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合流④
オークの巣を離れてルームに入る。
まずはアリスの様子を見ると、シルフィ達にお乳を上げていた。落ち着いたようや。
嗽、手洗いして、鷹の目の皆さんがブラッシングをしてくれる。
私はお地蔵さんにお祈り。
「神様、今回の件の原因を教えてください」
お祈りしてみたが、お返事なし。
今日はお留守か。仕方なか。
諦めて振り返ると、黒髪のイッケメン時空神様が。まさか、わざわざいらっしゃってくれた。
「時空神様」
本日お一人様だ。
「久しぶりだな」
最後にお会いしたのは、魔境に向かう前だった。
「あの時空神様」
「今回の件だろう? すまんが、直接の原因は今は話してやれん」
「そうですか」
やっぱり。
「だが、いままでに起きた魔物の氾濫(スタンビード)の原因の大まかな説明はできるぞ」
おおっ、ありがたやっ。
魔物の氾濫(スタンビード)の原因は大まかに3つ。
1つ、地脈に含まれる魔力の悪影響により、魔物がハイになる。下級や、特に人型の魔物が強く影響を受ける。これには差が出る。すごく少ない数の場合もあれば、あのパーヴェルさん達を襲ったオルク達。自分達の巣を空にするまでおかしくなる。
2つ、ダンジョンより何かしらの理由で特殊個体が出てきて、近しい種族の魔物を操る。今回の蜘蛛達かな? もしくは冷蔵庫ダンジョンみたいにたまにうっかりさんの魔物が零れ落ちるのが、一匹ではなく大量に溢れる。野良ダンジョンの場合は、特有個体。冷蔵庫ダンジョンのように街と共存しているダンジョンは、大量の魔物が溢れる傾向にある。ただ、冷蔵庫・軍隊ダンジョンのように常に冒険者が潜っているものは、大量に溢れる事はない。常に間引きしている状態だからだそうだ。ダンジョンのサイズによるが、階層が1桁のダンジョンから溢れる魔物は、たかが知れてる。出ても1桁の数。冷蔵庫・軍隊ダンジョンで恐いのは数年おきに、上位魔物が零れ落ちるのだ。シュタインさんにケガさせた熊ね。
3つ、この2つが複雑に絡んで発生する。
「なるほど」
「もっと詳しく説明してやりたいが、色々制約があってな」
きっと、あまり介入出来ないんやろうなあ。
「始祖神様よりの依頼はいつから取りかかる?」
「あ、イシス達の従魔登録してから直ぐに。雪が降るような冬に入る前に」
「そうか。何かあれば、直ぐに始祖神様に報告をしてくれ」
「はい」
時空神様がお帰りの様子。
私は慌てて、セレクトショップダリアから焼き菓子詰め合わせを幾つかタップ。
「どうぞ、時空神様」
「すまんな。ちょっと来ただけなのに」
「いえいえ、神様に来て頂けて、恩恵があるんです。どうぞ」
「ありがとう。チビ達が喜ぶ」
焼き菓子の箱を抱えて、時空神様が消える。響く、てってれってー。
見送って、私は不安になってきた。
始祖神様からもそうだが、時空神様からも何かあれば呼ぶように言われた。何かあるんやろうか? 漠然とした不安なんやけど。基本的に、こちらに介入出来ないはずの神様が、報告するようにって、何かあるんやないかな? うーん、うーん、うーん。分からん。
「姉ちゃん、どうしたん?」
途中でダイニングキッチンに来た晃太が、聞いてくる。
「いや、何でもないよ」
深く考えたら深みに嵌まりそうや、やめた、ご飯の準備せんとね。
「さ、今日は皆頑張ったから、色々食べよう」
『ユイッ、油淋鶏なのですっ』
『エビ、エビ、エビッ』
『我はなんでもいいのだが、肉がいいのだ』
『ピザヲ所望スル』
従魔の部屋で大人しくしていた面々が、騒ぎだす。
うん、考える暇なしや。
数日間かけて、カルーラに戻る。
「………………………………」
城門の警備の皆さんが、イシスを見て無言になる。
「新しい従魔です」
「………………………………はい。ギルドまで同行します」
「ありがとうございます」
あらかじめイシスとオシリスの事は報告してあるので、ギルドは問題なかったが、途中の道すがらの視線が辛かった。
やっぱり迫力満点のイシスが注目を集めてしまい、主人の私にも視線が集まる。分かってますよ、言いたいこと。また増えてるとか、え、大丈夫なん? でしょう。イシスは気にもしないし、オシリスも知らん顔。いちいち気にしてたらキリがない。
いそいそとパーティーハウスに戻る。
「わんわんっ」
花が飛び出してくる、あはははん、ぽちゃぽちゃ。仔達は母にわーっと群がる。
「はいはい、お帰り」
「ただいま。問題なかった?」
「特にはなかね」
「そうね、良かった」
ぞろぞろとパーティーハウスへ。ただ、イシスの体躯ではパーティーハウスに入れないため、倉庫を経由してルームに。倉庫が大きくて良かった。
パーティーハウスにルージュが魔法のカーテンを広げてくれる。ルームに全員入る。
仔達はアレスを先頭に中庭に走り出していった。しばらく遊んでおくれ。嗽、手洗いして、と。
よし、今後の話をせんとね。
行程に関しては、晃太とホークさん、ビアンカとルージュ、イシスに任せることにした。
「なあ、この山、なんかあるん? 神様気にしとったし」
晃太が地図を示す。視線は先代エリアボスであるイシスに。
『先代ノ話デハ、触レテハナラヌモノダト』
なんや物騒な感じ。
「この山自体が?」
晃太が質問、イシスは首を横に。
『違ウ、コノ山ノ中ニ潜ムモノニ手ヲ出ダスナ、トイワレタ。ダカラ、飛行デキル我々デモ近付カナイヨウニシテイル。下カラハコノ山ニハ入レヌカラナ』
「それって何やねん?」
それそれ。
『サア』
かっくん。肝心な所がっ。
『ダガ、コノ山ニ関シテハ、魔境ガ形成サレル頃ノ話。詳シク知ルモノハイナイ』
「そうな」
うーん。
『でも、以前、この辺りをアレスと回った事があるのです』
『そうね。何もなかったわよ』
ビアンカとルージュは山には行かなかったが、アレスのへいへい行くぜ行軍に付き添い、爆走したそうだ。だけど、記憶に残るようなことは起きなかったと、うーん。イシスにしても山の上は飛行したことはないが、周囲を旋回したことはあるが、こちらも何もなかったと。
単純に考えて、ビアンカとルージュが行った後に何かしら起きたんかな? それが基本的には見守る位置にある神様でも口を出さなくてはならない状況になっているんやかいな?
あ、怖くなってきた。
『ユイ、どうしたのです?』
『動揺しているわ。大丈夫よ、私達がついてるわ』
ビアンカとルージュがそっと寄り添ってくれる。ありがたい。
「そやね。そうやね。ありがとうビアンカ、ルージュ。とにかくくるっと回るだけ回ろうかね。何かあれば直ぐに神様に報告で」
それくらいかな。
行程に関しては、ノワールの灯火の女神様のブースト頼りに、騎乗して進む。結局またお世話になります。
準備して、数日以内には出発や。
いよいよ出発の前の日の夜。
寝静まった夜、目が覚めてしまい、トイレの帰りに、中庭のベンチにぽつん、とホークさんが座っているのを発見。もしかしたら、ミノラさんの事で悩んだりしてるのかな? ど、どうしよう。声かけた方がいいかな。1人で考えたい時だってあるだろうし、余計なお世話になるのも嫌だし。うーん、どうしよう。
散々悩んで、夜は寒くなってるからね、風邪引きますよって、感じで声かけて引っ込もう。
よし、中庭のドアを開ける。
「ホークさん」
ドアの音で気がついたホークさんが振り返る。
「ユイさん」
「風邪引きますよ」
「はい、もうすぐ休みます」
よし、いいかな。引っ込もう。だけど、なんだか、このままでいいのかな? たまには1人で考えたい時もあるはずだけど、まるであの時のような感じがする。ミノラさんの話を聞いた時のようや。
「ホークさん、どうしました?」
咄嗟に出た言葉に、ホークさんが少し驚いた顔。
「いや、大した事は、ないですが、はい」
珍しく歯切れの悪いホークさん。もしかしたら、私、余計なお世話やないかな? やっぱり、引っ込んだ方がいいかも。
「あの、ユイさん」
なんて考えていると、ホークさんが声をかけてきた。
「少し、話を聞いてもらえませんか?」
本当に珍しい。やけど、お願いされたし、頼りにされていると思うとちょっと嬉しいかな。
私はホークさんの隣に腰かける。
そっと、横顔を見ると、少しだけ、頬が赤い気がする。あ、もしかして熱?
「ホークさん、もしかして、具合悪いんや………」
「ユイさん」
ホークさんが私の言葉を遮った。どうしたんやろう?
「あ、はい」
「今から俺が話すこと、聞いたら忘れて貰えませんか?」
「忘れる? なんでです?」
何で? 何でかって思ったけど、ホークさんの顔が、何やら悩みの表情。あ、そうせんといかんやつや。
「特別ボーナスってことで」
そこまで言われたらね。
「分かりました。忘れます」
はい、誓います。
「兄とミノラの話は以前しましたよね」
「はい」
忘れてない。エマちゃんとテオ君を産んで、ホークさんのお兄さん、ファルコンさんを待ち続けた女性。最終的にはエマちゃんとテオ君を置き去りにしたけど、私には、どうしてもミノラさんが全部悪く思えない。勝手な思いだけどね。
「エマもテオも無事に成人して、今、ユイさんの庇護下にあります。色々ありましたが、現状は2人にとっていいし決して悪い状況ではないと思います。俺も、ユイさんに買って貰って現状恵まれていると思っています」
「そ、そうですか?」
あの時、リティアさんから聞いてマーファを飛び出して、首都に急いで向かった。ノワールのお陰で早く着いたし、ビアンカとルージュのちゅどんドカンで資金も十分だった。負傷したホークさんとエマちゃんを救ったのは神への祈りと、時空神様、魔力を提供してくれたビアンカとルージュのお陰や。
「だけど、最近与えてもらってばかり、それがまるで当たり前のように感じてしまって。欲張るようになってしまって。強欲になってしまったと」
「え。そんなことないですよね」
ホークさんはいつも遠慮がちだ。とてもそうとは思えない。
「いいえ、俺は戦闘奴隷として、望んではいけないものを望んでいます」
それは何? 気になる。
ホークさんは真っ直ぐ私をみる。
「俺は、家庭を築きたい」
その真っ直ぐな言葉は、私の中にある、何かをごっそり抉り取った。
まずはアリスの様子を見ると、シルフィ達にお乳を上げていた。落ち着いたようや。
嗽、手洗いして、鷹の目の皆さんがブラッシングをしてくれる。
私はお地蔵さんにお祈り。
「神様、今回の件の原因を教えてください」
お祈りしてみたが、お返事なし。
今日はお留守か。仕方なか。
諦めて振り返ると、黒髪のイッケメン時空神様が。まさか、わざわざいらっしゃってくれた。
「時空神様」
本日お一人様だ。
「久しぶりだな」
最後にお会いしたのは、魔境に向かう前だった。
「あの時空神様」
「今回の件だろう? すまんが、直接の原因は今は話してやれん」
「そうですか」
やっぱり。
「だが、いままでに起きた魔物の氾濫(スタンビード)の原因の大まかな説明はできるぞ」
おおっ、ありがたやっ。
魔物の氾濫(スタンビード)の原因は大まかに3つ。
1つ、地脈に含まれる魔力の悪影響により、魔物がハイになる。下級や、特に人型の魔物が強く影響を受ける。これには差が出る。すごく少ない数の場合もあれば、あのパーヴェルさん達を襲ったオルク達。自分達の巣を空にするまでおかしくなる。
2つ、ダンジョンより何かしらの理由で特殊個体が出てきて、近しい種族の魔物を操る。今回の蜘蛛達かな? もしくは冷蔵庫ダンジョンみたいにたまにうっかりさんの魔物が零れ落ちるのが、一匹ではなく大量に溢れる。野良ダンジョンの場合は、特有個体。冷蔵庫ダンジョンのように街と共存しているダンジョンは、大量の魔物が溢れる傾向にある。ただ、冷蔵庫・軍隊ダンジョンのように常に冒険者が潜っているものは、大量に溢れる事はない。常に間引きしている状態だからだそうだ。ダンジョンのサイズによるが、階層が1桁のダンジョンから溢れる魔物は、たかが知れてる。出ても1桁の数。冷蔵庫・軍隊ダンジョンで恐いのは数年おきに、上位魔物が零れ落ちるのだ。シュタインさんにケガさせた熊ね。
3つ、この2つが複雑に絡んで発生する。
「なるほど」
「もっと詳しく説明してやりたいが、色々制約があってな」
きっと、あまり介入出来ないんやろうなあ。
「始祖神様よりの依頼はいつから取りかかる?」
「あ、イシス達の従魔登録してから直ぐに。雪が降るような冬に入る前に」
「そうか。何かあれば、直ぐに始祖神様に報告をしてくれ」
「はい」
時空神様がお帰りの様子。
私は慌てて、セレクトショップダリアから焼き菓子詰め合わせを幾つかタップ。
「どうぞ、時空神様」
「すまんな。ちょっと来ただけなのに」
「いえいえ、神様に来て頂けて、恩恵があるんです。どうぞ」
「ありがとう。チビ達が喜ぶ」
焼き菓子の箱を抱えて、時空神様が消える。響く、てってれってー。
見送って、私は不安になってきた。
始祖神様からもそうだが、時空神様からも何かあれば呼ぶように言われた。何かあるんやろうか? 漠然とした不安なんやけど。基本的に、こちらに介入出来ないはずの神様が、報告するようにって、何かあるんやないかな? うーん、うーん、うーん。分からん。
「姉ちゃん、どうしたん?」
途中でダイニングキッチンに来た晃太が、聞いてくる。
「いや、何でもないよ」
深く考えたら深みに嵌まりそうや、やめた、ご飯の準備せんとね。
「さ、今日は皆頑張ったから、色々食べよう」
『ユイッ、油淋鶏なのですっ』
『エビ、エビ、エビッ』
『我はなんでもいいのだが、肉がいいのだ』
『ピザヲ所望スル』
従魔の部屋で大人しくしていた面々が、騒ぎだす。
うん、考える暇なしや。
数日間かけて、カルーラに戻る。
「………………………………」
城門の警備の皆さんが、イシスを見て無言になる。
「新しい従魔です」
「………………………………はい。ギルドまで同行します」
「ありがとうございます」
あらかじめイシスとオシリスの事は報告してあるので、ギルドは問題なかったが、途中の道すがらの視線が辛かった。
やっぱり迫力満点のイシスが注目を集めてしまい、主人の私にも視線が集まる。分かってますよ、言いたいこと。また増えてるとか、え、大丈夫なん? でしょう。イシスは気にもしないし、オシリスも知らん顔。いちいち気にしてたらキリがない。
いそいそとパーティーハウスに戻る。
「わんわんっ」
花が飛び出してくる、あはははん、ぽちゃぽちゃ。仔達は母にわーっと群がる。
「はいはい、お帰り」
「ただいま。問題なかった?」
「特にはなかね」
「そうね、良かった」
ぞろぞろとパーティーハウスへ。ただ、イシスの体躯ではパーティーハウスに入れないため、倉庫を経由してルームに。倉庫が大きくて良かった。
パーティーハウスにルージュが魔法のカーテンを広げてくれる。ルームに全員入る。
仔達はアレスを先頭に中庭に走り出していった。しばらく遊んでおくれ。嗽、手洗いして、と。
よし、今後の話をせんとね。
行程に関しては、晃太とホークさん、ビアンカとルージュ、イシスに任せることにした。
「なあ、この山、なんかあるん? 神様気にしとったし」
晃太が地図を示す。視線は先代エリアボスであるイシスに。
『先代ノ話デハ、触レテハナラヌモノダト』
なんや物騒な感じ。
「この山自体が?」
晃太が質問、イシスは首を横に。
『違ウ、コノ山ノ中ニ潜ムモノニ手ヲ出ダスナ、トイワレタ。ダカラ、飛行デキル我々デモ近付カナイヨウニシテイル。下カラハコノ山ニハ入レヌカラナ』
「それって何やねん?」
それそれ。
『サア』
かっくん。肝心な所がっ。
『ダガ、コノ山ニ関シテハ、魔境ガ形成サレル頃ノ話。詳シク知ルモノハイナイ』
「そうな」
うーん。
『でも、以前、この辺りをアレスと回った事があるのです』
『そうね。何もなかったわよ』
ビアンカとルージュは山には行かなかったが、アレスのへいへい行くぜ行軍に付き添い、爆走したそうだ。だけど、記憶に残るようなことは起きなかったと、うーん。イシスにしても山の上は飛行したことはないが、周囲を旋回したことはあるが、こちらも何もなかったと。
単純に考えて、ビアンカとルージュが行った後に何かしら起きたんかな? それが基本的には見守る位置にある神様でも口を出さなくてはならない状況になっているんやかいな?
あ、怖くなってきた。
『ユイ、どうしたのです?』
『動揺しているわ。大丈夫よ、私達がついてるわ』
ビアンカとルージュがそっと寄り添ってくれる。ありがたい。
「そやね。そうやね。ありがとうビアンカ、ルージュ。とにかくくるっと回るだけ回ろうかね。何かあれば直ぐに神様に報告で」
それくらいかな。
行程に関しては、ノワールの灯火の女神様のブースト頼りに、騎乗して進む。結局またお世話になります。
準備して、数日以内には出発や。
いよいよ出発の前の日の夜。
寝静まった夜、目が覚めてしまい、トイレの帰りに、中庭のベンチにぽつん、とホークさんが座っているのを発見。もしかしたら、ミノラさんの事で悩んだりしてるのかな? ど、どうしよう。声かけた方がいいかな。1人で考えたい時だってあるだろうし、余計なお世話になるのも嫌だし。うーん、どうしよう。
散々悩んで、夜は寒くなってるからね、風邪引きますよって、感じで声かけて引っ込もう。
よし、中庭のドアを開ける。
「ホークさん」
ドアの音で気がついたホークさんが振り返る。
「ユイさん」
「風邪引きますよ」
「はい、もうすぐ休みます」
よし、いいかな。引っ込もう。だけど、なんだか、このままでいいのかな? たまには1人で考えたい時もあるはずだけど、まるであの時のような感じがする。ミノラさんの話を聞いた時のようや。
「ホークさん、どうしました?」
咄嗟に出た言葉に、ホークさんが少し驚いた顔。
「いや、大した事は、ないですが、はい」
珍しく歯切れの悪いホークさん。もしかしたら、私、余計なお世話やないかな? やっぱり、引っ込んだ方がいいかも。
「あの、ユイさん」
なんて考えていると、ホークさんが声をかけてきた。
「少し、話を聞いてもらえませんか?」
本当に珍しい。やけど、お願いされたし、頼りにされていると思うとちょっと嬉しいかな。
私はホークさんの隣に腰かける。
そっと、横顔を見ると、少しだけ、頬が赤い気がする。あ、もしかして熱?
「ホークさん、もしかして、具合悪いんや………」
「ユイさん」
ホークさんが私の言葉を遮った。どうしたんやろう?
「あ、はい」
「今から俺が話すこと、聞いたら忘れて貰えませんか?」
「忘れる? なんでです?」
何で? 何でかって思ったけど、ホークさんの顔が、何やら悩みの表情。あ、そうせんといかんやつや。
「特別ボーナスってことで」
そこまで言われたらね。
「分かりました。忘れます」
はい、誓います。
「兄とミノラの話は以前しましたよね」
「はい」
忘れてない。エマちゃんとテオ君を産んで、ホークさんのお兄さん、ファルコンさんを待ち続けた女性。最終的にはエマちゃんとテオ君を置き去りにしたけど、私には、どうしてもミノラさんが全部悪く思えない。勝手な思いだけどね。
「エマもテオも無事に成人して、今、ユイさんの庇護下にあります。色々ありましたが、現状は2人にとっていいし決して悪い状況ではないと思います。俺も、ユイさんに買って貰って現状恵まれていると思っています」
「そ、そうですか?」
あの時、リティアさんから聞いてマーファを飛び出して、首都に急いで向かった。ノワールのお陰で早く着いたし、ビアンカとルージュのちゅどんドカンで資金も十分だった。負傷したホークさんとエマちゃんを救ったのは神への祈りと、時空神様、魔力を提供してくれたビアンカとルージュのお陰や。
「だけど、最近与えてもらってばかり、それがまるで当たり前のように感じてしまって。欲張るようになってしまって。強欲になってしまったと」
「え。そんなことないですよね」
ホークさんはいつも遠慮がちだ。とてもそうとは思えない。
「いいえ、俺は戦闘奴隷として、望んではいけないものを望んでいます」
それは何? 気になる。
ホークさんは真っ直ぐ私をみる。
「俺は、家庭を築きたい」
その真っ直ぐな言葉は、私の中にある、何かをごっそり抉り取った。
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