき、リオンさんは、意外にも助けてくれない。
俺の方を見ながらニコニコしているだけだ。
俺と、お客さんが仲良くなれるように、見守ってくれているのだろうとは思うが。
……リオンさんが否定してくれないから、
皆が恋人説を本当だと思って話が止まらなくなってるんだけど!!!!?
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