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カルーラへ⑤
戦闘しています、ご注意ください
私は次々倒れている騎士や魔法馬達にポーションをかけ、飲ませて回る。
チュアンさん達に守られた晃太は、移動しながら、あちこちでバフやデバフを連発している。
オルクが迫って来たら、赤毛の騎士と若い騎士が斬り倒し、矢は光のリンゴが迎撃。ホークさんも合流して、弓と剣を持ちかえながら、戦闘している。エマちゃんとテオ君も、2人で連携して倒している。
『鬱陶しいのですッ』
ちゅどーんッ
ビアンカが雷を放ち、オルクやハイエナを一掃しても、後方の森からぞろぞろと新手が出てくる。
『いい加減にしなさいッ』
ドカーンッ
ルージュの閃光が、貫通していく。
我ながら、恐ろしい魔物を従魔にしたなあ。でも、とんでもなく頼もしかあ。
だけど、どうしてこんなにオルクやハイエナがおるんやろ? たしか、ノータでは数はもっと少なくて、魔の森の奥に巣を作っていた。それにオルクは賢いって聞いた。ノータでは農家の夫婦を襲い逃げていた。私に向かって来たのは、ナラちゃんを獲ようとしただけ。明らかに強そうな騎士団にこんなにしつこく迫るのは、おかしい気がする。だって、首都の騎士団と引けを取らないって聞いたし。
まあ、疑問は後にして。
ビアンカとルージュが次々に容赦なく魔法を放っている。
そんな中、爆走しているノワール。
「わふわふっ」
元気がこんな状況なのに、尻尾ぷりぷりしながら、私の元に。怪我はなさそうや。
ぷりぷりと尻尾降りながら、お尻を向ける。
「ワンッ」
バリィッ
雷が見事にこちらに向かってきたオルク+ハイエナに直撃。その隙に、エマちゃんとテオ君はサブウエポンの剣を、赤毛の騎士と若い騎士に渡している。どうやら、刃がダメになっているようだ。
「さあ、ポーションですよ」
私は上級ポーションを大柄の騎士のキズにかける。深そうな傷がみるみるうちに塞がっていく。それでその騎士は何とかなる。水分補給を促すと、一気飲みしている。
咳き込む騎士の背中を、私は必死にさすった。
どれくらいしたか、やっとオルク達が引き始めた。
「逃すなーッ」
一際大きな魔法馬に跨がっていた男性が声を張り上げる。
ホークさんが弓に持ちかえて、矢を放つ。他の騎士達も矢を放つ。次々に倒れ付していくオルクとハイエナ達。
「ビアンカッ、ルージュッ」
『任せるのですッ』
『逃さないわよッ』
ビアンカが飛び出していき、ルージュは閃光を放つ。
『森の中で、私に勝てると思うのですかッ』
一気に加速して、森に駆け込んで行くビアンカ。そして響く破裂音。
ビアンカに任せておけば、大丈夫やね。
私は治療に走った。
アイテムボックス内のポーションは上級ポーションがなくなり、中級が後数本や。すでにスポーツ飲料水はなく、水か紅茶、麦茶を配る。騎士の皆さんへとへとや。一気飲みしている。
「エマちゃん、上級のちょうだいっ」
「はいっ」
広大に展開していたため、離れた所でチュアンさんを中心に治療に回っている。
「テオ君、悪いけど晃太からポーション類もらって来て」
「はいっ」
駆けていくテオ君。
私は座り込んでいる中年騎士の傷をチェック。肩、左肩甲骨あたりに矢が刺さっている。いきなり抜けない。他は切り傷が多数。オルクの矢は質が悪いそうだ。そう、毒。騎士の顔色は悪く、息づかいが荒い。痛みに必死に耐えているんや。
「ルージュ、来てん」
呼ぶと、すぐに来てくれた。
『どうしたのユイ?』
「矢を抜くから、このあたりば麻痺させて」
『痛みを分からなくするのね、分かったわ』
「エマちゃん、矢を抜くから、横から解毒ポーションをかけてね」
「はいっ」
ルージュが鼻先から黒い霞を出し、騎士の肩を覆う。すると、顔色が悪いながらも、不思議そうな顔になる。
「痛みはどうですか?」
「ああ、痛みが引いたが、なんだ、痺れたような感じだ」
「一時的なものですから。今から矢を抜きます。痛みが出たら、仰ってください」
「分かった」
私は慎重に矢を抜く。5センチほど刺さっていた。抜いてる最中、エマちゃんが傷口に解毒ポーションをかける。薄い白い煙が上がるから、やっぱり毒が塗ってあったんだ。半分ほど残った解毒ポーションはそのまま飲んでもらい、次に上級ポーションを飲んでもらうと綺麗に傷が塞がる。顔色もよくなった。ほっ。
後は水分補給ね。冷えた紅茶を木製カップに入れて、中年の騎士に渡す。
「どうぞ、お茶です」
「すまない」
一気飲みして、勢いよく息を吐き出す。あれや、冷えたビールを飲んだ感じのやつ。
「生き返った、本当に感謝する」
血と泥と、汗で汚れた顔で笑う。良かった、大丈夫みたいや。ほっとしていると、その中年騎士が、あ、と言った表情で私の後ろをみる。
『ユイ、敵意なし。この群れの中で一番強い雄よ』
振り返ると、最後に「逃すな」と叫んだ人だ。私に向かってきている。ルージュがするり、と前に立ち、ホークさんも前に立つ。その騎士はノワールよりは小さいが、他に比べて大型の魔法馬から降りる。兜を脱ぐと、30過ぎくらいの金髪のいかつめな顔の男性。
「パーヴェル様」
ホークさんが小さく呟く。知り合い? あ、まさか?
「例の隊長さん」
小声でエマちゃんが教えてくれる。あ、やっぱり。わー、会わない方がいいかな、なんて思っていた人に、カルーラの街に入る前に遭遇しちゃったよ。でも、敵意ないなら、まあ、いいかなあ。
「久しぶりだな、ホーク」
「はい、パーヴェル様」
ホークさんが一礼。
「色々聞きたいが、まず、そちらのテイマー殿に、感謝の言葉を述べたいのだが」
ちらり、と私をみるホークさん。
『嘘ではないわ』
ルージュのお墨付きあり。私はホークさんに頷いて、立ち上がる。
「ご助力感謝しますテイマー殿」
そういって私の前に。怖そうな感じだけど、ルージュが大丈夫って言うなら大丈夫や。
「貴女の従魔に助力に来てもらわなければ、私も部下達も無事ではすまなかったでしょう。そして何よりも治療を惜しむことなく施してくれた。感謝の言葉もありません」
「特別な事をしたわけではないので」
元手タダのポーションを振りかけただけだしね。この人怖そうな感じあるけど、見た目がそんな感じなだけやね。よくみるとパーヴェルさんもあちこちケガをしている。そのパーヴェルさんは、ふむ、みたいな顔。その後ろでパーヴェルさんが騎乗していた魔法馬が、ホークさんに甘えるように頭を擦り付けている。あれが、噂の気性の荒い魔法馬かな。ずいぶんホークさんに懐いているけど。それはさておき、
「あの、ポーションを」
パーヴェルさんにも渡そうとしたら、ルリとクリスが走って来た。
『ねぇね~』
『にーにが、よんでるぅ~』
「晃太が?」
なんやろ? まさか、ケガとかしとらんよね?
慌てて駆け付けると、そこには倒れた騎士を囲んでいる晃太達。騎士は女性のようや。晃太がおろおろと両手でポーションを持ち迷っている。女性は上半身をマデリーンさんに支えられて座っている。意識はあるようや。チュアンさんが、治療魔法をかけている。
「あ、姉ちゃん」
「どうしたん?」
「ポーションが効かんみたんで」
ポーションが効かない?
「上級ポーションは飲んだんやけど……………」
私は女性騎士の側に座る。
「どうされました? 何処が悪いですか?」
女性騎士は顔色が少し悪いが、ひどく動揺している。
「足が、足が……………動かない………………」
「足?」
目立った外傷はないが。ベルトのバックルが割れて、ズボンの一部が破れている。そして視界に入る倒れて動かない魔法馬。動かない足。まさか。
「馬の下敷きになりませんでした?」
「はいっ………………」
上半身を揺らして、息を吐き出すように言う女性騎士。
やっぱりッ。脊髄を損傷したんやっ。おそらく上級ポーションでは負えない損傷なんやろう。馬の下敷きになったなら、骨折だってしているはずだが、足の向きは変わらないから、骨折はポーションでどうにかなったはずだが、脊髄まではどうしようもないんや。
「触りますよ」
念のために私は慎重に足に触れるが、まったく力がはいっていない。
不味い。不味い状況だが、上級ポーションで無理なら、あれがある。
答えてくれるか分からないが、私は祈りを捧げる。
神様、下級エリクサーでどうにかなりますか?
………………………出きるよ
この声は闘神様。
なら、私の神への祈りも発動を。
……………ごめんなさい、私の力は闘いのもの、癒しは与えられない、ごめんなさい
繰り返す、闘神様。しゅんとした声。
大丈夫ですよ、別の手段はあります。
だけど、下級とは言えエリクサー。かなりの高額や。黙って投与していいものか。やはり説明と同意が必要やな。おそらく脊髄以外のケガは、上級ポーションでどうにかなっているはず。断って慎重に腹部に軽く触れるも痛みや吐き気はないし、靴を脱がせて足背を触ると、ちゃんと脈が触れる。皮膚色も悪くない。
まずは診断やな、それから手段の確認や。手段はエリクサー以外にも、思い付いている。
「晃太、お父さん呼んで、まずは診てもらうよ。チュアンさん、一旦止めてください」
「あ、あ、分かった」
「はい」
「俺が行きます。ノワール」
ホークさんが軽く指笛鳴らすと、まだ走っていたノワールがやって来た。そのままポツンとしている馬車まで向かい、ノワールに繋いでいる。
そうやった、ルーム内におったんやった。
「ルージュ、来てん」
『どうしたの?』
「ちょっとよか?」
私はルージュのバンダナから魔力回復の指輪を外し、チュアンさんに渡す。
「念のため、魔力を回復しておいてください」
「? はい、ユイさん」
チュアンさんが指輪をつけて、魔力回復ポーションを飲む。
「私の、私の足、どうして動かないんです?……………」
女性騎士は不安そうに聞いてきた。いかん、説明できること、せんと。
「おそらく馬に挟まれた時に、脊髄を損傷したんだと思います」
「せきずい?」
「体を支える重要な骨ですよ。タダの骨折ならポーションでも治療可能なんでしょうが、これはそう簡単にはいきません」
向こうの医学でも、損傷具合では、完治なんてしない。一生車椅子生活だ。だが、私の説明で、女性騎士の顔に絶望が浮かぶ。
「治療法はいくつかあります。その手段もあります。どれが最もいいか、まずは父に診てもらいましょう。治療の判断はお任せになりますが、こちらが提示する以上、貴女が望むなら提供します」
私は息を付く。
「ですから、今はあまり動かないように」
「………………はい」
女性騎士は少し落ち着いて、支えているマデリーンさんに上半身を預ける。
「姉ちゃん、来たよ」
ノワールの牽いた馬車が来る。
その間、私と一緒に回っていた若い騎士以外は後処理に入ったり、近くを警戒している。ビアンカも無事に戻って来た。軽く全滅させたのですって、我ながら恐ろしい魔物を従魔にしたなあ。仔達は元気以外は私の近くにいる。元気はホークさんに付いて回っている。
「直ぐ戻りますから」
私は馬車に乗り込む。しっかりドアを閉め、ルームを開ける。
「お父さん、お母さん」
呼ぶと、真っ先に出てきたのは、ぽちゃぽちゃボディの花。よしよし。
直ぐに両親が来た。
「お父さん、鑑定して欲しか人がおるんよ。お母さんはこのまま馬車内におってね、ルーム閉めるけん」
「分かった」
「優衣、大丈夫ね?」
父は頷き、母は花を抱えて心配の表情を浮かべる。
「私にケガはないけん、大丈夫よ。お母さんは出らんほうがいいけんね」
「分かった」
父と一緒に馬車を出た。
私は次々倒れている騎士や魔法馬達にポーションをかけ、飲ませて回る。
チュアンさん達に守られた晃太は、移動しながら、あちこちでバフやデバフを連発している。
オルクが迫って来たら、赤毛の騎士と若い騎士が斬り倒し、矢は光のリンゴが迎撃。ホークさんも合流して、弓と剣を持ちかえながら、戦闘している。エマちゃんとテオ君も、2人で連携して倒している。
『鬱陶しいのですッ』
ちゅどーんッ
ビアンカが雷を放ち、オルクやハイエナを一掃しても、後方の森からぞろぞろと新手が出てくる。
『いい加減にしなさいッ』
ドカーンッ
ルージュの閃光が、貫通していく。
我ながら、恐ろしい魔物を従魔にしたなあ。でも、とんでもなく頼もしかあ。
だけど、どうしてこんなにオルクやハイエナがおるんやろ? たしか、ノータでは数はもっと少なくて、魔の森の奥に巣を作っていた。それにオルクは賢いって聞いた。ノータでは農家の夫婦を襲い逃げていた。私に向かって来たのは、ナラちゃんを獲ようとしただけ。明らかに強そうな騎士団にこんなにしつこく迫るのは、おかしい気がする。だって、首都の騎士団と引けを取らないって聞いたし。
まあ、疑問は後にして。
ビアンカとルージュが次々に容赦なく魔法を放っている。
そんな中、爆走しているノワール。
「わふわふっ」
元気がこんな状況なのに、尻尾ぷりぷりしながら、私の元に。怪我はなさそうや。
ぷりぷりと尻尾降りながら、お尻を向ける。
「ワンッ」
バリィッ
雷が見事にこちらに向かってきたオルク+ハイエナに直撃。その隙に、エマちゃんとテオ君はサブウエポンの剣を、赤毛の騎士と若い騎士に渡している。どうやら、刃がダメになっているようだ。
「さあ、ポーションですよ」
私は上級ポーションを大柄の騎士のキズにかける。深そうな傷がみるみるうちに塞がっていく。それでその騎士は何とかなる。水分補給を促すと、一気飲みしている。
咳き込む騎士の背中を、私は必死にさすった。
どれくらいしたか、やっとオルク達が引き始めた。
「逃すなーッ」
一際大きな魔法馬に跨がっていた男性が声を張り上げる。
ホークさんが弓に持ちかえて、矢を放つ。他の騎士達も矢を放つ。次々に倒れ付していくオルクとハイエナ達。
「ビアンカッ、ルージュッ」
『任せるのですッ』
『逃さないわよッ』
ビアンカが飛び出していき、ルージュは閃光を放つ。
『森の中で、私に勝てると思うのですかッ』
一気に加速して、森に駆け込んで行くビアンカ。そして響く破裂音。
ビアンカに任せておけば、大丈夫やね。
私は治療に走った。
アイテムボックス内のポーションは上級ポーションがなくなり、中級が後数本や。すでにスポーツ飲料水はなく、水か紅茶、麦茶を配る。騎士の皆さんへとへとや。一気飲みしている。
「エマちゃん、上級のちょうだいっ」
「はいっ」
広大に展開していたため、離れた所でチュアンさんを中心に治療に回っている。
「テオ君、悪いけど晃太からポーション類もらって来て」
「はいっ」
駆けていくテオ君。
私は座り込んでいる中年騎士の傷をチェック。肩、左肩甲骨あたりに矢が刺さっている。いきなり抜けない。他は切り傷が多数。オルクの矢は質が悪いそうだ。そう、毒。騎士の顔色は悪く、息づかいが荒い。痛みに必死に耐えているんや。
「ルージュ、来てん」
呼ぶと、すぐに来てくれた。
『どうしたのユイ?』
「矢を抜くから、このあたりば麻痺させて」
『痛みを分からなくするのね、分かったわ』
「エマちゃん、矢を抜くから、横から解毒ポーションをかけてね」
「はいっ」
ルージュが鼻先から黒い霞を出し、騎士の肩を覆う。すると、顔色が悪いながらも、不思議そうな顔になる。
「痛みはどうですか?」
「ああ、痛みが引いたが、なんだ、痺れたような感じだ」
「一時的なものですから。今から矢を抜きます。痛みが出たら、仰ってください」
「分かった」
私は慎重に矢を抜く。5センチほど刺さっていた。抜いてる最中、エマちゃんが傷口に解毒ポーションをかける。薄い白い煙が上がるから、やっぱり毒が塗ってあったんだ。半分ほど残った解毒ポーションはそのまま飲んでもらい、次に上級ポーションを飲んでもらうと綺麗に傷が塞がる。顔色もよくなった。ほっ。
後は水分補給ね。冷えた紅茶を木製カップに入れて、中年の騎士に渡す。
「どうぞ、お茶です」
「すまない」
一気飲みして、勢いよく息を吐き出す。あれや、冷えたビールを飲んだ感じのやつ。
「生き返った、本当に感謝する」
血と泥と、汗で汚れた顔で笑う。良かった、大丈夫みたいや。ほっとしていると、その中年騎士が、あ、と言った表情で私の後ろをみる。
『ユイ、敵意なし。この群れの中で一番強い雄よ』
振り返ると、最後に「逃すな」と叫んだ人だ。私に向かってきている。ルージュがするり、と前に立ち、ホークさんも前に立つ。その騎士はノワールよりは小さいが、他に比べて大型の魔法馬から降りる。兜を脱ぐと、30過ぎくらいの金髪のいかつめな顔の男性。
「パーヴェル様」
ホークさんが小さく呟く。知り合い? あ、まさか?
「例の隊長さん」
小声でエマちゃんが教えてくれる。あ、やっぱり。わー、会わない方がいいかな、なんて思っていた人に、カルーラの街に入る前に遭遇しちゃったよ。でも、敵意ないなら、まあ、いいかなあ。
「久しぶりだな、ホーク」
「はい、パーヴェル様」
ホークさんが一礼。
「色々聞きたいが、まず、そちらのテイマー殿に、感謝の言葉を述べたいのだが」
ちらり、と私をみるホークさん。
『嘘ではないわ』
ルージュのお墨付きあり。私はホークさんに頷いて、立ち上がる。
「ご助力感謝しますテイマー殿」
そういって私の前に。怖そうな感じだけど、ルージュが大丈夫って言うなら大丈夫や。
「貴女の従魔に助力に来てもらわなければ、私も部下達も無事ではすまなかったでしょう。そして何よりも治療を惜しむことなく施してくれた。感謝の言葉もありません」
「特別な事をしたわけではないので」
元手タダのポーションを振りかけただけだしね。この人怖そうな感じあるけど、見た目がそんな感じなだけやね。よくみるとパーヴェルさんもあちこちケガをしている。そのパーヴェルさんは、ふむ、みたいな顔。その後ろでパーヴェルさんが騎乗していた魔法馬が、ホークさんに甘えるように頭を擦り付けている。あれが、噂の気性の荒い魔法馬かな。ずいぶんホークさんに懐いているけど。それはさておき、
「あの、ポーションを」
パーヴェルさんにも渡そうとしたら、ルリとクリスが走って来た。
『ねぇね~』
『にーにが、よんでるぅ~』
「晃太が?」
なんやろ? まさか、ケガとかしとらんよね?
慌てて駆け付けると、そこには倒れた騎士を囲んでいる晃太達。騎士は女性のようや。晃太がおろおろと両手でポーションを持ち迷っている。女性は上半身をマデリーンさんに支えられて座っている。意識はあるようや。チュアンさんが、治療魔法をかけている。
「あ、姉ちゃん」
「どうしたん?」
「ポーションが効かんみたんで」
ポーションが効かない?
「上級ポーションは飲んだんやけど……………」
私は女性騎士の側に座る。
「どうされました? 何処が悪いですか?」
女性騎士は顔色が少し悪いが、ひどく動揺している。
「足が、足が……………動かない………………」
「足?」
目立った外傷はないが。ベルトのバックルが割れて、ズボンの一部が破れている。そして視界に入る倒れて動かない魔法馬。動かない足。まさか。
「馬の下敷きになりませんでした?」
「はいっ………………」
上半身を揺らして、息を吐き出すように言う女性騎士。
やっぱりッ。脊髄を損傷したんやっ。おそらく上級ポーションでは負えない損傷なんやろう。馬の下敷きになったなら、骨折だってしているはずだが、足の向きは変わらないから、骨折はポーションでどうにかなったはずだが、脊髄まではどうしようもないんや。
「触りますよ」
念のために私は慎重に足に触れるが、まったく力がはいっていない。
不味い。不味い状況だが、上級ポーションで無理なら、あれがある。
答えてくれるか分からないが、私は祈りを捧げる。
神様、下級エリクサーでどうにかなりますか?
………………………出きるよ
この声は闘神様。
なら、私の神への祈りも発動を。
……………ごめんなさい、私の力は闘いのもの、癒しは与えられない、ごめんなさい
繰り返す、闘神様。しゅんとした声。
大丈夫ですよ、別の手段はあります。
だけど、下級とは言えエリクサー。かなりの高額や。黙って投与していいものか。やはり説明と同意が必要やな。おそらく脊髄以外のケガは、上級ポーションでどうにかなっているはず。断って慎重に腹部に軽く触れるも痛みや吐き気はないし、靴を脱がせて足背を触ると、ちゃんと脈が触れる。皮膚色も悪くない。
まずは診断やな、それから手段の確認や。手段はエリクサー以外にも、思い付いている。
「晃太、お父さん呼んで、まずは診てもらうよ。チュアンさん、一旦止めてください」
「あ、あ、分かった」
「はい」
「俺が行きます。ノワール」
ホークさんが軽く指笛鳴らすと、まだ走っていたノワールがやって来た。そのままポツンとしている馬車まで向かい、ノワールに繋いでいる。
そうやった、ルーム内におったんやった。
「ルージュ、来てん」
『どうしたの?』
「ちょっとよか?」
私はルージュのバンダナから魔力回復の指輪を外し、チュアンさんに渡す。
「念のため、魔力を回復しておいてください」
「? はい、ユイさん」
チュアンさんが指輪をつけて、魔力回復ポーションを飲む。
「私の、私の足、どうして動かないんです?……………」
女性騎士は不安そうに聞いてきた。いかん、説明できること、せんと。
「おそらく馬に挟まれた時に、脊髄を損傷したんだと思います」
「せきずい?」
「体を支える重要な骨ですよ。タダの骨折ならポーションでも治療可能なんでしょうが、これはそう簡単にはいきません」
向こうの医学でも、損傷具合では、完治なんてしない。一生車椅子生活だ。だが、私の説明で、女性騎士の顔に絶望が浮かぶ。
「治療法はいくつかあります。その手段もあります。どれが最もいいか、まずは父に診てもらいましょう。治療の判断はお任せになりますが、こちらが提示する以上、貴女が望むなら提供します」
私は息を付く。
「ですから、今はあまり動かないように」
「………………はい」
女性騎士は少し落ち着いて、支えているマデリーンさんに上半身を預ける。
「姉ちゃん、来たよ」
ノワールの牽いた馬車が来る。
その間、私と一緒に回っていた若い騎士以外は後処理に入ったり、近くを警戒している。ビアンカも無事に戻って来た。軽く全滅させたのですって、我ながら恐ろしい魔物を従魔にしたなあ。仔達は元気以外は私の近くにいる。元気はホークさんに付いて回っている。
「直ぐ戻りますから」
私は馬車に乗り込む。しっかりドアを閉め、ルームを開ける。
「お父さん、お母さん」
呼ぶと、真っ先に出てきたのは、ぽちゃぽちゃボディの花。よしよし。
直ぐに両親が来た。
「お父さん、鑑定して欲しか人がおるんよ。お母さんはこのまま馬車内におってね、ルーム閉めるけん」
「分かった」
「優衣、大丈夫ね?」
父は頷き、母は花を抱えて心配の表情を浮かべる。
「私にケガはないけん、大丈夫よ。お母さんは出らんほうがいいけんね」
「分かった」
父と一緒に馬車を出た。
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