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25 悪女の夜1
しおりを挟むバンッ! と足で扉を蹴り開けたエイデンさまに抱きかかえられて、なだれ込む様に寝室へと移動した。
合わせた唇は離れることなく、互いの唾液と熱い息にまみれてドロドロだ。
そのままベッドへ倒れ込み、背中に少しだけひんやりしたシーツの感触を感じてやっと目を開ける。見上げたそこには、息を荒くしながら隊服の詰襟を緩めるエイデンさまが、私を見下ろしていた。
そんな彼を見上げながら自分で背中に手を回し、ドレスの釦を外す。ジャケットを脱いだ彼は、私の靴を脱がせ、ドレスを脱がせるのも手伝ってくれる。
繊細で小さなボタンを丁寧に、けれど素早く外した彼は、そっと足元から引き抜く。
アンダードレスだけになった私の、スカートのスリットから彼の熱い掌が侵入し、太腿を撫でた。
「――っ」
ぞくりと背中が痺れて、それだけで声が上がりそうになる。
彼はガーターベルトも器用に外して、ストッキングを丁寧に脱がせた。爪先から抜き取られ、肌が直接シーツに触れて気持ちいい。同じようにもう片方も脱がせた彼は、自分のシャツのボタンを外した。
「アレックス、とてもきれいだ」
大きな掌がアンダードレスの上から身体の線をなぞるように撫でる。
「コルセットはしていないのか?」
「ええ、このドレスではしないほうが美しく着られるから」
「――不用心だ。他の男の目に留まったらどうする」
「大丈夫よ。あなたにしか見せないもの」
ふふっと笑って見せれば、彼は目を細めて、ぐっと喉を鳴らした。
「あなたは俺を惑わす天才だ」
「それは褒めているの?」
「もちろんだ」
「ん……っ」
大きな掌がスリットから中へ侵入し、羽根でくすぐるように肌を撫でた。声が上がりそうになって唇を噛む私に、彼は顔を近付けてぺろりと口を舐める。
「あなたの声が聞きたい。我慢しないでくれ」
「おかしな声かもしれないわ」
「それはない」
スカートの中へ侵入した掌は、そのまま上へと上がりお尻を撫で、腰を這いまわる。ぞくぞくと背中が痺れて腰を逸らせる私に、彼はいくつも口付けを降らせた。
キャミソールの肩ひもを、するりと下ろす。腰まで下げられたドレスを脱がせるのを手伝うように腰を浮かせれば、彼は素早く私の足元からアンダードレスを引き抜いた。
「アレックス……」
私に覆い被さった彼は、脚の間に身体を割り込ませて上から見下ろした。そしてまた、深く口付けを繰り返す。
「ん、んんっ」
口付けを繰り返しながら、掌は忙しなく動き続けて私の身体を弄った。露わになった胸を持ち上げるように捏ねて、指を沈める。ふわふわと優しく揉みしだいていたかと思うと、指先が突然胸の先端を弾く。
「あっ!」
彼のごつごつした指が先端をくるくると捏ね、ギュッと押し込む。そのたびに高い声が上がり、恥ずかしさに顔が熱くなった。
「ああ……、感度がいいな、アレックス。あなたの気持ちのいいところを、俺に教えてくれ」
彼は唇から顎、そして喉元に吸い付き舌で舐め上げた。
熱い舌の刺激が気持ちいい。
舌先を尖らせて、首筋から鎖骨へ下り、そして胸の谷間へとゆっくり舌を這わせる。
「あなたの肌は甘くて、まるで媚薬だ」
舌先を伸ばしたまま私の顔を見上げた彼と目が合った。
まるで獲物を狙うようなギラギラした彼の視線に、ぞくぞくと腰が痺れてお腹の中心が切なくなる。
(今、彼に求められているんだわ)
私を愛していると言ってくれた彼。けれど、それに応えることはできない。
私が本当に、叔母さまと同じ立場で地位があれば違ったかもしれない。次期公爵夫人に相応しいと、認められたかもしれない。
(ごめんなさい、エイデンさま)
でも残念だけれど、私は田舎の男爵領の娘。
失恋して傷ついて、王都に逃げてきただけの女なのだ。
(また、恋してしまった……)
馬鹿なアレックス。
どうして叶わない恋にわざわざ落ちるのかしら。
「――ふふ」
無意識に漏れた笑い声に、エイデンさまが顔を上げた。
「どうした?」
「なんだか、おかしくて」
「おかしい? 俺が何か……」
「違うの」
不安そうな表情で私を覗き込む彼の頬に手を添える。この人も自分に自信がなくて不安だった。私たちは似た者同士だ。
「――私も、あなたが好きよ、エイデンさま」
「!」
彼の頬が掌の中で熱くなった。
見上げる彼の瞳が、熱で魘されたように潤んでいる。
「初めて会ったときから、あなたが好きだったんだわ、きっと」
もっと早く恋心に気が付いていたら、きっとこんなに苦しい思いをせずに離れられたかもしれないのに。
(――いいえ、それは嘘ね。きっと、離れられなかったわ)
「アレックス……!」
深い口付けを受けて、彼の昂りを腹部に押し付けられ、ぎゅうっと身体の中心が痙攣する。
「んっ、エイデンさま、もっと触って」
「ああ、当たり前だ……!」
胸を持ち上げ捏ねていた手が止まり、エイデンさまの熱い口内に胸の先端が含まれた。
突然与えられた強い刺激に背中を逸らせ、甲高い声が上がる。
舌先がぬるりと先端を舐め、激しく弾く。唇で扱きながら、ちゅうっと強く吸い上げられて、お腹の中がキュンキュンと疼いた。
ずっと下腹部には彼の熱の塊が押し付けられ、時折ゆるゆると腰が動いた。
胸に吸い付く彼の頭を抱えながら、片方の手を伸ばして昂ぶりに触れた。
「アレックス、ダメだ」
「どうして?」
慌ててエイデンさまが顔を上げて手首を掴んだ。
「今そんなことをされては、持たない」
彼は顔を赤くして唸るようにそんなことを言う。かわいい。
「では、一度楽になって?」
(恋愛小説にあったわ、一度男性が射精をしたらその後は余裕が出るって……!)
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(気持ちよくなってくれるなら……)
手のひらに収まらないほどの昂ぶりを、強く擦る。ゆるり、と彼の腰が動いた。このままトラウザーズの上から触れるのもなんだか違う気がして、ベルトに手を掛けて前を寛げ、手を中へ入れた。
「――っ」
エイデンさまの荒い呼吸が耳元を掠める。私の身体を弄っていた彼の動きが完全に止まり、掌の中の昂ぶりがますます熱く、硬くなっていく。
男性のこれって、こんなに大きいのだろうか。それとも彼は特別大きいの?
先端からぬるりと何かが垂れた。これはあれだ、本に書いてあった先走りっていうやつ。先走りって何?
溢れてきた液体を掌に纏わせてぬるぬると彼の昂ぶりを擦り、ぐっと握って扱く。耳元でどんどん荒くなっていく彼の呼吸に、私の息も煽られるように荒くなる。
傘のような部分を指でぎゅっと引っ掻くように擦ると、彼の身体がびくりと大きく揺れた。先端から溢れてくるぬめりをもっと指に纏わせようと、先端の窪みをぐりっと押し込めば、彼の口から悩ましい声が漏れた。
その声に、ぞくぞくと背中が痺れる。もっと、彼を感じさせたいという欲求がむくむくと湧いてくる。
「アレックス、もっと強く……握れるか」
「――こう?」
(痛くないのかしら)
言われるままにぎゅっと力を入れて握り、さらに早く彼の昂ぶりを扱くと、無意識なのか腰が揺れた。
「――エイデンさま、気持ちいい?」
「ああ……っ、はぁ、すまない、もう出る……っ」
彼は二度、三度と大きく腰を揺らし、背中を大きく揺らした。
掌の中で昂ぶりがドクンと脈打ち、別な生き物のように跳ねて温かい飛沫を放つ。掌と腹部に放たれた白い熱は、想像していたよりもどろりとしている。
私の肩に顔を埋め、荒く呼吸をしていたエイデンさまが弾けるように身体を起こした。
「すまん、待ってくれ」
慌ててベッドから降りた彼は、近くにあった布を手に取って私の腹部と手を拭った。なんとなく気まずいような表情に見えて、どうだったのか気になる。
(やっぱり下手だったかしら)
当然だ、本で読んだだけで初めてなのだから。
「エイデンさま、あの」
「次は俺の番だ」
「え」
布をポイっと後ろに放った彼は、ギシッとベッドを軋ませて私の上に覆い被さった。
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