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第95話 殿下が入れるお茶
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メイン料理の後はデザートだ。いや違ったそれはもう私のお腹に収まってしまった。ということで、これからは殿下指導による勉強会となる。
「これからお勉強会ですね。ご準備はできております」
「ありがとう、クロエ」
仕事のできる侍女のクロエさんは既に隣の部屋に準備しておいてくれたらしい。殿下は彼女に礼を述べた。
お腹がいっぱいだし、少し休んでから始めたいところだけれども、時間を置いたら置いたで眠ってしまうかもしれない。
「ユリアさん、こちらの後片付けは私がやっておくわ。殿下とロザンヌ様にご一緒してちょうだい。部屋での過ごし方はあなたが殿下に許可を取ってね」
「はい。承知いたしました」
昼間の執務室はともかく、夜の私室に未婚の男女が二人というのもどうかということで、ユリアも一緒に部屋にいるようにとの指示だ。なるほど。
「では、殿下。わたくしは今日はここで失礼いたします」
「ああ。ありがとう」
クロエさんが礼を取って私たちも挨拶を終えると、私とユリアは課題を取って来るために一度自分の部屋に戻る。
「ユリア、付き合わせてごめんね」
まだ今頃なら私の部屋にいてくれる時間帯ではあるが、殿下の部屋で過ごすとなると、それなりに気が張るだろう。
「いいえ。構いません」
殿下の部屋だからといって特別に気は遣わないので本当に構わないと思っているのか、構うけど構わないと言っているのか、表情からは分からない。ユリアのことだから前者ではあると思う。
課題を手にした私とユリアが用意されていた殿下の部屋へと戻ると、テーブルにお茶の準備がされていて良い香りが漂っていた。
殿下御自ら紅茶を入れている姿が目に入って私はびっくりする。ユリアとは言うと、足早に殿下の元へと向かう。
「殿下、お代わりいたします」
「いや。大丈夫だ。こう見えてもお茶を入れるのが得意なんだ」
命令とは違う殿下の言葉に、ユリアはどうするべきか私の方に視線をやったので私は頷いた。
「承知いたしました」
ユリアは身を引き、そのまま下がった。
「ロザンヌ嬢、座ってくれ」
「はい。ありがとうございます、殿下」
「ユリア、君も」
この言葉にはさすがにユリアは承知することはできなかったようだ。
「殿下のご命とあっても、同席だけは致しかねます」
「しかし勉強会が終わるまで君を立たせておくわけにもいかない」
ユリアは部屋に入ってきた時に確認していたようで、端にある小さな机を手で指し示した。
「あの机をお借りしてよろしいでしょうか」
そこで練習着の仕立て直しをすると言う。
……こやつは本気だ。本気でまた騎士の鍛錬に参加するするつもりだ。
「ああ、もちろんだ」
「ありがとうございます。では」
「いや、待て。君の分もお茶を入れたからせめて持っていけ」
ユリアは無表情の中にも面食らった表情でまた私の顔を見る。
私が頷いたのを確認すると、ありがとうございます頂戴いたしますとカップを受け取り、そのまま端の机まで下がった。
「では、ロザンヌ嬢。始めようか」
「はい。お茶会を始めましょう」
「勉強会だ」
「……はい。お勉強会でした」
すぐさま殿下に訂正されて渋々私は認めた。
殿下はくすりと笑う。
「けれど、まずは冷めない内にお茶を飲もうか」
「ありがとうございます。頂きます」
殿下に勧められて私はカップを手に取り、一口頂く。
「――っ! 美味しいです」
「そうか。良かった」
高級茶葉はもちろん使っているのだろうけれども、お茶の入れ方で味や香りの立ち方が変わるものだ。私は自分で入れて、せっかくのお茶の良さを引き出せなかったことがあるから分かる。
ユリアの方へとそっと振り返って見ると、彼女も感心した様子だ。普段、お茶の用意をしている彼女だからこそ、殿下の腕前が分かるだろう。
はぁ。美味しくて幸せ。
殿下のご婚約者様はご結婚なさったら、こんなに美味しいお茶を頂けるのだろうか。いいなぁ。羨ましいな。
ほんわかしていると。
「では始めようか」
情緒も何もあったものではありませんね!
殿下のお言葉で目の前の現実に引き戻されてがっかりしたが、私は仕方なく頷いた。
「はい。お茶会を始めましょう」
「勉強会だ」
「……はい。お勉強会でした」
私たちはまた同じやり取りを繰り返した。
「これからお勉強会ですね。ご準備はできております」
「ありがとう、クロエ」
仕事のできる侍女のクロエさんは既に隣の部屋に準備しておいてくれたらしい。殿下は彼女に礼を述べた。
お腹がいっぱいだし、少し休んでから始めたいところだけれども、時間を置いたら置いたで眠ってしまうかもしれない。
「ユリアさん、こちらの後片付けは私がやっておくわ。殿下とロザンヌ様にご一緒してちょうだい。部屋での過ごし方はあなたが殿下に許可を取ってね」
「はい。承知いたしました」
昼間の執務室はともかく、夜の私室に未婚の男女が二人というのもどうかということで、ユリアも一緒に部屋にいるようにとの指示だ。なるほど。
「では、殿下。わたくしは今日はここで失礼いたします」
「ああ。ありがとう」
クロエさんが礼を取って私たちも挨拶を終えると、私とユリアは課題を取って来るために一度自分の部屋に戻る。
「ユリア、付き合わせてごめんね」
まだ今頃なら私の部屋にいてくれる時間帯ではあるが、殿下の部屋で過ごすとなると、それなりに気が張るだろう。
「いいえ。構いません」
殿下の部屋だからといって特別に気は遣わないので本当に構わないと思っているのか、構うけど構わないと言っているのか、表情からは分からない。ユリアのことだから前者ではあると思う。
課題を手にした私とユリアが用意されていた殿下の部屋へと戻ると、テーブルにお茶の準備がされていて良い香りが漂っていた。
殿下御自ら紅茶を入れている姿が目に入って私はびっくりする。ユリアとは言うと、足早に殿下の元へと向かう。
「殿下、お代わりいたします」
「いや。大丈夫だ。こう見えてもお茶を入れるのが得意なんだ」
命令とは違う殿下の言葉に、ユリアはどうするべきか私の方に視線をやったので私は頷いた。
「承知いたしました」
ユリアは身を引き、そのまま下がった。
「ロザンヌ嬢、座ってくれ」
「はい。ありがとうございます、殿下」
「ユリア、君も」
この言葉にはさすがにユリアは承知することはできなかったようだ。
「殿下のご命とあっても、同席だけは致しかねます」
「しかし勉強会が終わるまで君を立たせておくわけにもいかない」
ユリアは部屋に入ってきた時に確認していたようで、端にある小さな机を手で指し示した。
「あの机をお借りしてよろしいでしょうか」
そこで練習着の仕立て直しをすると言う。
……こやつは本気だ。本気でまた騎士の鍛錬に参加するするつもりだ。
「ああ、もちろんだ」
「ありがとうございます。では」
「いや、待て。君の分もお茶を入れたからせめて持っていけ」
ユリアは無表情の中にも面食らった表情でまた私の顔を見る。
私が頷いたのを確認すると、ありがとうございます頂戴いたしますとカップを受け取り、そのまま端の机まで下がった。
「では、ロザンヌ嬢。始めようか」
「はい。お茶会を始めましょう」
「勉強会だ」
「……はい。お勉強会でした」
すぐさま殿下に訂正されて渋々私は認めた。
殿下はくすりと笑う。
「けれど、まずは冷めない内にお茶を飲もうか」
「ありがとうございます。頂きます」
殿下に勧められて私はカップを手に取り、一口頂く。
「――っ! 美味しいです」
「そうか。良かった」
高級茶葉はもちろん使っているのだろうけれども、お茶の入れ方で味や香りの立ち方が変わるものだ。私は自分で入れて、せっかくのお茶の良さを引き出せなかったことがあるから分かる。
ユリアの方へとそっと振り返って見ると、彼女も感心した様子だ。普段、お茶の用意をしている彼女だからこそ、殿下の腕前が分かるだろう。
はぁ。美味しくて幸せ。
殿下のご婚約者様はご結婚なさったら、こんなに美味しいお茶を頂けるのだろうか。いいなぁ。羨ましいな。
ほんわかしていると。
「では始めようか」
情緒も何もあったものではありませんね!
殿下のお言葉で目の前の現実に引き戻されてがっかりしたが、私は仕方なく頷いた。
「はい。お茶会を始めましょう」
「勉強会だ」
「……はい。お勉強会でした」
私たちはまた同じやり取りを繰り返した。
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