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事例八の末路③

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 あれから数日、やっと声が出た。

「へっくしょん」

 くしゃみした途端、声が出るようになった。
 あー、良かったー。
 生物学上の両親も見舞いに来た、母親は毎日来ている。
 声が出て、やっと安心したみたい。
 
「明日から学園行けます」

 と、セシリア女公爵に報告するが、却下された。

「何を言ってるの? あのアデレーナ・グラーフの『魅了』封印するまでに決まっているでしょう?」

「でも、試験」

「お黙りなさい」

 ぴし、といわれた。
 あの男子生徒二名だけど、『魅了』されたかどうか、微妙みたい。裁判が始まり、アデレーナは当然学園を休んでいる。そこに、足しげく通ったのがあの二人。どうやらアデレーナが今回の裁判は、私が起因していると吹き込んだ様子。それを丸まんま信じたみたい。『魅了』したと言うより、回りを見なかった幼い判断だと思われている。『魅了』されたら、『魅了』を持つ当人が『魅了封じ』されない限りほとんど解けない。二人のうち一人チョコレート学生が、己の行動を振り返り反省しているのが大きい。『魅了』されていると反省しないからね。で、ランチ学生は私に対して辛辣。傷女だと言っていたように、傷のある私は存在価値なしと豪語しているって。それなのに、姿形が完璧なアデレーナを困らせているのなら当然排除すべきだと言ってるって。
 これはあれだ、モニカ妃殿下の影響だと思われている。ランチ学生のおうちは、どっぷり側室派だし昔気質の質の悪い貴族みたい。爵位のない一般人や私みたいに傷をある女性は、どうしようが自分達貴族が勝手みたい なね。
 今はこの二人の処罰を学園、ローザ伯爵、そしてウーヴァ公爵家で話している。
 アデレーナが私を嫌うには、単に、私が気にくわないのだろう。おそらくアデレーナはソードさんを狙っていたのかも知れない。ソードさんはアデレーナに冷や水対応なのに、ダンスの授業では必ず私を真っ先に誘ってくれる。それからアンジーでの事もある。あそこで、ナタリアが私専属だと理解したんだろうな。

 で、アデレーナに関してはまだハッキリしないので、保留状態。
 なんだか、釈然としない。
 もし、アデレーナが『魅了』を上手い具合に使っているのなら、ものすごく厄介だから、慎重になってる。
 今回の裁判で、アデレーナが社会的に抹消されるようになれば、必ず誰かを味方にするために『魅了』を使うはず。

「それまで窮屈だろうけど、休学なさい。いまだに侍女の申請が通らないのよ」

 セシリア女公爵はため息。
 本来、学園で侍女を付けられるのは、侯爵以上らしいので、通らないそうだ。私、結構散々な目にあってるんですが。

「担当のマクガレル先生と話して、課題が来ます。それをきちんとこなせば落第しないでしょう」

 不吉なワードがっ。
 これは病気療養している生徒に対しての対応だ。
 うーん、アンネ達に心配させてしまう。スティーシュルラ様にもだ。
 でも、また、騒ぎになれば、迷惑かけるし、仕方ないのかなあ。裁判が悪い方向に転がるのだけは嫌だなあ。
 あ、皆に手紙を書こう。それぐらいはいいよね。
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