文字の大きさ
大
中
小
498 / 877
連載
帰る準備⑩
「すみませんリィマさん。こんなお願いして」
「構わないよ、これくらい」
本日、リィマさんにあるお願いの為にパーティーハウスに来てもらった。
居間のテーブルの上に所狭しと並ぶビロードの箱。今回のルーティのダンジョンで出た宝飾品だ。次回の秋のグーデオークションに寄贈しようと思って。
結構ちゅどん、ドカン、バキバキして、かなりの宝飾品を入手した。布やワインは引き取ったけど、それでも結構な数。今でも登録したサブ・ドアの向こうで、朝も早く、日が昇る前からちゅどん、ドカン、バキバキしてる。更に増えそう。マーファに帰って、タージェルさんに見てもらえばいいのだけど、あんまり多量だと、変に疑われそうで怖くてね。今まであんだけ、ちゅどん、ドカンしているんだけど、今回はサブ・ドアをルーティのダンジョンに繋いでいるから、あからさまに増えそうやからね。また、ダンジョン行った時のドロップ品に、少しずつ混ぜて行くしかない。
寄贈するものとしては、あんまり高額なのは避けたい。だけど、私達では分からないからね。父の鑑定ではなぜか値段が高額なもの程降り幅がひどく、時には時価と出た。マグロやないやろうに。
リィマさん以外はサブ・ドアの向こうでドロップ品拾いに付き合ってくれてる。パーティーハウスには、私と母、花、リィマさんのみ。父はお昼に帰って来る。
「とりあえず、ざっと査定するだけでいいんだね?」
「はい。秋のグーデオークションは完全にチャリティーなので、とんでもなく高価なものは避けたいんです」
「分かったよ。まずは」
リィマさんは手近のビロードの箱を手にする。私は付箋紙を手にする。お値段書いて、張り付けようと思って。
母がお茶を出してくれる。花がリィマさんにぷりぷりしてから母の後に続く。
ぱかり、とビロードの箱を開ける。
大きなピンク色の宝石、パパラチアサファイアに、小粒ダイヤモンドがびっしりぐるり囲んでいるイヤリングとペンダントトップだ。
「………………五千万」
「はい」
付箋紙に書いて、寄贈以外のエリアに置いた。
「ただいま」
父が御用聞きの冒険者さんに伴われて帰って来た。花がお出迎えのはみはみ。
「おかえり。リィマさん。お疲れ様です。お昼にしましょう」
「分かった」
さ、ルームにはお昼を待つ面々がいるはず。
ドアを開けると、わーっ、と仔達が来る。あははん、もふもふ~。
「わんわんっ」
「がるぅっ」
「くるっ、くるっ」
『ねえね、お腹減ったー』
『るりも~、ねぇねー』
『くりちゅ。たまごたべちゃい~』
「はいはい、なんでもよかよ~」
『私は油淋鶏~』
『エビ~』
「お母さんに聞き」
『ひどいのですっ』
『びどいわっ』
「なんば言いようと? リバウンドしとるやん」
前回のルーティダンジョンツアーで、リバウンドしてしまってる。お尻ぽちゃぽちゃ。
「皆さん、お疲れ様です」
「ユイちゃんっ」
笑顔でたたた、と来るアルスさん。ファングさんとガリストさんががっちり押さえる。
「ぶーっ」
あははん、かわいか。
仔達は次にばあば、と母に群がる。
「あら、アレスは?」
「動き足りんって、ダンジョン内ば走りよう」
本当に、凄か体力やね。
「呼んで」
「分かった」
さ、お昼や。cafe&sandwich蒼空のサンドウィッチでいいかな。てきぱきタップして、と。最近仔達もよく食べるんよね。はいはい、ねえねコールが沸き上がるのでタップ。
アレスも無事に帰ってきたし、シルフィ達のお乳も済んだし。我々の分も改めてタップ。色々タップして、好きなの食べてもらおう。人数分のスープとサラダもつけて、と。
飲み物もいいし、セッティングオッケー。
「では、頂きまーす」
「「「「「頂きまーす」」」」」
私はチキンチーズサンドをぱくり。うん、パンが美味しいし、チキンとチーズが合う。スープは温かいしね。
「で、アリスの罠解除はどんな具合?」
「そうやな」
晃太はカツカレーサンドを食べている。
「やっと8割くらいやね。さっきも吹っ飛んだし」
「アリスにケガがなければよかよ」
でもこの短期間で凄かね。
食べながら話は進む。
おっといけない、おかわりね。身体が資本の冒険者の皆さん、がっつり食べるからね。特に今日は痩せの大食いアルスさんがいるからタップタップと。あ、そうや、今日夕方ホークさんに差し入れいくから、サンドウィッチ追加しよっと。
「ユイちゃんっ、これまだ食べたいっ」
と、アルスさんがローストビーフサンドと玉子サンドを示す。
「こらアルス。すまないテイマーさん」
白身魚のフライサンドを食べていたファングさんが嗜める。
「いいんですよ。たくさん食べてください。ファングさんもおかわりは?」
今日、ほぼ1日金の虎の皆さんを拘束してしまうのに、お代を受け取らないって言うんだもん。お昼付きという話をしたらお断りされてしまった。申し訳ないのでたくさん食べてもらわないと。本当ならリィマさんにはきちんと謝礼しないといけない気がするんだけど。
「受け取れないよ。私はちゃんとした資格がある訳じゃないんだから」
どうやらリィマさんは独学みたい。凄かなあ。独学でも、結構な鑑定力よ。ギルドで正式に試験を受けたら、合格出来そう。
「資格取るには、職人ギルドか商人ギルドに登録しないといけなくてね。ちょっと面倒くさいんだよ。それに今は、冒険者で食べて行けてるから、必要ないかなってね」
そう言いながら、アルスさんの口元を拭いてあげてた。
「まあ、リィマの鑑定には助けられてますよ。安く買い叩かれる事はないしな」
追加で出したローストポークサンドを食べながら、しみじみとファングさん。同調するようにフリンダさんとガリストさんも頷いた。
「あ、そうや。リィマさん弓を使いますよね?」
スープのカップを持った父が確認する。
「え? ええ、そうです」
「実は今、矢筒を開発していまして」
「開発? 矢筒の?」
「そうです」
「お父さん、ご飯の後に話ば」
技術者の顔を出した父に、母が嗜める。
食後、まったりデザート。仔達にはうららのパンケーキ。ぽちゃぽちゃの恨みがましい視線が来るけどスルー。
さくら庵のケーキセットだ。私とマデリーンさん、エマちゃん、リィマさん、フリンダさんはイチゴのショートケーキ、クリスマスバージョンと日本産紅茶。両親とガリストさんは濃厚プリンとコーヒー。チュアンさんとファングさんとテオ君はモンブランと紅茶。晃太とミゲル君は抹茶のロールケーキ。晃太はオレンジジュース、ミゲル君はコーヒー。で、アルスさんはうららのイチゴたっぷりパンケーキ。若さやね~。
で、まったりデザートタイムの後、リィマさんに矢筒の説明が始まる。
「自動補填矢筒?」
「そうです」
矢筒は少し大きい。矢筒の中は二重構造になってる。ドーナツ型とも言うべきかな。身の部分は8つに仕切りされ、それぞれ1本ずつ矢が入っている。ドーナツの穴部分は空。
「この矢をまず引き抜きます」
父が矢を1本抜く。
「で、3秒後」
ぽん。
「矢が勝手にっ」
リィマさん驚愕。矢がぽんって出てきた。興味本意でみていた金の虎の皆さんもびっくり。アルスさんだけ、うつらうつら始めたので、ソファーに横になってる。
「一枡30本で矢の補填が出来ます。全部で8枡なので240本あります」
「この矢筒の中に?」
「枡部分だけです。この今は空の中央部分は魔力を流すと」
ぽぽぽぽぽんっ。
空のドーナツの穴部分に、矢が10本出てくる。
リィマさん、開いた口が塞がらない。
「中央部分には300本入ってます」
「合計540……………」
「1本抜いたので539ですね。これは、まだ試作段階でして、実際に使ってもらって感想を」
「「「「試作?」」」」
「まだ改良したいんですけどね。これ大きいでしょう? 女性の弓士には重いかなって思ってまして。サイズ調整やそれに伴う矢の保有量とか調べたいんですよ」
最初はホークさんが背負う予定だったので、どうしても大きな作りになった。やけど父的には小柄な方もいるからサイズ調整したいみたい。
「仕組みはですね。矢筒の底が」
「ちょっと待ったっ、ミズサワさんのお父さんっ。それ喋っちゃダメなやつっ」
リィマさんが待ったをかける。所謂企業秘密ってやつね。
私は聞いたよ。この矢がぽんって出るのは、底に仕掛けがある。矢の先端が底を離れて3秒経つと新しい矢が出るような小型マジックバッグが仕込んである。つまり矢の先端がスイッチみたいなものだ。ただ、このマジックバッグはいろいろ問題があるみたい。父によると、この小型マジックバッグは人工物だ。作成時に矢を入れるとそれ以上入らず、すべての矢が出てしまった後は、勝手に壊れてしまう。つまり使い捨てマジックバッグだ。矢がすべてなくなったら、矢筒の底を取り外し、新しいのにかえる。カートリッジみたいにね。
「えっと、とりあえずは使ってみて、感想を伝えたらいい、と?」
「そうです」
「おいくらに?」
「? タダですよ。此方がモニター、感想をお願いしているんですから。特に女性はリィマさんしかいないので、ぜひお願いしたいんですが」
リィマさん、さらに開いた口が塞がらない。現在、この試作段階の自動補填矢筒は、テオ君のみ持ってる。ホークさんはレディ・ロストークの所だし。今日いくつか出来上がり、渡す予定の人達がいる。ケルンさん、エリアンさん、フェリクスさん。そして、ハジェル君にもお願いする予定。なので、女性はリィマさんだけなんよね。
「もらっていいのかね?」
こそこそとファングさんに聞いてる。
「いいんじゃないか? せっかくだしな」
「そ、そうだね。ミズサワさんのお父さん、精一杯努めさせて頂きます」
「お願いします」
こうして、自動補填矢筒のモニターが増えました。
それからしばらく鑑定作業が続き、無事に寄贈予定の品の目星が着いた。
「1日ありがとうございます。これ夕御飯にでも食べてください」
と、マルシェで買ったバスケットに、母がたくさんお惣菜を作って詰め込んでいる。後は銀の槌のホールのアップルパイだ。アルスさんが嬉しそう。
「ありがとうございます」
ファングさんも嬉しそうや。
「では明日もお願いします」
「ああ、じゃあ。失礼します」
ペコリ。金の虎の皆さんもペコリ。明日、パーティーハウスで各パーティーリーダーさんとのお話合いや。午後からシスター・アモルとの面談。明後日にはホークさんが帰って来る。
「優衣、ホークさんの差し入れ出来たよ」
見送っていた私に母が声をかけてくる。寒いので熱々のおでんと、蒼空のサンドウィッチだ。暗くなりそうや、早く持っていこう。私はチュアンさんとマデリーンさんに付き添われて牧場に向かった。
「構わないよ、これくらい」
本日、リィマさんにあるお願いの為にパーティーハウスに来てもらった。
居間のテーブルの上に所狭しと並ぶビロードの箱。今回のルーティのダンジョンで出た宝飾品だ。次回の秋のグーデオークションに寄贈しようと思って。
結構ちゅどん、ドカン、バキバキして、かなりの宝飾品を入手した。布やワインは引き取ったけど、それでも結構な数。今でも登録したサブ・ドアの向こうで、朝も早く、日が昇る前からちゅどん、ドカン、バキバキしてる。更に増えそう。マーファに帰って、タージェルさんに見てもらえばいいのだけど、あんまり多量だと、変に疑われそうで怖くてね。今まであんだけ、ちゅどん、ドカンしているんだけど、今回はサブ・ドアをルーティのダンジョンに繋いでいるから、あからさまに増えそうやからね。また、ダンジョン行った時のドロップ品に、少しずつ混ぜて行くしかない。
寄贈するものとしては、あんまり高額なのは避けたい。だけど、私達では分からないからね。父の鑑定ではなぜか値段が高額なもの程降り幅がひどく、時には時価と出た。マグロやないやろうに。
リィマさん以外はサブ・ドアの向こうでドロップ品拾いに付き合ってくれてる。パーティーハウスには、私と母、花、リィマさんのみ。父はお昼に帰って来る。
「とりあえず、ざっと査定するだけでいいんだね?」
「はい。秋のグーデオークションは完全にチャリティーなので、とんでもなく高価なものは避けたいんです」
「分かったよ。まずは」
リィマさんは手近のビロードの箱を手にする。私は付箋紙を手にする。お値段書いて、張り付けようと思って。
母がお茶を出してくれる。花がリィマさんにぷりぷりしてから母の後に続く。
ぱかり、とビロードの箱を開ける。
大きなピンク色の宝石、パパラチアサファイアに、小粒ダイヤモンドがびっしりぐるり囲んでいるイヤリングとペンダントトップだ。
「………………五千万」
「はい」
付箋紙に書いて、寄贈以外のエリアに置いた。
「ただいま」
父が御用聞きの冒険者さんに伴われて帰って来た。花がお出迎えのはみはみ。
「おかえり。リィマさん。お疲れ様です。お昼にしましょう」
「分かった」
さ、ルームにはお昼を待つ面々がいるはず。
ドアを開けると、わーっ、と仔達が来る。あははん、もふもふ~。
「わんわんっ」
「がるぅっ」
「くるっ、くるっ」
『ねえね、お腹減ったー』
『るりも~、ねぇねー』
『くりちゅ。たまごたべちゃい~』
「はいはい、なんでもよかよ~」
『私は油淋鶏~』
『エビ~』
「お母さんに聞き」
『ひどいのですっ』
『びどいわっ』
「なんば言いようと? リバウンドしとるやん」
前回のルーティダンジョンツアーで、リバウンドしてしまってる。お尻ぽちゃぽちゃ。
「皆さん、お疲れ様です」
「ユイちゃんっ」
笑顔でたたた、と来るアルスさん。ファングさんとガリストさんががっちり押さえる。
「ぶーっ」
あははん、かわいか。
仔達は次にばあば、と母に群がる。
「あら、アレスは?」
「動き足りんって、ダンジョン内ば走りよう」
本当に、凄か体力やね。
「呼んで」
「分かった」
さ、お昼や。cafe&sandwich蒼空のサンドウィッチでいいかな。てきぱきタップして、と。最近仔達もよく食べるんよね。はいはい、ねえねコールが沸き上がるのでタップ。
アレスも無事に帰ってきたし、シルフィ達のお乳も済んだし。我々の分も改めてタップ。色々タップして、好きなの食べてもらおう。人数分のスープとサラダもつけて、と。
飲み物もいいし、セッティングオッケー。
「では、頂きまーす」
「「「「「頂きまーす」」」」」
私はチキンチーズサンドをぱくり。うん、パンが美味しいし、チキンとチーズが合う。スープは温かいしね。
「で、アリスの罠解除はどんな具合?」
「そうやな」
晃太はカツカレーサンドを食べている。
「やっと8割くらいやね。さっきも吹っ飛んだし」
「アリスにケガがなければよかよ」
でもこの短期間で凄かね。
食べながら話は進む。
おっといけない、おかわりね。身体が資本の冒険者の皆さん、がっつり食べるからね。特に今日は痩せの大食いアルスさんがいるからタップタップと。あ、そうや、今日夕方ホークさんに差し入れいくから、サンドウィッチ追加しよっと。
「ユイちゃんっ、これまだ食べたいっ」
と、アルスさんがローストビーフサンドと玉子サンドを示す。
「こらアルス。すまないテイマーさん」
白身魚のフライサンドを食べていたファングさんが嗜める。
「いいんですよ。たくさん食べてください。ファングさんもおかわりは?」
今日、ほぼ1日金の虎の皆さんを拘束してしまうのに、お代を受け取らないって言うんだもん。お昼付きという話をしたらお断りされてしまった。申し訳ないのでたくさん食べてもらわないと。本当ならリィマさんにはきちんと謝礼しないといけない気がするんだけど。
「受け取れないよ。私はちゃんとした資格がある訳じゃないんだから」
どうやらリィマさんは独学みたい。凄かなあ。独学でも、結構な鑑定力よ。ギルドで正式に試験を受けたら、合格出来そう。
「資格取るには、職人ギルドか商人ギルドに登録しないといけなくてね。ちょっと面倒くさいんだよ。それに今は、冒険者で食べて行けてるから、必要ないかなってね」
そう言いながら、アルスさんの口元を拭いてあげてた。
「まあ、リィマの鑑定には助けられてますよ。安く買い叩かれる事はないしな」
追加で出したローストポークサンドを食べながら、しみじみとファングさん。同調するようにフリンダさんとガリストさんも頷いた。
「あ、そうや。リィマさん弓を使いますよね?」
スープのカップを持った父が確認する。
「え? ええ、そうです」
「実は今、矢筒を開発していまして」
「開発? 矢筒の?」
「そうです」
「お父さん、ご飯の後に話ば」
技術者の顔を出した父に、母が嗜める。
食後、まったりデザート。仔達にはうららのパンケーキ。ぽちゃぽちゃの恨みがましい視線が来るけどスルー。
さくら庵のケーキセットだ。私とマデリーンさん、エマちゃん、リィマさん、フリンダさんはイチゴのショートケーキ、クリスマスバージョンと日本産紅茶。両親とガリストさんは濃厚プリンとコーヒー。チュアンさんとファングさんとテオ君はモンブランと紅茶。晃太とミゲル君は抹茶のロールケーキ。晃太はオレンジジュース、ミゲル君はコーヒー。で、アルスさんはうららのイチゴたっぷりパンケーキ。若さやね~。
で、まったりデザートタイムの後、リィマさんに矢筒の説明が始まる。
「自動補填矢筒?」
「そうです」
矢筒は少し大きい。矢筒の中は二重構造になってる。ドーナツ型とも言うべきかな。身の部分は8つに仕切りされ、それぞれ1本ずつ矢が入っている。ドーナツの穴部分は空。
「この矢をまず引き抜きます」
父が矢を1本抜く。
「で、3秒後」
ぽん。
「矢が勝手にっ」
リィマさん驚愕。矢がぽんって出てきた。興味本意でみていた金の虎の皆さんもびっくり。アルスさんだけ、うつらうつら始めたので、ソファーに横になってる。
「一枡30本で矢の補填が出来ます。全部で8枡なので240本あります」
「この矢筒の中に?」
「枡部分だけです。この今は空の中央部分は魔力を流すと」
ぽぽぽぽぽんっ。
空のドーナツの穴部分に、矢が10本出てくる。
リィマさん、開いた口が塞がらない。
「中央部分には300本入ってます」
「合計540……………」
「1本抜いたので539ですね。これは、まだ試作段階でして、実際に使ってもらって感想を」
「「「「試作?」」」」
「まだ改良したいんですけどね。これ大きいでしょう? 女性の弓士には重いかなって思ってまして。サイズ調整やそれに伴う矢の保有量とか調べたいんですよ」
最初はホークさんが背負う予定だったので、どうしても大きな作りになった。やけど父的には小柄な方もいるからサイズ調整したいみたい。
「仕組みはですね。矢筒の底が」
「ちょっと待ったっ、ミズサワさんのお父さんっ。それ喋っちゃダメなやつっ」
リィマさんが待ったをかける。所謂企業秘密ってやつね。
私は聞いたよ。この矢がぽんって出るのは、底に仕掛けがある。矢の先端が底を離れて3秒経つと新しい矢が出るような小型マジックバッグが仕込んである。つまり矢の先端がスイッチみたいなものだ。ただ、このマジックバッグはいろいろ問題があるみたい。父によると、この小型マジックバッグは人工物だ。作成時に矢を入れるとそれ以上入らず、すべての矢が出てしまった後は、勝手に壊れてしまう。つまり使い捨てマジックバッグだ。矢がすべてなくなったら、矢筒の底を取り外し、新しいのにかえる。カートリッジみたいにね。
「えっと、とりあえずは使ってみて、感想を伝えたらいい、と?」
「そうです」
「おいくらに?」
「? タダですよ。此方がモニター、感想をお願いしているんですから。特に女性はリィマさんしかいないので、ぜひお願いしたいんですが」
リィマさん、さらに開いた口が塞がらない。現在、この試作段階の自動補填矢筒は、テオ君のみ持ってる。ホークさんはレディ・ロストークの所だし。今日いくつか出来上がり、渡す予定の人達がいる。ケルンさん、エリアンさん、フェリクスさん。そして、ハジェル君にもお願いする予定。なので、女性はリィマさんだけなんよね。
「もらっていいのかね?」
こそこそとファングさんに聞いてる。
「いいんじゃないか? せっかくだしな」
「そ、そうだね。ミズサワさんのお父さん、精一杯努めさせて頂きます」
「お願いします」
こうして、自動補填矢筒のモニターが増えました。
それからしばらく鑑定作業が続き、無事に寄贈予定の品の目星が着いた。
「1日ありがとうございます。これ夕御飯にでも食べてください」
と、マルシェで買ったバスケットに、母がたくさんお惣菜を作って詰め込んでいる。後は銀の槌のホールのアップルパイだ。アルスさんが嬉しそう。
「ありがとうございます」
ファングさんも嬉しそうや。
「では明日もお願いします」
「ああ、じゃあ。失礼します」
ペコリ。金の虎の皆さんもペコリ。明日、パーティーハウスで各パーティーリーダーさんとのお話合いや。午後からシスター・アモルとの面談。明後日にはホークさんが帰って来る。
「優衣、ホークさんの差し入れ出来たよ」
見送っていた私に母が声をかけてくる。寒いので熱々のおでんと、蒼空のサンドウィッチだ。暗くなりそうや、早く持っていこう。私はチュアンさんとマデリーンさんに付き添われて牧場に向かった。
感想 854
あなたにおすすめの小説
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
婚約破棄されたので、王都の端で小さな香水店を開きます 〜「匂いしか分からない無能令嬢」と捨てられましたが、実は人の嘘と運命を嗅ぎ分ける王国唯
鳳凰院暁月刃夜婚約破棄されたので、王都の端で小さな香水店を開きます
〜「匂いしか分からない無能令嬢」と捨てられましたが、実は人の嘘と運命を嗅ぎ分ける王国唯一の調香師でした〜
☆あらすじ☆
王太子から婚約破棄され、家族にも見捨てられた公爵令嬢リリアーナ。
妹をいじめた悪女。
匂いしか分からない無能令嬢。
王妃にふさわしくない女。
夜会場でそう笑われた彼女は、すべてを失った――はずだった。
けれどリリアーナの嗅覚は、ただ香りを嗅ぎ分けるだけのものではない。
人の嘘。
隠された悪意。
病の兆し。
呪いの残り香。
そして、運命の匂いまで嗅ぎ分ける、王国唯一の異能だった。
公爵家を出たリリアーナは、亡き祖母が残した王都の端の小さな香水店「夜明けの瓶」を開く。
最初は誰にも見向きされない店だった。
けれど、眠れない少女を救い、毒を盛られた貴婦人を助け、夫婦の嘘をほどいていくうちに、店は王都中の秘密が集まる場所になっていく。
そんな彼女の前に現れたのは、冷血公爵と恐れられる辺境公爵ヴァルト。
彼は王宮由来の呪いに蝕まれていた。
リリアーナは彼の呪いを解くため、契約婚約を結ぶことになる。
不器用すぎる公爵に守られ、時に振り回されながら、彼女は王宮に隠された大きな嘘へと近づいていく。
なぜ王太子は婚約破棄を急いだのか。
なぜ妹は姉を憎み続けるのか。
なぜ王宮には、焦げた薔薇の匂いが漂っているのか。
無能と捨てられた令嬢は、もう誰かの言いなりにはならない。
「私は、私の鼻で生きていきます」
香水店から始まる、婚約破棄令嬢の逆転恋愛ファンタジー。
ざまぁあり、契約婚約あり、冷血公爵の不器用な溺愛あり。
最後には、彼女を捨てた者たちが気づくことになる。
本当に失ってはいけなかったのは、彼女だったのだと。
王妃教育を辞退したら「困る」と国王陛下が直接迎えに来ました ~婚約破棄された私に、王太子ではなく国王陛下が求婚してきます〜
由香【全一話完結】
王太子の心変わりによって婚約を破棄された侯爵令嬢リリアーナ。
十年以上受け続けた王妃教育も辞退し、ようやく自由になれると思っていた。
ところが数日後、侯爵家を訪れたのは国王陛下本人。
「王妃教育を辞退されると困る。私の妃になってほしい」
努力を踏みにじった王太子はすべてを失い、選ばれたのは誠実に生きてきた彼女だった。
これは、年上国王に溺愛されながら、世界一幸せな王妃になるまでの逆転ラブストーリー。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
聖女って無給で無休なんですか?じゃあやらないです
こじまき異世界に聖女として召喚されたイラストレーターのチヒロ。しかし聖女には給料も休みもないことを知って「じゃあやらないです」と聖女就任を断る。
「国と人を救う崇高な仕事には、私どもからの感謝を捧げよう」
「心底いらないです」
異世界でまで、やりがい搾取されてたまるかよ。
※小説家になろうにも投稿しています
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまうリリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、悪役令嬢として断罪された少女が、「誰かの物語の脇役」ではなく、自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
妹を踏みにじった奴らに、復讐の花束を
楠ノ木雫 妹を傷つけたやつは誰だ。
隣国に嫁いだこの国の王女であり双子の妹でもあるクラリスが2年後に亡き人となって帰ってきた。死因すら伝えられず嫁ぎ先の墓にも入れてもらえずに隣国の使者が連れてきた。
この事実に信じられずにいると、クラリスが帰ってくる半年前に戻っていた。
一体隣国でクラリスの身に何があったのか。
絶対に、もうクラリスのあんな姿を見たくない。堅く決意し使節団の使者として隣国に乗りこむ事になった。
※一話で過激なシーンがあります。
【第1回新エンタメ小説大賞】にエントリー中です。
【完結済】ワザと醜い令嬢をしていた令嬢一家華麗に亡命する
satomi醜く自らに魔法をかけてケルリール王国王太子と婚約をしていた侯爵家令嬢のアメリア=キートウェル。フェルナン=ケルリール王太子から醜いという理由で婚約破棄を言い渡されました。
もう王太子は能無しですし、ケルリール王国から一家で亡命してしまう事にしちゃいます!