もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
291 / 876
連載

隠れて護衛⑤

 明日かあ。夕御飯の後片付けしながら思う。
 上手くいくかやはり心配。皿を片付けながら、明日を思う。
「優衣? 大丈夫ね?」
 母が心配そうに聞いてくる。
「うん」
 私は短く答える。明日のフェリアレーナ様の件を知っていたからだ。
「大丈夫よ、ビアンカとルージュがおるしね」
 大丈夫。ビアンカとルージュなら、大丈夫や。当の本人達は、心配のしの字もない。
『ユイ、心配ないのです。雷で失神させるのです』
『闇魔法で拘束すればいいんでしょ? 大丈夫よ、人の体くらい弾けさせるわよ』
 感電死と内臓破裂という物騒なワードが浮かぶ。
「手加減、してよ」
『大丈夫なのですよ』
『それくらいできるわ』
 私は自分にも言い聞かせる。大丈夫、きっと手加減する。うん、きっと。
 私は片付けた後に、鷹の目の皆さん、ビアンカとルージュの後を追う皆さんの携帯品の確認。
 晃太がアイテムボックスからポーションを取り出す。買い取りに出さずにとっといて良かった。
 上級ポーションと解毒ポーション、魔力回復ポーション。アイテムボックスのあるホークさんとマデリーンさんが詰め、マジックバッグのあるチュアンさんも詰める。ミゲル君には私のBサイズのマジックバッグを貸し出し詰める。それから私の解毒の指輪と、晃太の魔力消費を軽減する指輪をマデリーンさんに渡す。エリクサーがあれば安心なんだけど、もうない。あれから上級ポーションは出るが、エリクサーは出ない。年に数本しか出ない貴重品だから、高望みはダメよね。出来るだけの事だ。後は晃太が向かう前に、ギリギリまで支援するくらいだ。
 よし、これくらいかな。
 次の日、お地蔵様にお祈り。
 ビアンカとルージュをお守りください。フェリアレーナ様と、従者の皆さん、マーファの騎士の皆さん、そして鷹の目の皆さんをお守りください。
 お祈り。
 心配する両親と、へっへと尻尾を振る花を見送る。
 よし、準備はいいかな。
 本日は全員で出掛けるので、ノワールも連れていく。
「ブヒヒンッ」
 久しぶりの外で楽しそうだ。
 街の外に出る時に、既にビアンカとルージュと仔達が毎日散歩しているので、慣れたものだ。トッパの門番さんが、
「お散歩ですか? おや、魔法馬の足、調子がいいようですね」
 と、にこやかに言われた。元気とコハクがご挨拶にいく。
「はい、ずいぶんいいようなので、少し走らせようかと思って。ずっと倉庫内にいたので」
「そうですか、お気をつけて」
 元気とコハクをもふもふしてから、見送ってくれた。
 ゾロゾロとトッパの街を出て、街道近くの草原に日除けの幕を張り、シートを敷く。襲撃場所からかなり離れているが、ビアンカとルージュの足なら直ぐに駆け付けられる。それにビアンカは先に森に潜んで待つと。バレないか心配したが、そこは魔の森の守護者、フォレストガーディアンウルフ。気配を消して近付くなんて朝飯前。
『私か、ルージュ並の気配感知がなければ無理なのですよ』
 あ、なら、大丈夫やね。
 仔達が無邪気に遊んでいるのを、いつもはほのぼのと見ていられるのに、心がざわついて仕方ない。
『ねえね~』
 ゴロゴロと撫でていたヒスイが喉を鳴らす。よしよし。ルリとクリスはシートの上で丸くなって寝ている。元気とコハクは駆け回って遊んでる。
 そっと時間を確認する。
 フェリアレーナ様の輿入れ行列がトッパに入るのは、14時頃で、そのままトッパで一泊する予定。サエキ様がそう言ってた。
 あの襲撃場所を通るのは、逆算して13時過ぎ。
 ビアンカ、お腹すかせてないかな?
 軽くおにぎりでお昼を済ませ、後は待つしかない。
「ビアンカ、腹、すいとらんかね?」
 晃太も同じ心配をしている。腹が減ってはなんとかだけど。マジックバッグにおにぎりを入れて持たせる案もあったが、残念なことに不採用。理由は、ビアンカとルージュはマジックバッグに物は入れられても、中身を出せない。何度か練習したが、出来ず、負けず嫌いに躍起になってしていたら、父が止めてきた。
「壊れるばい、これ以上無理したら」
 貴重なSサイズのマジックバッグ。しぶしぶ諦めていた。
『ビアンカなら、腹を満たす分の獲物くらい獲れるわよ』
「まあ、そうやね」
 ドラゴンも熊も一撃やしね。
 チラチラと自分の懐中時計を見ながら過ごす。
 もしかしたら、諦めていてくれたりしたのかな?
 なんて、思っていたら。

 アォォォォォォーン……………

 狼の遠吠えが響く。ビアンカだ。
 来た。
『ユイッ、私も行くわッ』
「気をつけてねっ、人命最優先ッ」
 毎度お馴染み光のリンゴが現れて、ルージュが体勢を低くし、飛び出していく。
 見送る後ろで、晃太がアイテムボックスから馬車を出し、ノワールにホークさんとチュアンさんが繋げていく。そして晃太は支援魔法を連発する。魔力枯渇し魔力回復ポーションを煽って、再びギリギリまで支援魔法を連発。ノワールの馬車が繋がり、素早く馭者台にホークさんが飛び乗り、馬車にはチュアンさん達が乗り込む。
「エマ、テオ、何かあればユイさん達を守るんだぞッ」
「「はいっ」」
「ユイさん、コウタさんが回復したら手筈通りにッ」
「はいっ」
 ホークさんは手綱を操り、ノワールが爆走開始する。あっという間に見えなくなった。
 私達はトッパに戻り、警備の人に連絡だ。今はフェリアレーナ様の輿入れで厳戒態勢が敷かれている。トッパ近くで誰かが襲撃なんてことがあれば、総出で対応だ。それに、私の言葉は誰も疑わないはず。ビアンカとルージュ、フォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーの主人やしね。
「従魔が誰か襲われているのを察知して、救助に向かいました」
 なんて言ったら、即対応してくれる。
 ホークさんのアドバイスです。
「クウーン」
「クウーン」
 慌ただしくルージュと鷹の目の成人組が行ってしまい、ルリとクリスが不安そうだ。よしよし。大丈夫やからね。魔力枯渇した晃太は座り込んでいる為、少し休憩して、トッパに向かう。元気がペロペロ。いや、ベロベロ。元気君や、晃太休ませて。シートに横たわると、顎を腹にのせてる。枕か?
「なんね、心配してくれとるとね?」
「ふんふんっ」
 晃太が寝たまま元気を撫でる。ああ、いつもとおかしいから、元気なりに心配したのかね。ルリとクリスもベロベロ。大型犬が3匹群がり、足先しか見えない。知らない人が見たら、事件な感じだ。
 しばらくして晃太が起き上がる。晃太にも魔力回復Sがあるからね。
「晃太、歩ける? 肩、貸そうか?」
「よか。少し魔力回復したけん、歩けるよ。はよ、トッパに行かんと」
「そやな。皆、行くよ」
 幕とシートを片付けて、トッパに戻る。
 ルージュの光のリンゴが私達の周囲を漂いながら付いてくる。
 草原から街道にもう少しで入る頃、空気が変わる。
「ワンワンッ」
「グルルルゥゥゥゥ」
 元気が吠え、コハクが唸り声を上げる。
「ど、どうしたね」
 元気とコハクの視線の先は森。見ると、ルリもクリスもヒスイも背中の毛が総立ちしている。
 これは、由々しき事態や。まさか、魔物? ここら辺は、森と言っても、魔の森と呼ばれる場所ではない。魔の森と呼ばれる域はまだ奥で、ここら辺は地元の人も山菜を採りにくるくらいだ。そう聞いたのに。
 晃太が再び魔力回復ポーションを飲み、エマちゃんとテオ君がナイフを抜いた。
 私は武器用のフライパンをアイテムボックスから出して、握り締めた。
感想 851

あなたにおすすめの小説

「三番以下を取りなさい」と五年言われ続けたので、公開試験で本気を出しました

歩人
ファンタジー
王立魔法学院、入学時首席のリュシエンヌは、婚約者レイナルト公爵令息から五年間「女は三番以下を取れ」と命じられてきた。学院の序列は国家序列の縮図。レイナルトは常に一位に居続けた。婚約披露を控えた十九歳の春、レイナルトが新しい婚約者を連れて告げる。「お前では並び立てぬ。学力も身分も、足りなすぎる」——リュシエンヌは微笑んで、その翌日の年次公開試験で、五年封じてきた本気を出した。国王臨席の場で、史上最高点。魔法局長官が教授陣に命じる。「過去五年間の彼女の実測点と、もし本気で受けていたら出せた推計点を、公表したまえ」。教授陣は震える手で数字を並べた。レイナルトの「首席」は、全て彼女が譲った場所だった。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

夫の不倫相手に「妻の座を譲れ」と言われたので、譲る代わりに全部置いていきます 〜行き先は老舗旅館。追いかけてきても、もう遅いです〜 

なつめ
恋愛
夫の愛人に「妻の座を譲れ」と言い渡された主人公は、怒鳴り返すこともしがみつくこともせず、ただ静かに頷いた。 家のこと、食事のこと、社交のこと、義実家のこと、会社の裏方のこと。 誰も価値を知らなかった“妻の座”の中身を、そっくりそのまま置いて家を出る。 向かった先は、かつて傷ついた自分を受け入れてくれた老舗旅館。 再建に奔走する若旦那とともに働く中で、主人公は初めて「役に立つから愛される」のではなく、「あなた自身がいてほしい」と言われる温かさを知っていく。 一方、主人公を軽んじた元夫の家では、生活も体裁も仕事もじわじわと崩壊を始める。 これは、何も持たずに出ていったはずの女が、自分の人生を取り戻し、最後には新しい恋と居場所を手に入れる再生の物語。

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

夫が私にそっくりな下の娘ばかりをかわいがるのですけど!

山科ひさき
恋愛
「子供達をお願い」 そう言い残して、私はこの世を去った。愛する夫が子供達に私の分も愛情を注いでくれると信じていたから、不安はなかった。けれど死後の世界から見ている夫は下の娘ばかりをかわいがり、上の娘をないがしろにしている。許せない。そんな時、私に不思議な声が呼びかけてきて……。

「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」と追放された令嬢——王宮の食器が一枚も焼けなくなった

歩人
ファンタジー
「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」——王宮御用達の食器を焼く伯爵令嬢エルザは、婚約者の第二王子に手の荒れを嗤われて追放された。十二歳から十年間、王宮の全ての食器を手ずから焼いてきた。彼女の食器は特殊な土と焼成技術で魔力を通し、毒に触れると色が変わる。料理の温度も保つ。追放から三ヶ月後、晩餐会で新しい食器を使ったところ、毒が検知されず隣国の大使が倒れた。外交問題に発展する中、第二王子が「食器くらい誰でも焼ける」と窯に立った結果、出来上がったのは歪んだ灰色の皿だった。

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

私を追い出した結果、飼っていた聖獣は誰にも懐かないようです

天宮有
恋愛
 子供の頃、男爵令嬢の私アミリア・ファグトは助けた小犬が聖獣と判明して、飼うことが決まる。  数年後――成長した聖獣は家を守ってくれて、私に一番懐いていた。  そんな私を妬んだ姉ラミダは「聖獣は私が拾って一番懐いている」と吹聴していたようで、姉は侯爵令息ケドスの婚約者になる。  どうやらラミダは聖獣が一番懐いていた私が邪魔なようで、追い出そうと目論んでいたようだ。  家族とゲドスはラミダの嘘を信じて、私を蔑み追い出そうとしていた。