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第7話 再会は突然に
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突然元気をなくした私を心配そうに見つめるマッティに、私は首を振った。
「……マッティ、折角連れて来てもらったのになんかごめん、ちょっと想像してたのと違った」
「……何をどう想像されていたのかは分かりかねますが、正真正銘この方がクリスタベルの次期国王、あかり様が会いたがっていたアルベルト殿下でいらっしゃいますよ?」
「あれ、アルは第3王子じゃなかったっけ。僕には二人も優秀なお兄様がいるんですって、だから大きくなったらお兄様達のお役にたちたいんですって、目をキラキラさせて言ってたよ? それなのにどうして次期国王なの?」
「なっ! お前何故それを……!」
「覚えていらっしゃいませんか? あかり様がご帰還される時、直々に聖なる水晶をアルベルト殿下に託されたでしょう。その功績が認められた殿下は王位継承権の順位が上がり、王太子となられたのです」
「あー、あったねそんなこと。たまたま近くにいたからアルに渡しただけだったんだけど……。じゃあもしかして、私余計なことしちゃった?」
「それはあかり様が気にされる必要はありません。それよりあかり様の気が済んだのなら、次はカルロスとナリッサの所へ参りましょうか」
「うんそうだね。そういえばカルロス達は今お城で何をしてるの?」
「お、おい!」
「カルロスは今騎士団に……」
「おい、ちょっと待て!」
「うわっ」
後ろから肩を掴まれてバランスを崩した私は、アルの方に向き直ると思いっきり眉を顰めた。
「ちょっと痛いじゃない! なにすんのよ!」
「す、すまない。つい力が入ってしまった。それよりお前、いや貴女はもしかして……、あかり様、ですか?」
「うんそーだよ。アル、久しぶりだね」
仮にも王子様だと思って一応笑顔を作って挨拶すると、アルは信じられない物を見たように口を手で覆った。
「あかり様……本物なのか? いやだが確かに服は聖女様の御衣裳だし、この黒目黒髪に丸い顔と低い鼻、そして少年の如き細い身体は確かにあかり様……しかしまさかそんな……」
「うわっ、なんか微妙に失礼なこと言われた気がする! アルは昔からそんな風に私のこと考えてたの? ねえマッティ、アルが失礼だよ!」
「ええまったくです。あかり様は昔からまるでリスのように可愛らしくていらっしゃいますよ」
「えっ、こっちはまさかの小動物扱い!?」
ひどい!今更明かされた過去の衝撃の真実! 私はショックを受けたよ!
「いやだが待て。どうしてあかり様はあの時と同じ姿をしているのだ? マティアス、聖女とは歳をとらない存在なのか?」
「殿下、あかり様の世界ではあの奇跡からまだ1年しか経っていないのだそうです。あかり様がおっしゃるには、18歳の誕生日を迎えられたばかりだそうですよ」
「18歳? こんなに小さくてか? 信じられんな……」
「うわ、アルがまた失礼なこと言ってる! ねえマッティ早くカルロスの所へ行こう!」
「お、おい! ちょっと待ってくれ! いやお待ちください!」
歩き出したところを慌てて止めようとするアルを、私はじろりと睨んだ。
「……なに?」
「いえ、その、あかり様、折角クリスタベルに再びご降臨いただいたのです。せめて少しでもお時間をいただけないでしょうか」
「私、これからカルロスとナリッサに会いに行く予定だから」
「カルロスは我が国の騎士団長。今は少し離れた場所におります。せめて彼を呼びに行く間だけでもご滞在いただけませんか? そうそう、あかり様がお好きだった蜂蜜の入った焼き菓子もご用意しましょう」
「えー……」
「あかり様、折角ですから殿下のご好意に甘えさせていただきませんか?」
「うーん、でも……」
「実を言うとナリッサは王城の女官長をしているのです。殿下から呼び出していただいた方が、ナリッサもあかり様と話がしやすいでしょう」
「……マッティがそう言うなら……わかった」
「あかり様、感謝いたします!」
そう言って安心したように笑ったアルの顔は、私の知ってる天使の面影がちょっとだけ残っているような気がした。
「……マッティ、折角連れて来てもらったのになんかごめん、ちょっと想像してたのと違った」
「……何をどう想像されていたのかは分かりかねますが、正真正銘この方がクリスタベルの次期国王、あかり様が会いたがっていたアルベルト殿下でいらっしゃいますよ?」
「あれ、アルは第3王子じゃなかったっけ。僕には二人も優秀なお兄様がいるんですって、だから大きくなったらお兄様達のお役にたちたいんですって、目をキラキラさせて言ってたよ? それなのにどうして次期国王なの?」
「なっ! お前何故それを……!」
「覚えていらっしゃいませんか? あかり様がご帰還される時、直々に聖なる水晶をアルベルト殿下に託されたでしょう。その功績が認められた殿下は王位継承権の順位が上がり、王太子となられたのです」
「あー、あったねそんなこと。たまたま近くにいたからアルに渡しただけだったんだけど……。じゃあもしかして、私余計なことしちゃった?」
「それはあかり様が気にされる必要はありません。それよりあかり様の気が済んだのなら、次はカルロスとナリッサの所へ参りましょうか」
「うんそうだね。そういえばカルロス達は今お城で何をしてるの?」
「お、おい!」
「カルロスは今騎士団に……」
「おい、ちょっと待て!」
「うわっ」
後ろから肩を掴まれてバランスを崩した私は、アルの方に向き直ると思いっきり眉を顰めた。
「ちょっと痛いじゃない! なにすんのよ!」
「す、すまない。つい力が入ってしまった。それよりお前、いや貴女はもしかして……、あかり様、ですか?」
「うんそーだよ。アル、久しぶりだね」
仮にも王子様だと思って一応笑顔を作って挨拶すると、アルは信じられない物を見たように口を手で覆った。
「あかり様……本物なのか? いやだが確かに服は聖女様の御衣裳だし、この黒目黒髪に丸い顔と低い鼻、そして少年の如き細い身体は確かにあかり様……しかしまさかそんな……」
「うわっ、なんか微妙に失礼なこと言われた気がする! アルは昔からそんな風に私のこと考えてたの? ねえマッティ、アルが失礼だよ!」
「ええまったくです。あかり様は昔からまるでリスのように可愛らしくていらっしゃいますよ」
「えっ、こっちはまさかの小動物扱い!?」
ひどい!今更明かされた過去の衝撃の真実! 私はショックを受けたよ!
「いやだが待て。どうしてあかり様はあの時と同じ姿をしているのだ? マティアス、聖女とは歳をとらない存在なのか?」
「殿下、あかり様の世界ではあの奇跡からまだ1年しか経っていないのだそうです。あかり様がおっしゃるには、18歳の誕生日を迎えられたばかりだそうですよ」
「18歳? こんなに小さくてか? 信じられんな……」
「うわ、アルがまた失礼なこと言ってる! ねえマッティ早くカルロスの所へ行こう!」
「お、おい! ちょっと待ってくれ! いやお待ちください!」
歩き出したところを慌てて止めようとするアルを、私はじろりと睨んだ。
「……なに?」
「いえ、その、あかり様、折角クリスタベルに再びご降臨いただいたのです。せめて少しでもお時間をいただけないでしょうか」
「私、これからカルロスとナリッサに会いに行く予定だから」
「カルロスは我が国の騎士団長。今は少し離れた場所におります。せめて彼を呼びに行く間だけでもご滞在いただけませんか? そうそう、あかり様がお好きだった蜂蜜の入った焼き菓子もご用意しましょう」
「えー……」
「あかり様、折角ですから殿下のご好意に甘えさせていただきませんか?」
「うーん、でも……」
「実を言うとナリッサは王城の女官長をしているのです。殿下から呼び出していただいた方が、ナリッサもあかり様と話がしやすいでしょう」
「……マッティがそう言うなら……わかった」
「あかり様、感謝いたします!」
そう言って安心したように笑ったアルの顔は、私の知ってる天使の面影がちょっとだけ残っているような気がした。
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