文字の大きさ
大
中
小
318 / 878
連載
素材確保①
3日後、軍隊ダンジョンに向かった。
ノワールまで連れているから目立つは目立つけど、初めてじゃないからね。特に問題もなく、転移魔法陣のある小屋に入る。元気とコハクはリード装着する。
『いいわね? 流すわよ』
ルージュが魔力を流す。ふわ、と景色が変わる。
目の前に、休息している冒険者の皆さん、びくっ、としている。いきなり大型のウルフとジャガーのもふもふ軍団に、ばんえい馬並にでかい魔法馬が現れたら、驚くわな。どうもどうもと挨拶して、ボス部屋前にさっさと並ぶ。
並んでいる冒険者パーティーは1つ。元気が尻尾ぷりぷりご挨拶してる。可愛いと好評でしたよ。
20階のボス部屋復活には1時間ほど。
さっき、冒険者パーティーが入っていったそうだ。なら、2時間以上待ちだね。案の定、軽く運動したいと稼ぎ頭達が、仔達と晃太、鷹の目の皆さんを連れて駆けていく。私は1人で並ぶ。
ふー、魔力を流して訓練訓練。しばらくしてボス部屋復活、前に並んでいた冒険者パーティーが入っていく。見送って、さて、ぼちぼち帰って来るように、呼ぶかね。
「なあ、あんた1人か?」
「はい?」
後ろから声を駆けられる。
振り返ると、不審そうな男性冒険者パーティー。頭から爪先まで見られている。まあ、そうだよね、ポンチョにもへじ生活の服の、もろ一般人だしね。
「いえ、私は順番待ちしているだけです」
「………………他はどうした?」
不信感丸出し。
「軽く散歩に行ってます」
私は本当の事を伝える。すると、冒険者パーティーの気配が、更なる不穏になる。
「散歩? ダンジョンだぞ、ここ」
ドスが効き出した声が出てきた。あら、いかん、怒らせたかな? そうだよね、ここはダンジョン、危険がいっぱいで、神経張っているんだろうし。
「お前、なめてんのか」
ズドドドドドドガガガガガガガガッ
土煙と爆音を立てて、私の側に横付け。ド派手なカーアクションの横付け見たいやっ。げふっ、土煙がひどかっ。
『ユイに何をするつもりなのですッ』
『私達のユイに、これ以上近付けさせないわよッ』
はい、頼りになります、ビアンカとルージュ。げふっ、げふっ。
グルル、と唸り声を上げるビアンカとルージュに、ドスが効いた声を出していた冒険者パーティーはしりもち付いている。顔面蒼白だよ。
「ブヒヒヒヒーンッ」
あ、ノワールが、血相変えたホークさん乗せて爆走して帰ってきた。横付けして、土煙が舞う、げふっ、げふっ。
「ユイさん、お怪我はッ?」
「げふっ、大丈夫です」
ホークさんがノワールから飛び降りて、私に駆け寄る。そして、警戒を露にして私の前に立つ。
で、ノワールはしりもち付いてる冒険者パーティー前で、前肢で地面を蹴ってる。やめて、ビアンカとルージュの毛並みも逆立ったままや。冒険者パーティーの皆さん、白目剥きそう。
「げふっ、あ、うちの従魔です」
「「「「「すみません」」」」」
なんだかんだと色々あったけど、冒険者パーティーの方も悪い人やないしね。1人でボス部屋前にぽつんといたら、驚くし、1人だけ残して行くなんて、普通しないからね。それに怒っていたんやろう。
ちーん、と静かになってる冒険者パーティーは、一列になり並んでいる。元気が尻尾ぷりぷりご挨拶している。触りたそうな人がいたので、どうぞと声かけした。
「うわあ、かわいい~、ふわふわ~」
私の鼻がどどどーん、と伸びる。
しばらくしてボス部屋復活。まずはルージュが黒い霞を出して中を調べている。軍隊ダンジョンのボス部屋にいる魔物は、一定していない。
『人型のようね。サイズ的にオルクかしら』
「ありがとうルージュ」
さて、どうするか。
ビアンカとルージュは仔達の訓練にしたいと言うので、羊部屋の様にすると。ルージュが開け、ビアンカが初撃を叩き込む。ノワールと私はダメ、と言われた。
「エマちゃん、テオ君、気を付けるんよ」
「大丈夫だよユイさん」
「俺も大丈夫」
相手はGより大きなオルクやもん、心配や。元気とコハクはボス部屋前に既に待機してる。三人娘は、その後ろに並ぶ。ちらちら私を見てくる。不安なんやろうけど、大丈夫かなあ。晃太がせっせと支援をしている。ホークさんは弓を構え、マデリーンさんは杖、チュアンさんは手を構える。
『開けるわよ』
ルージュが扉を押し開ける。
ビアンカが水の矢をガトリングの様に放つ。ホークさんが矢を、マデリーンさんは光の矢を、チュアンさんは土の塊を連射する。
「わんわんっ」
「がううぅぅっ」
元気とコハクが飛び込んで行き、全員続く。光のリンゴも続き、ゆっくり扉が閉まる。
だ、大丈夫かな?
おろおろしながら待つ。
『落ち着くのです』
『そうよ、ユイ』
「そうやけどさ」
おろおろ。そりゃさ、私が行った所で役には立たんけどさあ。未成年のエマちゃんとテオ君が入っているのに。
ちゃんとした装備品揃えんとなあ。
おろおろ。
そんなに時間はかかってないだろうけど、やっと扉が開く。
慌てて、ボス部屋に入ると、案の定三人娘は倒れてる。
「魔力枯渇や」
駆け寄る私に、晃太が声をかける。目立つケガはないようや。元気とコハクは何とか立っているが、へばってる。
「皆さん、ケガは?」
鷹の目の皆さんは? ミゲル君がしゃがみこんでいる。こちらも最後の方でシーサーペントの剣を使用したそうだ。魔力枯渇ね。掠り傷や小さな傷があるが、大ケガはないようだ。ほっ。
まずは三人娘をバギーに乗せる。外で待ってもらう為に、ミゲル君と元気とコハクを連れて外に出る。さっきの冒険者パーティーが心配そうに声をかけてきた。バギーにはびっくりしていたけどね。
「どうしました?」
「疲れたみたいで、セーフティで休ませようかと」
「そうですか」
「ビアンカ、付いてくれる?」
『いいのですよ』
「ルージュはボス部屋に来てね」
『いいわよ』
セーフティで水分補給をさせ、ビアンカに仔達とミゲル君を託し、私はボス部屋に戻る。転がるドロップ品は武器類だ。あ、斧がある。チュアンさんのサブ・ウエポンや。
手を切らないように回収する。最後に出てきた宝箱。ルージュがチェックして罠はなし。あ、ラッキー、魔法の水筒や。3本あり、これは引き取りや。後は指輪サイズのビロードの箱と、革のポーチ。ポーチは普通のポーチやないはず。ビロードの箱には小さな石の填まった指輪だ。
『ユイ、魔力を感じるわよ』
「何かしらのマジックアイテムなんやね。お父さんに鑑定してもらおうかね」
よし、取りこぼしなし。
「晃太、数は?」
「ロングソードが16、ショートソードが23、ナイフが61、片刃の斧が9、弓が6、小粒魔石が89、それより大きいのが18」
「いくつか引き取るかね」
私達はボス部屋を出た。
ノワールまで連れているから目立つは目立つけど、初めてじゃないからね。特に問題もなく、転移魔法陣のある小屋に入る。元気とコハクはリード装着する。
『いいわね? 流すわよ』
ルージュが魔力を流す。ふわ、と景色が変わる。
目の前に、休息している冒険者の皆さん、びくっ、としている。いきなり大型のウルフとジャガーのもふもふ軍団に、ばんえい馬並にでかい魔法馬が現れたら、驚くわな。どうもどうもと挨拶して、ボス部屋前にさっさと並ぶ。
並んでいる冒険者パーティーは1つ。元気が尻尾ぷりぷりご挨拶してる。可愛いと好評でしたよ。
20階のボス部屋復活には1時間ほど。
さっき、冒険者パーティーが入っていったそうだ。なら、2時間以上待ちだね。案の定、軽く運動したいと稼ぎ頭達が、仔達と晃太、鷹の目の皆さんを連れて駆けていく。私は1人で並ぶ。
ふー、魔力を流して訓練訓練。しばらくしてボス部屋復活、前に並んでいた冒険者パーティーが入っていく。見送って、さて、ぼちぼち帰って来るように、呼ぶかね。
「なあ、あんた1人か?」
「はい?」
後ろから声を駆けられる。
振り返ると、不審そうな男性冒険者パーティー。頭から爪先まで見られている。まあ、そうだよね、ポンチョにもへじ生活の服の、もろ一般人だしね。
「いえ、私は順番待ちしているだけです」
「………………他はどうした?」
不信感丸出し。
「軽く散歩に行ってます」
私は本当の事を伝える。すると、冒険者パーティーの気配が、更なる不穏になる。
「散歩? ダンジョンだぞ、ここ」
ドスが効き出した声が出てきた。あら、いかん、怒らせたかな? そうだよね、ここはダンジョン、危険がいっぱいで、神経張っているんだろうし。
「お前、なめてんのか」
ズドドドドドドガガガガガガガガッ
土煙と爆音を立てて、私の側に横付け。ド派手なカーアクションの横付け見たいやっ。げふっ、土煙がひどかっ。
『ユイに何をするつもりなのですッ』
『私達のユイに、これ以上近付けさせないわよッ』
はい、頼りになります、ビアンカとルージュ。げふっ、げふっ。
グルル、と唸り声を上げるビアンカとルージュに、ドスが効いた声を出していた冒険者パーティーはしりもち付いている。顔面蒼白だよ。
「ブヒヒヒヒーンッ」
あ、ノワールが、血相変えたホークさん乗せて爆走して帰ってきた。横付けして、土煙が舞う、げふっ、げふっ。
「ユイさん、お怪我はッ?」
「げふっ、大丈夫です」
ホークさんがノワールから飛び降りて、私に駆け寄る。そして、警戒を露にして私の前に立つ。
で、ノワールはしりもち付いてる冒険者パーティー前で、前肢で地面を蹴ってる。やめて、ビアンカとルージュの毛並みも逆立ったままや。冒険者パーティーの皆さん、白目剥きそう。
「げふっ、あ、うちの従魔です」
「「「「「すみません」」」」」
なんだかんだと色々あったけど、冒険者パーティーの方も悪い人やないしね。1人でボス部屋前にぽつんといたら、驚くし、1人だけ残して行くなんて、普通しないからね。それに怒っていたんやろう。
ちーん、と静かになってる冒険者パーティーは、一列になり並んでいる。元気が尻尾ぷりぷりご挨拶している。触りたそうな人がいたので、どうぞと声かけした。
「うわあ、かわいい~、ふわふわ~」
私の鼻がどどどーん、と伸びる。
しばらくしてボス部屋復活。まずはルージュが黒い霞を出して中を調べている。軍隊ダンジョンのボス部屋にいる魔物は、一定していない。
『人型のようね。サイズ的にオルクかしら』
「ありがとうルージュ」
さて、どうするか。
ビアンカとルージュは仔達の訓練にしたいと言うので、羊部屋の様にすると。ルージュが開け、ビアンカが初撃を叩き込む。ノワールと私はダメ、と言われた。
「エマちゃん、テオ君、気を付けるんよ」
「大丈夫だよユイさん」
「俺も大丈夫」
相手はGより大きなオルクやもん、心配や。元気とコハクはボス部屋前に既に待機してる。三人娘は、その後ろに並ぶ。ちらちら私を見てくる。不安なんやろうけど、大丈夫かなあ。晃太がせっせと支援をしている。ホークさんは弓を構え、マデリーンさんは杖、チュアンさんは手を構える。
『開けるわよ』
ルージュが扉を押し開ける。
ビアンカが水の矢をガトリングの様に放つ。ホークさんが矢を、マデリーンさんは光の矢を、チュアンさんは土の塊を連射する。
「わんわんっ」
「がううぅぅっ」
元気とコハクが飛び込んで行き、全員続く。光のリンゴも続き、ゆっくり扉が閉まる。
だ、大丈夫かな?
おろおろしながら待つ。
『落ち着くのです』
『そうよ、ユイ』
「そうやけどさ」
おろおろ。そりゃさ、私が行った所で役には立たんけどさあ。未成年のエマちゃんとテオ君が入っているのに。
ちゃんとした装備品揃えんとなあ。
おろおろ。
そんなに時間はかかってないだろうけど、やっと扉が開く。
慌てて、ボス部屋に入ると、案の定三人娘は倒れてる。
「魔力枯渇や」
駆け寄る私に、晃太が声をかける。目立つケガはないようや。元気とコハクは何とか立っているが、へばってる。
「皆さん、ケガは?」
鷹の目の皆さんは? ミゲル君がしゃがみこんでいる。こちらも最後の方でシーサーペントの剣を使用したそうだ。魔力枯渇ね。掠り傷や小さな傷があるが、大ケガはないようだ。ほっ。
まずは三人娘をバギーに乗せる。外で待ってもらう為に、ミゲル君と元気とコハクを連れて外に出る。さっきの冒険者パーティーが心配そうに声をかけてきた。バギーにはびっくりしていたけどね。
「どうしました?」
「疲れたみたいで、セーフティで休ませようかと」
「そうですか」
「ビアンカ、付いてくれる?」
『いいのですよ』
「ルージュはボス部屋に来てね」
『いいわよ』
セーフティで水分補給をさせ、ビアンカに仔達とミゲル君を託し、私はボス部屋に戻る。転がるドロップ品は武器類だ。あ、斧がある。チュアンさんのサブ・ウエポンや。
手を切らないように回収する。最後に出てきた宝箱。ルージュがチェックして罠はなし。あ、ラッキー、魔法の水筒や。3本あり、これは引き取りや。後は指輪サイズのビロードの箱と、革のポーチ。ポーチは普通のポーチやないはず。ビロードの箱には小さな石の填まった指輪だ。
『ユイ、魔力を感じるわよ』
「何かしらのマジックアイテムなんやね。お父さんに鑑定してもらおうかね」
よし、取りこぼしなし。
「晃太、数は?」
「ロングソードが16、ショートソードが23、ナイフが61、片刃の斧が9、弓が6、小粒魔石が89、それより大きいのが18」
「いくつか引き取るかね」
私達はボス部屋を出た。
感想 867
あなたにおすすめの小説
「今日限りで君を解雇する」――20年仕えた地味なメイドですが、料理も手紙も暗殺者対策も私がやっていました
「エナメル。今日限りで君を解雇する」
20年仕えた屋敷をクビになった、地味なエルフのメイド・エナメル。
だが、晩餐会の料理も、侯爵への手紙も、調度品の手配も、屋敷を狙う暗殺者の処理も――すべて彼女が陰で支えていたものだった。
エナメルが去ったあと、屋敷は少しずつ綻び始める。
一方の本人は、そんなことも知らず。
「さて。次はどこで雇っていただきましょう」
地味で目立たないベテランメイド・エナメルの、新しい奉公先探しが始まる。
※本作は『メイドのエナメルは今日も静かにお仕えします』シリーズの第1作です。本作単体でもお楽しみいただけます。
異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった
高校の英語の授業中、勇者召喚で僕たちクラスメイト7名は異世界にやって来た。
目的は魔王討伐では無くて、高難易度ダンジョンの封印?!
でも僕ユイトのスキルは「貯金箱」、エイジは「犬」。
役立たず認定で、二人とも城を追放されてしまった。
のんびり暮らそうとしたけどそうもいかなくなって。
僕たちは奇妙なスキルを駆使して異世界で生き延びる。
緩~いファンタージ物語です。のんびりと書いていきます。
本文はなるべく簡潔に、サクサク進むようにしています。
暇つぶしに読んでいただいて、楽しんでくださると嬉しいです。
なろう様にも投稿。
捨てられた幼女ですが、公爵家に拾われたら家族みんなの愛が重すぎました
幼い頃に母親に捨てられ、孤児院で暮らしていた少女リリア。
「役に立たなければ、また捨てられる」
そう思い、いつも“いい子”でいようとしていた彼女は、ある日、公爵家の馬車を助けたことをきっかけに屋敷へ招かれる。
そこで待っていたのは、娘に甘すぎる公爵夫妻に、妹を構いたがるレオン、そしてリリアを甘やかしたい使用人たち。
戸惑いながらも、少しずつ公爵家に居場所を見つけていくリリア。やがて夫妻から「私たちの娘になってほしい」と告げられて――。
これは、捨てられないために“いい子”でいようとしていた少女が、重すぎるほどの愛情に包まれ、本当の家族を見つけていく物語。
初夜のあとに愛する人がいると言われたので祝福で身体の時間を一日戻しました
夫婦となって初めて迎えた夜、セレンティアは夫リオールから「俺には、愛する人がいる」と告げられる。
彼が初夜を済ませた理由は、三年後に白い結婚として婚姻無効を申し立てられないようにするためだった。
けれどリオールは知らなかった。セレンティアの祝福《一日回帰》が、自分自身の身体にも使えることを。
セレンティアは自分の身体の時間を一日前へ戻し、三年間、侯爵家の妻として務めを果たすことを決める。
夫に愛されるためではない。三年後、白い結婚としてこの家を出ていくために。
番の証が出ないと捨てられたので、神様に確かめてもらいます
「番の証が出ぬからだ」
和平のために獣人国へ嫁いで四年。獣王ガイウス様との儀式は三度、三度とも証は出ませんでした。「人間の娘では神は認めぬ」——そう言われて、離宮へ。
雨漏りの下で眠り、井戸をさらい、畑を耕して。泣かなかったのは強いからではありません。獣人には、匂いでわかってしまうから。
嫁ぐ前に三年かけて読み込んだ婚姻法典。その第四章に、こうありました。
『既に誓いを結びたる者が、重ねて他者と誓いを立てんとする時、神は後の誓いを認めず』
——証が出なかったのは、わたしが人間だからではない。
長老会に申し立てたのは、解釈の確認だけ。わたしは悪くない、とは一言も書きませんでした。
遡誓の儀で神殿に浮かんだのは、六年前の秋の「成立」と、わたしの三度の「不成立(重複)」でした。
飛べないと捨てられたので、竜ごと出て行きます
「お前は竜に乗れもしない、ただの妻だろう」
竜騎士団長の夫はそう言って、飛べる従騎士の娘を選びましたわ。
ええ、わたくしは飛べません。十二年、地上におりました。
夜明け前に三十一頭の寝息を数え、歯を磨き、爪の砂を取り、冬に毛布を掛け、契約を編んで。——この国でただひとりの「調律者」として。
竜は、人を乗せない生き物ですのよ。竜自身が「乗せてもいい」と決めない限り。そして竜が誰の言葉で頷いてきたか、あの方は十二年、一度もお考えにならなかった。
離縁されて、わたくしは竜舎を出ました。
三日後から、竜は一頭も飛ばなくなりましたの。
怒っているのではありませんのよ。竜は報復をしませんもの。ただ——寂しいのです。
そして来月は、三年に一度の、契約更新日ですわ。
土下座する王妃の座などいらないので、冒険者に転職します。
「私が愛しているのはエルナ。君だけだ」
エルナは自分の夫でありハーメルン王国の国王であるカメルを愛していた。
彼がどれほど自分より隣国の聖女を優先しようとも。
結婚して二年が経っても初夜を迎えたことがなかろうとも。
しかし。
「エルナ。君に失望した。聖女を陥れていじめるとはな。罪を認め、ひざまずいて謝罪するように」
一年に一度の建国記念宴会であり結婚記念日に、カメルはすべての貴族や外国の使節団が見ている前で、エルナに身に覚えのない罪を認めろと断罪した。
愛が壊れるのは一瞬。
だからこそ、エルナはその場でひざまずいた。頭を地面にこすりつけて謝罪した。
「聖女を陰謀にかけた大罪人エルナは、この時間をもって王妃の座から退き、平民となりますことをお許しください。聖女様とどうかお幸せに」
*ゆるい設定です。不快に思われる方はブラウザバックをお願いします。
婚約破棄を受け入れた瞬間、王太子殿下が青ざめました
王都でもっとも華やかな春の夜会。その中央で、王太子エドワードは冷ややかな目を婚約者へ向けていた。
「リリアーナ・フォン・アルベルト公爵令嬢。君との婚約を、ここで破棄する」
会場が一瞬で静まり返る。
リリアーナは淡い金髪を揺らし、静かに王太子を見つめ返した。
「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「理由など明白だ。君は嫉妬深く、心が狭い。それに比べ、私は真実の愛を見つけた」
そう言ってエドワードが隣へ引き寄せたのは、男爵令嬢のセシリアだった。