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次への⑨
晃太の言葉に私は頷く。
「そうやな」
いろいろ考えた。
あの偽物の警備兵の制服は正規のもの。そんなの簡単には手に入らない。だが、その警備兵を指揮している、一番えらい人なら手に入れることは難しいことではない。
その一番えらい人は、このスカイランの警備を指揮している人。
つまり、街を治めているラーバフ伯爵になる。
いつか来るとは覚悟していた、恐れていたことだ。
ビアンカとルージュ欲しさに、あんな茶番劇を起こしたのではないだろうか?
私の管理能力が低いとか、然るべき者が管理すべきとか、いちゃもんつけて。
覚悟はしていたが、いざ、となると、私は動揺した。
街のトップに、悪い意味で目をつけられて、こんなことになったのなら、ここに長居する理由はない。
マーファでは、ハルスフォン伯爵様は、こちらに友好的だった。ドラゴンや小児用の内服薬があったからだろうし、そうしたほうが利があると、判断したんだろうけど。だけど、貴族の人達が、みんな、ハルスフォン様のような対応を取るとは限らない。実際に、私を還暦過ぎの子爵の後妻になんて、父を通じて言ってきた。最終的には、ビアンカとルージュが欲しいだけ。かわいか5匹の仔達が欲しいだけ。
なら、どうすれば、ビアンカとルージュが、元気達が守れるのだろうか?
手段は?
何がある?
Sランク冒険者 フェリクスが命じる
ランク。
確か、ドナートさんがそんな事言ってた。Sランク冒険者はただ強いだけでは決してなれない。冒険者としての実績は当然だが、ある程度地位のある人達の推薦、それから、それに相応しい人物か厳しい審査を経てなる。
Sランクとなれば、ある程度の執行権限があるとかなんとか、国に対しての発言権があるとかなんとか。
だから、あの時、フェリクスさんの拘束指示に、シュタインさんとラーヴさんが従った。よくよく思い出したら、周囲のギャラリーまで身構えていた。
つまり、フェリクスさんの指示は、それだけの権限があると、皆が周知徹底しているんだ。
なら、Sランクになれば、多少は皆を守れるかな?
「なあ晃太」
「ん」
「ランクば、上げようと思う」
私がランクの説明をすると晃太はあっさり了承。
「そうね、よかっちゃない。後さ、わい、ちょっと考えたんやけど」
「何?」
「ほら、この前さ、権力がどうかって話したやん」
「ああ、私を後妻にってやつ?」
「そう」
晃太は一つ息をつく。
「転移門。あれば使わんね」
晃太の説明はこうだ。
国が買い取り予定の転移門。
これ、とんでもないレア中のレアのマジックアイテム。
リティアさんに聞いたのだけど、現在ユリアレーナに存在するのは建国時に設置された5個のみ。300年前の話だ。転移門はダンジョンからしか出ない。離れた場所に、物が運べる。なんて便利なんだろうって思った。ドラゴンポーションを一瞬で遠くに運べたのも、転移門のおかげ。そんなに便利なら地上運送業者さんは、商売上がったりではないかと思ったが、転移門で運べる量でユリアレーナの物流を賄えるものではない、と。ただ、これがあれば、様々な人達が潤うのは事実だ。
300年前振りの転移門。
国は、喉から手が出る程欲しい転移門。
その転移門の権利は、まだ、私にある。
正式な販売契約を結んでいない。
「つまり、販売契約を結ぶ前にいろいろ条件をつける。今回の件を匂わせて、転移門を売らんとか、別の国が買い取ってくれるかもとか。わいら自身が別の国に移るとかさ」
「前者は分かるけど、後者はなんで?」
「そりゃドラゴンの件でも、2人の強さは脅威やって分かっとるはずや。ビアンカとルージュが他所に流れるのは、ユリアレーナ自体何より避けたいはずや。やから、転移門を使ってそれを匂わせんね」
「なるほど…………やってみるかね。上手く交渉せんとね。よし、まずそうしようかね」
晃太の意見を採用。
ランクは、マーファに戻ってからリティアさんに相談しよう。
『ユイ、コウタ、難しい話ばかりしているのです』
『私達が唸ったから?』
お乳をあげていたビアンカとルージュが心配そうに聞いてくる。
「ん、心配いらんよ。ビアンカとルージュのおかげで解決するけん」
転移門は結局、ビアンカとルージュのちゅどん、どかんの結果だしね。
『? そうなのですか?』
『本当?』
「そうよ、大丈夫やけんね」
私はビアンカとルージュの主人や、2人を、元気達を守らんとね。
さて、夕方。
ルームを開けて、サブ・ドアを開ける。
「クゥンクゥンクゥン」
花が僅かに開けた隙間に鼻をねじ込みながら、入って来た。ぽちゃぽちゃワガママボディをくねらせて、お尻を下げて尻尾をパタパタ。あはははははん、かわいかあ、かわいかあぁ。
「花ちゃん、花ちゃん」
でれれれん、と晃太となで回す。
両親も入って来て、5匹がわっと集まる。
「ダンジョン、どうやったね?」
母がヒスイを撫でながら聞いてくる。
「ちょっとね………」
私がさっきの件を簡単に説明する。
「やからね。マーファに帰ろうかって」
「そうね。よかたい、帰って来れば。正月はマーファで過ごせるね」
母は詳しく聞かずに頷いてくれた。ルリとクリスを撫でながら父も何も言わないが、頷いてくれる。
「それとね、異世界のメニューが選べるようになってね。伯父さんの店があるんよ」
「「え?」」
「見てん」
戸惑う父と母に液晶を見せる。
「ほら。町の洋食みつよし、ね」
「本当や………」
父が少し呆然としている。まさか異世界で伯父、つまり、父の兄のお店が出てくるなんて思っていなかったんだろう。あ、時空神様にルームの仕組みを聞くの忘れていた。
「これにする?」
「それは。ビアンカとルージュは?」
父がビアンカとルージュが振り返る。
『大丈夫なのです』
『次は必ずエビよ』
「だってさ」
母も晃太も私も異論なし。
「そうね、なら」
父がタップ。
異世界のメニュー 町の洋食 みつよし 決定されました
よし。
それからブラッシングやらノワールのご飯を準備。
お乳と補助食もすみ、いざ、夕御飯。もちろん、町の洋食みつよしだ。
私はオムライス・ビーフシチューかけ、オニオングラタンスープ。父はチキンのカツレツ・マスタードソース。母は本日のお魚のソテー。晃太は国産和牛のサーロインステーキ。単品でサーモンのカルパッチョ、海藻サラダ、エビのフリット、ポークチャップ、彩り野菜のグラタン、鰯のオーブン焼き。
ビアンカとルージュにも、たっぷりタップ。
だけど、
『熱いのですっ』
『いい匂いなのにっ』
オニオングラタンスープの熱さに、もたもたしている。
かわいかあ。ドラゴンも一撃なのに、オニオングラタンスープの熱さに手間取っている姿が、ギャップが激しくてかわいかあ。オニオングラタンスープを諦め、先にチキンソテーやエビのフリットを食べはじめている。
『あ、ピリッとして美味しいのですっ』
『エビだわっ、ユイ、もっと食べたいわっ』
「はいはい」
タップタップタップタップタップ。
ビアンカとルージュが落ち着いて、私もオムライスを一口。
ああ、優衣ちゃん、いらっしゃい。
はい、どうぞこちらに。
オムライス?
腕によりをかけようね。優衣ちゃんの看護学校合格祝いや。
明るい伯母さん、笑顔の素敵な従兄弟のお嫁さん、一緒にお店を支えている従兄弟、優しい伯父さん。
一口、食べた、だけなのに、はっきり思い出す。
今頃、向こうはどうなっているのだろう? 父方の伯父さん、母方の伯父さん、伯母さん。そして従兄弟達。
私達がいなくなって、迷惑をかけてないだろうか? いや、きっと迷惑かけているだろう。
いきなり、成人8人が行方不明なんだから。
そうだよね。迷惑、だよね。
皆の日常生活に、支障がないことだけを願うけど。
職場にも、迷惑かけているばす。穏やかな師長さん、憧れの主任さん、ポワンとした副主任さん、頼りになるママさんナース、しっかり者の後輩、おちゃらけた新人。
皆、どうしているだろう?
勤務回っているだろうか?
私、こんなところで、何をしているんだろう?
たった一口食べて、思い出す。
変わらない、伯父さんのオムライス。
日本で、過ごした日々。
たくさんの人達。
何気ない日々で、たまたま実家に帰って、久しぶりに家族全員揃って、ラーメンでも、なんて話して鳴ったチャイム。
ディレナスでの事、鷹の目の皆さんに護衛してもらった事、ビアンカやルージュ達と出会った事、パーティーハウスの事、ダイアナちゃんの事、小児用の薬の事、孤児院の再建の事、原始のダンジョンの事、今日の事。
頭の中で、走り抜ける。
もう、会えない、たくさんの人達の笑顔。
もう、会えない。
なんだか、目の奥が熱くなる。
隣の父が、背中をさすってくれる。
オムライス、美味しいはずなのに、ちょっと、今日は塩味が濃いかあ。
「そうやな」
いろいろ考えた。
あの偽物の警備兵の制服は正規のもの。そんなの簡単には手に入らない。だが、その警備兵を指揮している、一番えらい人なら手に入れることは難しいことではない。
その一番えらい人は、このスカイランの警備を指揮している人。
つまり、街を治めているラーバフ伯爵になる。
いつか来るとは覚悟していた、恐れていたことだ。
ビアンカとルージュ欲しさに、あんな茶番劇を起こしたのではないだろうか?
私の管理能力が低いとか、然るべき者が管理すべきとか、いちゃもんつけて。
覚悟はしていたが、いざ、となると、私は動揺した。
街のトップに、悪い意味で目をつけられて、こんなことになったのなら、ここに長居する理由はない。
マーファでは、ハルスフォン伯爵様は、こちらに友好的だった。ドラゴンや小児用の内服薬があったからだろうし、そうしたほうが利があると、判断したんだろうけど。だけど、貴族の人達が、みんな、ハルスフォン様のような対応を取るとは限らない。実際に、私を還暦過ぎの子爵の後妻になんて、父を通じて言ってきた。最終的には、ビアンカとルージュが欲しいだけ。かわいか5匹の仔達が欲しいだけ。
なら、どうすれば、ビアンカとルージュが、元気達が守れるのだろうか?
手段は?
何がある?
Sランク冒険者 フェリクスが命じる
ランク。
確か、ドナートさんがそんな事言ってた。Sランク冒険者はただ強いだけでは決してなれない。冒険者としての実績は当然だが、ある程度地位のある人達の推薦、それから、それに相応しい人物か厳しい審査を経てなる。
Sランクとなれば、ある程度の執行権限があるとかなんとか、国に対しての発言権があるとかなんとか。
だから、あの時、フェリクスさんの拘束指示に、シュタインさんとラーヴさんが従った。よくよく思い出したら、周囲のギャラリーまで身構えていた。
つまり、フェリクスさんの指示は、それだけの権限があると、皆が周知徹底しているんだ。
なら、Sランクになれば、多少は皆を守れるかな?
「なあ晃太」
「ん」
「ランクば、上げようと思う」
私がランクの説明をすると晃太はあっさり了承。
「そうね、よかっちゃない。後さ、わい、ちょっと考えたんやけど」
「何?」
「ほら、この前さ、権力がどうかって話したやん」
「ああ、私を後妻にってやつ?」
「そう」
晃太は一つ息をつく。
「転移門。あれば使わんね」
晃太の説明はこうだ。
国が買い取り予定の転移門。
これ、とんでもないレア中のレアのマジックアイテム。
リティアさんに聞いたのだけど、現在ユリアレーナに存在するのは建国時に設置された5個のみ。300年前の話だ。転移門はダンジョンからしか出ない。離れた場所に、物が運べる。なんて便利なんだろうって思った。ドラゴンポーションを一瞬で遠くに運べたのも、転移門のおかげ。そんなに便利なら地上運送業者さんは、商売上がったりではないかと思ったが、転移門で運べる量でユリアレーナの物流を賄えるものではない、と。ただ、これがあれば、様々な人達が潤うのは事実だ。
300年前振りの転移門。
国は、喉から手が出る程欲しい転移門。
その転移門の権利は、まだ、私にある。
正式な販売契約を結んでいない。
「つまり、販売契約を結ぶ前にいろいろ条件をつける。今回の件を匂わせて、転移門を売らんとか、別の国が買い取ってくれるかもとか。わいら自身が別の国に移るとかさ」
「前者は分かるけど、後者はなんで?」
「そりゃドラゴンの件でも、2人の強さは脅威やって分かっとるはずや。ビアンカとルージュが他所に流れるのは、ユリアレーナ自体何より避けたいはずや。やから、転移門を使ってそれを匂わせんね」
「なるほど…………やってみるかね。上手く交渉せんとね。よし、まずそうしようかね」
晃太の意見を採用。
ランクは、マーファに戻ってからリティアさんに相談しよう。
『ユイ、コウタ、難しい話ばかりしているのです』
『私達が唸ったから?』
お乳をあげていたビアンカとルージュが心配そうに聞いてくる。
「ん、心配いらんよ。ビアンカとルージュのおかげで解決するけん」
転移門は結局、ビアンカとルージュのちゅどん、どかんの結果だしね。
『? そうなのですか?』
『本当?』
「そうよ、大丈夫やけんね」
私はビアンカとルージュの主人や、2人を、元気達を守らんとね。
さて、夕方。
ルームを開けて、サブ・ドアを開ける。
「クゥンクゥンクゥン」
花が僅かに開けた隙間に鼻をねじ込みながら、入って来た。ぽちゃぽちゃワガママボディをくねらせて、お尻を下げて尻尾をパタパタ。あはははははん、かわいかあ、かわいかあぁ。
「花ちゃん、花ちゃん」
でれれれん、と晃太となで回す。
両親も入って来て、5匹がわっと集まる。
「ダンジョン、どうやったね?」
母がヒスイを撫でながら聞いてくる。
「ちょっとね………」
私がさっきの件を簡単に説明する。
「やからね。マーファに帰ろうかって」
「そうね。よかたい、帰って来れば。正月はマーファで過ごせるね」
母は詳しく聞かずに頷いてくれた。ルリとクリスを撫でながら父も何も言わないが、頷いてくれる。
「それとね、異世界のメニューが選べるようになってね。伯父さんの店があるんよ」
「「え?」」
「見てん」
戸惑う父と母に液晶を見せる。
「ほら。町の洋食みつよし、ね」
「本当や………」
父が少し呆然としている。まさか異世界で伯父、つまり、父の兄のお店が出てくるなんて思っていなかったんだろう。あ、時空神様にルームの仕組みを聞くの忘れていた。
「これにする?」
「それは。ビアンカとルージュは?」
父がビアンカとルージュが振り返る。
『大丈夫なのです』
『次は必ずエビよ』
「だってさ」
母も晃太も私も異論なし。
「そうね、なら」
父がタップ。
異世界のメニュー 町の洋食 みつよし 決定されました
よし。
それからブラッシングやらノワールのご飯を準備。
お乳と補助食もすみ、いざ、夕御飯。もちろん、町の洋食みつよしだ。
私はオムライス・ビーフシチューかけ、オニオングラタンスープ。父はチキンのカツレツ・マスタードソース。母は本日のお魚のソテー。晃太は国産和牛のサーロインステーキ。単品でサーモンのカルパッチョ、海藻サラダ、エビのフリット、ポークチャップ、彩り野菜のグラタン、鰯のオーブン焼き。
ビアンカとルージュにも、たっぷりタップ。
だけど、
『熱いのですっ』
『いい匂いなのにっ』
オニオングラタンスープの熱さに、もたもたしている。
かわいかあ。ドラゴンも一撃なのに、オニオングラタンスープの熱さに手間取っている姿が、ギャップが激しくてかわいかあ。オニオングラタンスープを諦め、先にチキンソテーやエビのフリットを食べはじめている。
『あ、ピリッとして美味しいのですっ』
『エビだわっ、ユイ、もっと食べたいわっ』
「はいはい」
タップタップタップタップタップ。
ビアンカとルージュが落ち着いて、私もオムライスを一口。
ああ、優衣ちゃん、いらっしゃい。
はい、どうぞこちらに。
オムライス?
腕によりをかけようね。優衣ちゃんの看護学校合格祝いや。
明るい伯母さん、笑顔の素敵な従兄弟のお嫁さん、一緒にお店を支えている従兄弟、優しい伯父さん。
一口、食べた、だけなのに、はっきり思い出す。
今頃、向こうはどうなっているのだろう? 父方の伯父さん、母方の伯父さん、伯母さん。そして従兄弟達。
私達がいなくなって、迷惑をかけてないだろうか? いや、きっと迷惑かけているだろう。
いきなり、成人8人が行方不明なんだから。
そうだよね。迷惑、だよね。
皆の日常生活に、支障がないことだけを願うけど。
職場にも、迷惑かけているばす。穏やかな師長さん、憧れの主任さん、ポワンとした副主任さん、頼りになるママさんナース、しっかり者の後輩、おちゃらけた新人。
皆、どうしているだろう?
勤務回っているだろうか?
私、こんなところで、何をしているんだろう?
たった一口食べて、思い出す。
変わらない、伯父さんのオムライス。
日本で、過ごした日々。
たくさんの人達。
何気ない日々で、たまたま実家に帰って、久しぶりに家族全員揃って、ラーメンでも、なんて話して鳴ったチャイム。
ディレナスでの事、鷹の目の皆さんに護衛してもらった事、ビアンカやルージュ達と出会った事、パーティーハウスの事、ダイアナちゃんの事、小児用の薬の事、孤児院の再建の事、原始のダンジョンの事、今日の事。
頭の中で、走り抜ける。
もう、会えない、たくさんの人達の笑顔。
もう、会えない。
なんだか、目の奥が熱くなる。
隣の父が、背中をさすってくれる。
オムライス、美味しいはずなのに、ちょっと、今日は塩味が濃いかあ。
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