【完結】計画的に出奔したら銀色の美しい従者が追ってきたお話

かほなみり

文字の大きさ
10 / 14

10.刻んで

しおりを挟む

 真っ赤になって叫ぶリリーシュを、ユージーンが突然抱きかかえた。
 ずんずんと奥の部屋へ向かい二階へ上がる。日当たりのいいそこには既に家具がいくつか揃えられている。
 台所を抜け奥の部屋の扉を開けると大きなベッドがひとつ置かれており、ユージーンは優しくリリーシュを降ろした。

「リリーシュ」

 ベッドに横たえたリリーシュの赤い髪が白いシーツに広がる。新緑の瞳を潤ませ己を見上げてくる愛しい女の姿に、ユージーンの心は打ち震えた。

「リリーシュ、好きです。俺は貴女がずっと好きだった」

 雨のあの日、見せしめのように道端で鞭打たれ、空腹で動くことが出来ず蹲っている自分を助けるために飛び出してきた、赤い髪の幼い女の子。
 邪魔をされ腹を立てた奴隷商がリリーシュにも鞭を振るい怪我を負ったのに、それでも泣くこともなく強く睨みつけていた幼い女の子。
 雨に濡れ泥だらけになろうと、怪我を負おうと、身を挺して自分を助けてくれたその姿は、強く高潔で美しかった。
 まだ幼い女の子に、ユージーンはあの日、心奪われたのだ。

「私……私も好きよ、ユージーン」
「リリーシュ」

 ポロリとリリーシュの瞳から零れた涙を追って、ユージーンが眦に口付けを落とした。
 ちゅ、ちゅっといくつも口付けを顔中に降らせ、やがて柔らかな唇に辿り着く。
 初めて重ねる愛しい女の唇は柔らかで甘く、唇で食むだけで溶けてしまいそうなほど熱い。柔らかく唇を合わせ、リリーシュも必死にユージーンの真似をするようにその唇を食んだ。
 ぺろりとその唇を舐め、リリーシュの唇を割って舌を差し込む。びくりと身体を固くするリリーシュに、ユージーンは口端を上げる。

(あの男とは何もなかったか)

 リリーシュの婚約者だという男は、確かにリリーシュを大切に思っていた。それは間違いないだろう。だからこそリリーシュからあの男の相談を受けた時、落ち込むリリーシュの様子に心が張り裂けそうだったのだ。
 何があっても自分は絶対にリリーシュを泣かせない、辛い思いなどさせないと、どれほど言いたかったか。
 しかしそれが、まさか自分の事で落ち込んでいたのだとは。
 ユージーンは心の内で歓喜に震えた。

 舌でリリーシュの口内を弄り、奥に引っ込んでいる小さな舌を絡め取る。舌先が触れると痺れるような感覚がリリーシュを襲った。

「ん、んぁっ、ぁ」

 唇から漏れるリリーシュの小さな声までも飲み込む様に、ユージーンはリリーシュを貪った。唇から舌先、小さな歯のひとつひとつまで確かめるように舌を這わせる。
 リリーシュの息が上がりくったりと身体の力が抜けたころ、やっと唇が離れユージーンはリリーシュの真っ赤になったその唇と口端からあふれた唾液を指で拭った。

「リリーシュ、少しだけ我慢してくれますか」
「……え、あ」

 ぼんやりするリリーシュをユージーンはくるりとひっくり返し俯せにした。そして短くなった髪をかき上げ、リリーシュの項に口付けを落とす。リリーシュの身体がびくりと跳ねた。

「ここに……俺を刻んでもいいですか?」

 そう言って、リリーシュの項を指でそっとなぞる。熱い指先がそこに触れただけで、びりびりとリリーシュの身体が震えた。

 正直、そんな事を言われても良く分からない。今はただ、早くこの身体の奥からユージーンを欲する衝動を何とかしてほしい。
 リリーシュは振り返り、そっと小さく首を縦に振った。上気した頬で小さく頷いたリリーシュを見て、ユージーンは顔を綻ばせた。
 初めて見るユージーンの笑顔にリリーシュは目を見開いた。間近で見ようと身体を起こしたが、ユージーンがすぐにリリーシュに覆い被さりその項に唇を這わせた。

「あっ」

 ユージーンの熱い唇が首筋を這い、熱い舌先がねっとりと舐め上げる。ただそれだけなのに、リリーシュの身体の奥が熱く疼く。何度も首筋を熱い舌が往復し、時々強く吸い上げ、そしてキツく、項に歯を立てた。

「……っ! ぁっ、いっ……!」

 痛みに背中を仰け反らせるとユージーンの大きな手が背後から差し込まれ、リリーシュの柔らかな双丘を弄った。急に受けた刺激に、リリーシュは声を上げ身を捩るがユージーンの身体の下ではどうにもできない。
 痛みと快感で頭が正常に働かないリリーシュは、シーツをきつく握りしめ、痛みの向こうにあるどうしようもない愛しさに胸を焦がした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

私に番なんて必要ありません!~番嫌いと番命の長い夜

豆丸
恋愛
 番嫌いの竜人アザレナと番命の狼獣人のルーク。二人のある夏の長い一夜のお話。設定はゆるふわです。他サイト夏の夜2022参加作品。

捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~

水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。 彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。 失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった! しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!? 絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。 一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

番ではなくなった私たち

拝詩ルルー
恋愛
アンは薬屋の一人娘だ。ハスキー犬の獣人のラルフとは幼馴染で、彼がアンのことを番だと言って猛烈なアプローチをした結果、二人は晴れて恋人同士になった。 ラルフは恵まれた体躯と素晴らしい剣の腕前から、勇者パーティーにスカウトされ、魔王討伐の旅について行くことに。 ──それから二年後。魔王は倒されたが、番の絆を失ってしまったラルフが街に戻って来た。 アンとラルフの恋の行方は……? ※全5話の短編です。

運命の番がユニコーンだった場合…

たんぽぽ
ファンタジー
短命種が自分の番ーツガイーと出会う確率は限りなく低い。 長命種であっても、人生の大半を費やす覚悟が必要なほど。 出会えたなら、それはもう運命である。 そんな運命の人と遭遇したリノは訳ありの10歳。リノは短命な種族の生まれではあるが、それでもまだ未成年とされる年齢だった。 幸か不幸か未成熟なリノ。それゆえ男は出会った少女が自分の番だとは気づかなかった。知らずに愛でたのは、男がその性癖ゆえに絶滅の道しかないと言われる残念種族のユニコーンだったから…

処理中です...