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待つ間⑦
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「それは私が神官長になり廃止した」
「ふん。それまで平然と行われていた事実は認めるんだな。先見の能力者への虐待、女性能力者への強制妊娠」
かつて教会で秘密裏に行われていた闇の事。
先見の能力者を増やしたかった教会は、能力者達に薬物を使いながら妊娠させた。当然女性は多産で、男性は数多くの女性をけしかけるために薬物を多量に投与。生まれた子供に、なんらかの素質、先見の能力、もしくは神官の能力がない場合は、放逐されるか、最悪生まれたことを抹消される。そして、望んだ予知が出ないからと、予知の能力者を暴行を繰り返した。
結果。
パチン。
セシリアがもうたくさんと、扇を鳴らす。
「どちらにしてもウィンティア嬢は教会には渡しません。アサーヴ殿下、テヘロンにもです」
肩をすくめるアサーヴ。
「ウィンティア嬢とレオナルドの関係を誤解なさっているようなら訂正します。あの子はレオナルドの婚約者です。手放すつもりはありませんわ」
「あの子の安全を保証する。あれは希少な存在だ。そのレオナルドとやらの面会の許可を」
「もうやめよ、神官長殿」
不毛になりそうな話を止めたのはオーガストだ。
「思い出さないのか? 己の姉の末路を?」
その言葉に、高位神官は顔がひきつる。
「ウィンティア嬢はまだ十三ぞ。最近まで自力で起き上がれない程の病状であったのだぞ。しかも自身の悲惨な未来を見て、あの幼い少女がどれだけ思い悩んだか分からないのか? こんな大人達に囲まれて、その記憶をえぐり出されても、彼女の気遣いは別に名を上げるもの達だ。出来た娘だ。それをいくらそなたが改善したとはいえ教会に飼い殺しにはさせられん。必要があれば、教会が彼女の元に通うのだな」
そして、オーガストはアサーヴの方に視線を向ける。
「テヘロンとして、ウィンティア嬢を引き入れたいのでしょうが、どうぞお諦めください。彼女はレオナルド・キーファーの婚約者でございます」
「オーガスト王太子殿下のお言葉であるなら『私』は受け入れましょう」
「………………テヘロンで、他に誰が彼女を欲しがると?」
アサーヴは含ませるように笑う。
テヘロンでの予知を含めた能力者や高位神官は、扱いは高位貴族並みで、重宝される。
アサーヴとスティーシュルラの母親は、第一側室だが、もともと高位神官。華やかであり賢いこともあり、周囲の称賛を得ながら側室に入った。
「ティア嬢は、テヘロン大使館では大人気ですからね」
アサーヴの言葉にセシリアはぎらりと、目を光らせる。
「アサーヴ殿下、ウィンティア嬢を愛称で呼ぶのはお止めください。我々どころか、レオナルドも彼女の友人ですらその様に呼びませんわ」
ルルディでは名前を愛称で呼ぶのは家族、もしくは婚約者。よほど親しい友人にしか許されない。
肩をすくめるアサーヴ。
「それは失礼しました。彼女が、我が妹と親しく愛称で呼びあっていたので、つい。次よりは気を付けましょう」
半分納得、半分疑惑の眼差しでセシリアはソファーに座り直す。
「では、これからの動きの話をしましょう。最悪の事態に備えなくては。アーデルハイト様」
「はい、ウーヴァ公爵閣下、来月カルメンに渡り陛下に謁見します」
「ふん。それまで平然と行われていた事実は認めるんだな。先見の能力者への虐待、女性能力者への強制妊娠」
かつて教会で秘密裏に行われていた闇の事。
先見の能力者を増やしたかった教会は、能力者達に薬物を使いながら妊娠させた。当然女性は多産で、男性は数多くの女性をけしかけるために薬物を多量に投与。生まれた子供に、なんらかの素質、先見の能力、もしくは神官の能力がない場合は、放逐されるか、最悪生まれたことを抹消される。そして、望んだ予知が出ないからと、予知の能力者を暴行を繰り返した。
結果。
パチン。
セシリアがもうたくさんと、扇を鳴らす。
「どちらにしてもウィンティア嬢は教会には渡しません。アサーヴ殿下、テヘロンにもです」
肩をすくめるアサーヴ。
「ウィンティア嬢とレオナルドの関係を誤解なさっているようなら訂正します。あの子はレオナルドの婚約者です。手放すつもりはありませんわ」
「あの子の安全を保証する。あれは希少な存在だ。そのレオナルドとやらの面会の許可を」
「もうやめよ、神官長殿」
不毛になりそうな話を止めたのはオーガストだ。
「思い出さないのか? 己の姉の末路を?」
その言葉に、高位神官は顔がひきつる。
「ウィンティア嬢はまだ十三ぞ。最近まで自力で起き上がれない程の病状であったのだぞ。しかも自身の悲惨な未来を見て、あの幼い少女がどれだけ思い悩んだか分からないのか? こんな大人達に囲まれて、その記憶をえぐり出されても、彼女の気遣いは別に名を上げるもの達だ。出来た娘だ。それをいくらそなたが改善したとはいえ教会に飼い殺しにはさせられん。必要があれば、教会が彼女の元に通うのだな」
そして、オーガストはアサーヴの方に視線を向ける。
「テヘロンとして、ウィンティア嬢を引き入れたいのでしょうが、どうぞお諦めください。彼女はレオナルド・キーファーの婚約者でございます」
「オーガスト王太子殿下のお言葉であるなら『私』は受け入れましょう」
「………………テヘロンで、他に誰が彼女を欲しがると?」
アサーヴは含ませるように笑う。
テヘロンでの予知を含めた能力者や高位神官は、扱いは高位貴族並みで、重宝される。
アサーヴとスティーシュルラの母親は、第一側室だが、もともと高位神官。華やかであり賢いこともあり、周囲の称賛を得ながら側室に入った。
「ティア嬢は、テヘロン大使館では大人気ですからね」
アサーヴの言葉にセシリアはぎらりと、目を光らせる。
「アサーヴ殿下、ウィンティア嬢を愛称で呼ぶのはお止めください。我々どころか、レオナルドも彼女の友人ですらその様に呼びませんわ」
ルルディでは名前を愛称で呼ぶのは家族、もしくは婚約者。よほど親しい友人にしか許されない。
肩をすくめるアサーヴ。
「それは失礼しました。彼女が、我が妹と親しく愛称で呼びあっていたので、つい。次よりは気を付けましょう」
半分納得、半分疑惑の眼差しでセシリアはソファーに座り直す。
「では、これからの動きの話をしましょう。最悪の事態に備えなくては。アーデルハイト様」
「はい、ウーヴァ公爵閣下、来月カルメンに渡り陛下に謁見します」
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