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しおりを挟む「――エリカ? 寝ていたか?」
ベルンハルトの声に、意識が戻った。
ゆっくりと上着を取られて明るく開けた視界には、見慣れた室内とベルンハルトの顔がある。ソファに腰掛ける彼の膝の上で目を覚ました私に、彼はふっとほほ笑んだ。
「家に着いたから、もう安心するといい」
そう言って優しく髪を梳く彼の手つきに、緊張していた身体のこわばりがほどけていく。
「――私、寝ていたみたい」
「最近忙しかったからな。今日はこのままゆっくり休もう」
言いながら、ベルンハルトは私をぎゅうっと抱きしめる。
「ベルンハルト?」
「――間に合ってよかった」
その言葉に、ギュッと胸が締め付けられて、彼の背中に手を回した。
「来てくれて、ありがとう」
「ああ。――あんな人間がいるなんて、近衛の質も下がったものだ」
思い出したのか、彼からまた怒りが吹き出すのを感じた。
「私、あなたがあんなに怒っているのを初めて見たわ」
「あれでは足りないくらいだ。だが、あれ以上は君の前ではできない」
彼の口調に気が付いて、そっと身体を離す。見上げた彼はまだ眼鏡をかけていて、髪も乱れていない、ヴィルツ補佐官のままだ。
「――もう家なのに、そのままなの?」
私の問いに、彼は眼鏡をクイッと押し上げて目を逸らした。
「こうしていないと自制が利かない」
「自制?」
「――ゆっくり休みたいだろう」
その言葉に、思わずふふっと笑ってしまった。
「私を膝の上に乗せているのに」
クスクス笑う私の言葉に、彼は困ったように眉を下げた。
「それは、そうだが……」
「ねぇ、ベルンハルト。私、あなたの髪を洗いたいわ」
「髪を?」
「そう。――せっかく早く帰ってきたから、あなたとゆっくりしたい。それともあなたは職場へ戻るの?」
言いながら彼の眼鏡をゆっくり外すと、彼は自分で前髪を崩して下ろした。少し癖のある黒髪の隙間から、青い瞳が優しく細められる。
「まさか。――あなたを置いて戻ったりはしないよ、エリカ」
そう言って、彼は優しく唇を合わせた。
*
「はぁ、いい気持ちだ……」
ベルンハルトの様子に、なんだか嬉しくなる。
湯船に浸かり、浴槽の縁に頭を載せて天井を仰ぎ見る彼は、本当に気持ちよさそうだ。
「どんどん色が落ちて来たわ。すごいのね」
「特別に用意してもらっているんだ。普通の石鹸では落ちないからね」
「すごい友人がいるのねぇ」
なんでも学園時代の友人が、彼用に染粉と洗髪剤を開発してくれたらしい。
「さぁ、落ちたわ」
金色と青の髪を、まだ明るいこの時間に見るのは久しぶりだ。たしかに派手だし、このせいでいろいろ苦労したようではあるけれど、きれいだなと思う。
タオルで軽く押さえている間も、彼は目を閉じて気持ちよさそうにしている。
(なんだか、洗われている犬みたいでかわいいわね)
その無防備な姿に、つい、ちゅっと唇にくちづけを落とした。
「!」
ベルンハルトが驚きに目を見開いて私を見た。
「ごめんなさい、つい……、きゃあっ!?」
シャツ姿で髪を洗っていた私を抱き寄せた彼は、そのまま浴槽に引きずり込んだ。
ドボン! と大きな音を立てて湯が大量に外へ溢れる。
驚く私を自分の膝の上に載せたベルンハルトは、あはは! と、笑い声を上げた。
「もう! ベルンハルトったら!」
「かわいいことをするあなたが悪い」
彼は笑いながら、私の濡れたシャツのボタンを外していく。
「シャツがびしょびしょだわ」
「濡れたシャツが透けていてやらしいね」
「ばか!」
そんなことを言われて、顔が熱くなる。彼は笑いながら、いくつもくちづけを落として肌着まで取り払った。
繰り返されるくちづけが、だんだん深くなっていく。
彼の膝の上に跨って首に腕を回す私の背中を、長い指がつうっとなぞる。その刺激に小さく身体を震わせれば、さらに身体を密着するように抱きしめられた。
触れ合う素肌が気持ちいい。
ぬるぬると舌先を絡めて激しくくちづけをしているうちに、脚の間にゴリっと硬いものが当たった。
その上で、自分の脚の間を擦り付けるように腰を動かせば、ベルンハルトが小さく唸り声を上げた。
「はぁ……っ、エリカ」
「なあに?」
ぷっと音を立てて唇を離す。けれど、お互いの熱い呼気が混じり合う距離で、複雑に虹彩を光らせる彼の瞳を覗き込んだ。
「大丈夫?」
彼の気遣うような声音に首を傾げる。
「なにが?」
「――あの騎士のことで、そんな気分にはならないんじゃないかって」
そう言われて、彼がなにを自制しているのかやっと分かった。
心配そうに私の瞳を覗く彼に、愛しさがこみ上げて、ちゅっとひとつ、くちづけを贈る。
「あなたとあの騎士は、まったく違うわ」
「そうだけど」
「今日の一件で、たとえ一時的でもあなたとの触れ合いがイヤになんてならないわ。むしろ、もっとあなたに触れてほしいと思ってる」
「アイツに触られた?」
ベルンハルトの声が低くなった。
その様子に、ふっと笑って頬を両手で包み込むと、彼は目を閉じて頬を摺り寄せる。
「いいえ。あなたが来てくれたから大丈夫よ。でも……」
親指で彼の唇をそっと撫でると、閉じていた目を開けて、強い輝きを放った瞳が私を射抜いた。
「――上書きして? あんなことなんて忘れるくらい、あなたが私のことを気持ちよくして」
そう囁けば、彼は大きく口を開けて、私を飲み込むように唇を食んだ。
*
「――っ、あっ、ああっ! あんっ、ベルンハルト……っ!」
散々浴槽で身体を突き上げられて、湯がぬるくなったからと彼は私を担いだまま寝室へ移動した。
まだ明るい日が差し込む寝室のベッドで、背後から身体を貫かれて喘ぐ。
「エリカ……っ、ここ、気持ちいい、ね……っ!」
ゴツン! と奥を穿たれて、息が止まる。彼の怒張がゴリゴリと私の中を擦って何度も往復する。
手首を掴まれて身動きが取れない私は、されるがままにだらしなく口を開けてずっと嬌声を上げている。
「あっ、あっ! ヤ……っ、待ってダメ……っ!」
「いいよイッて、エリカ……!」
チカチカと目の前に星が飛んで、ぎゅうっとお腹が痙攣する。中にいる彼をきつく締め付けて、また視界が白く飛んだ。
びくびくと震える身体から昂ぶりをずるりと抜いた彼は、私をひっくり返して仰向けにした。まだ身体がひくひくと痙攣していて、つま先まで甘い痺れが走っていて辛い。
「――ま、まって……っ、まだ……!」
「大丈夫、そのまま感じてて」
抵抗しようとのろのろ首を振る私に、彼はちゅっとくちづけを落とした。そうして、一気に身体を貫く。
「~~っ!!」
身体をのけ反らせる私の脚を押さえつけながら、彼はギリッと歯を食いしばった。
「~~っ、入れただけでイッた? 気持ちいいね……っ!」
「あぁっ!」
ガツガツと奥を何度も奥を抉られて、脚の間が信じられないほど濡れている。
ずっとつま先まで痺れていて、身体に力が入らない。
「エリカ、ずっとイッてる? 中がうねって……っ、絡みついてすごい……っ」
動きを止めたベルンハルトが、ふーっと息を吐きだして天井を仰いだ。
しっとりと汗ばむ肌、上下する胸筋を見上げて、ぞくりと身体の奥が震える。私の中に埋まったままの彼を無意識に締め付ければ、ピクリと身体を揺らした彼がこちらを見下ろした。
「よさそうだね、エリカ」
「んあ、あ、待ってダメ……」
「ダメじゃないよ、ホラ、もっと感じて」
「あっ、そこ……っ」
「ここ? ざらざらして気持ちいいね」
昂ぶりの傘の部分が、ゴリゴリと私のいいところを擦る。
その気持ちよさに、私の中が大きくうねって彼を締め付けた。吸い付いて、絡みつき、離さない。
「ああっ、いい! あんっ、すごい……っ、イイ……!」
「はぁ……、すごい、あなたの中は気持ちいいね……っ」
覆いかぶさって首筋をぬるりと舐めあげられるだけで、高ぶって敏感になった身体がビクビクと震える。その度に、身体の中を埋め尽くす彼の昂ぶりを締め付けた。
「ベルンハルト……っ、もっと、まだ……っ!」
手を伸ばしてくちづけをせがめば、すぐに分厚い舌が口内を満たす。
舌先を絡め合って吸い付いて、このまま食べられてしまいたいほど気持ちいい。
「エリカ……、好きだよ、愛してる……!」
大きな手が私の手に重なり、指を絡めてぎゅっと握る。それだけで、心と身体が満たされていく。
彼のことが好きで、愛おしくて仕方ない。
「わ、私も……っ!」
私も、愛してる。
その気持ちを伝えられたか分からない。
激しく腰を振りながら、うわ言のように私の名前を何度も呼ぶ彼に翻弄される。
私はただ、ずっと喘ぎ続けた。
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