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友達①

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 馬車が到着する。
 ドアが開き、グレン伯爵家の使用人が手を差し出してくれるので、この場合は介助されて降りる。なので、手を借りて降りる。中年のフットマンだ。ちょっぴりてっぺんが寂しい感じね。
 降りるとまず目に入って来たのは、ふりふりの白いドレス、スカート部分にはたくさんの色とりどりのお花が飾ってある。ふわふわの髪は同じようなリボンで飾っている。手にもそんな感じのかわいいバック。見た目がいいだけ、よく似合うけどね。ただ、今回は私的なお茶会。なのであまりめかしこんで行くのはあまりよろしくない。キャサリンの格好は大がかりの上級貴族のお茶会のものだ。
 同行している専属メイドは疲れた顔していた。一度ナタリアに私の部屋の鍵を渡すように言ったメイドね。
 玄関には少しお年の男性がキャサリンの対応をしていた。多分執事の方かな。
 ちら、とこちらを確認されて、控えていた別のメイドさんに合図を送ると、メイドさんはすっと奥に。

「まあっ、あなた何をしているのっ、あんなにぐずぐず行きたくないって言ってた癖にっ。それでわざわざ私が代わりに来てあげたのよっ。しかも遅刻してきてよくも平気でいられるわねっ」

 こいつの頭、中身どうなっているんだろう?
 最近、こいつと会話なんてしていないのに。
 
「お待ちしていましたウィンティア・ローザ様。私、グレン伯爵家に支えますバルバトと申します」

 と、胸に手を当てご挨拶してきてくれたのは執事さん。キャサリン、完全無視だ。

「本日はお招きありがとうござ」

「申し訳ありませんっ。妹は移り気な性格で、朝まで格式高いグレン伯爵家のお茶会は気後れするとぐずってましたのっ。せっかくのご招待ですので、穴を開けると我がローザ伯爵家の面子が立たないからと両親から言われて跡取り娘私が代わりに参った次第ですのっ」

 私のご挨拶をぶったぎり、キャサリンがバルバトさんの前にしゃしゃり出る。
 次から次へと嘘が飛び出す。
 そしてくるっとこちらに向く。

「あなた一体どういう神経しているのっ。あれだけ、嫌だ嫌だと言ってお父様を困らせてっ。私が代わりに行くのが気にくわなかったでしょっ。なんてひねくれているんでしょうっ。気まぐれに遅刻してきて恥ずかしくなうのっ」

「そっくりそのまま返すわ」

 私は呆れを通り越し、無表情で返す。

「まあっ、なんて子なのっ。自分の事を棚に上げてっ」

「そっくりそのまま返すわ。お騒がせしまして、申し訳ありません」

 私はバルバトさんに頭を下げる。ナタリアとバトレルさんも習い、キャサリンのメイドも頭を下げる。

「まあっ、謝ればなんとかなると思っているのっ。浅はかな子供ねっ」

 この言葉、いつかそっくりそのまま返そう。
 そう決意した時、キスティ夫人が奥から出てきた。

「ようこそウィンティア嬢、時間ピッタリね」

 ニコニコと笑うキスティ夫人。
 
「本日はお招きありがとうござ」

 と、改めてご挨拶しようしたが、またもキャサリンがぶったぎって来た。

「申し訳ありませんグレン伯爵夫人っ。妹は今までこちらに伺うのを拒んでいましたのっ。それに、みすぼらしいこの子には荷も重いだろうと、両親が私に代わりに行くようにと」

 わあっ、キスティ夫人の目、こわっ。
 気が付かず、つらちら嘘を並べるキャサリン。

「さあ、ウィンティア嬢、こちらにいらして」

 キャサリンはガン無視の姿勢で、私に優しく微笑んでくれる。私は何度目かのご挨拶して、キスティ夫人の元に。

「招かれざるお嬢さん。警らを呼ばれたくなければ、お帰りなさい」

 感情の入っていない言葉に、キャサリンがきょとんとする。

「えっ? 私が来ているのに?」

 ああ、もしかしたら、これゲームのイベントの一つだったのかな? キャサリンには『七色のお姫様 ゲスな恋をあなたと』の知識が中途半端にある。キャサリンの攻略対象のイベントが、もしかしたらこのお茶会だったりして。いや、別もありゆる。だって、ウーヴァ公爵を怒らせてキャサリンはこういったお茶会等に一切呼ばれていない。華やかなものが好きなキャサリンが、それに不満で、たまたまウィンティアに来たグレン伯爵家へのご招待を横取りして、回る口先で手柄を立てようとしたのかも。それを足掛かりにお茶会に復帰したかったのかね?

「キャサリンお嬢様、帰りましょう」

 キャサリンのメイドが腕をとる。

「どうして? 私が来ているのに、なんでお茶会に行けないの? あの子が行けるのに、なんで私が?」

「帰りましょうお嬢様っ」

「きゃっ、何をするのっ、痛いわっ」

「このままでは警らを呼ばれますっ、ローザ伯爵家に泥を塗りますっ」

「それはあの子よっ。私があの子の代わりに来てあげたのにっ」

 キャサリンのメイドは、必死にキャサリンを腕を掴み、自分達が乗ってきた馬車に引き上げる。最後の最後まで騒がしキャサリンだった。
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