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夫婦神獣。

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湖から流れる川の橋を渡る。
湖はUS-2が着水と離水するには充分過ぎる大きさだった。


Uちゃんの事は馬車の同行者にはまだ秘密にしている。
それよりもここまで何とか足を挫かずに来れて良かった。
挫くと迷惑が掛かるので少し気を張っていたからね。
本当に情けない足だけど、Uちゃん召喚と言語を覚えるのに役だったのは嬉しい。
ただこのスキルは痛い。

川縁ではご老人方が釣りを楽しんで、子供達が走り回っている。
この川は先程聞いたのだが、ヒマジン川って名らしい。
イムジンじゃ無いんだね。
川幅はそんなに無い小さな清い川だ。


町の柵の手前で門兵が検査をしているので、馬車から下りて魚籠の中身を見させて貰った。
ウグイとアカムツみたいなのと、ウナギみたいなのそれに鮒みたいなの。
そんな処だ。
餌は麦団子。
多分ウナギは川エビか何かで釣ったと思う。
二・三日綺麗な真水で泥抜きしてさばくのかな。
ウグイと鮒はあれだけど、ウナギかあ~。

町に入れる順番が来たみたいなので馬車に戻った。
何かのどかな町みたい。
周りは麦畑の様だ。
つまりここで麦を買って帰る訳だね。
交換で綿花を卸すらしい。
物々交換では無くて、一度貨幣に変える。


養鶏場や牛のいる牧場も見える。
玉子や牛肉後はミルクも買いたいな。
お金無いけど。
『主様、わたくしめの冷蔵庫に保管すれば、召喚時以外は時間が進行しませんよ。物品だけでも召喚出来る事は、機内食でも実証済みですよ~お』
「語尾伸ばしてアピール度強いね」
『だって主様のお役に立ちたくて。それに何で宿に泊まってるんですか、町の外で私目の機内ベッドでお休み下さい』
「それはギルドの仕事の時にするよ。昼間は町に居ないと不便だからね」


何かの時にせめて10万円相当は残して置きたいので、5万円以下相当で牛乳や玉子そして牛肉を買った。
まあ3万円相当以下だったけど、それでもかなりの量が買えた。
日本の食品物価は倍ぐらいに成ってたから、この世界の物価が凄く安くて助かった。


細々した商取引をして3台の馬車隊は来た道を引き返す。
冒険者ギルドにはステッペンウルフの事は報告済みで、調査すると返事を貰ったそうだ。


だが・・・。
ああこれが原因だった様で。
「え~と白い狼かな」
「ふぇ、ふぇ・・・」
「ふぇっくしょいっ」
「「・・・?」」
『大物だのう』
「あっ犬が喋った」
『いっ犬では無いわアホ』
「じゃ狼?」
『フェンリルを知らんのか』
「フェンリルって国を幾つも滅ばした馬鹿犬の事」
『ばっ馬鹿犬だと』
「「「「「あわわわ」」」」」
『馬でも鹿でも犬でも無いわ!』
「じゃあ馬鹿狼」
『おっおっおのれえ~』
ズドーン!!。
フェンリルが前足をちょっと踏み込んだだけで辺りがかなり揺れた。
「「「「「ひぇ~ぇ」」」」」
「あいたっ、何すんだよ。足挫いたじゃないか」
『フンッ、我を馬鹿にしてそれで済んだのだから有難いと思え』
「なにお~・・・おすわり」
べちゃっ。
『ぐっ、なっなんじゃこれは』
「お手」
『ぬおっ、手が(前足が)手が(前足が)勝手に』
「はい、回ってワンッ」
『くっ、くっ』くるっと回って『ワンッ』。
「はい、ヨ~シヨ~シ」
『クウゥ~ン・・・くっ、屈辱じゃあ~』
「う~ん、もう一回おすわり」
べしゃっ。
『わっ分かった。分かったから勘弁してくれ。屈辱で死んでしまう』
「じゃあ罪も無い人を襲ったり威嚇しないでね」
『シナイシナイ、だから魔法を解いてくれ』
「よしっ、解除」
『ふう~』


「何でこの馬車を襲ったの?」
『襲った訳では無い』
「じゃあどうして目の前に現れたの。皆怖がってるよ」
『いや、何やら懐かしい匂いがしての』
「匂い?」
『うむ、お主から懐かしい匂いがする』
「僕から・・・?」

もしかして神獣だから・・・あの白長い裾の人の匂いかな。
あの人神様っぽいしね。


ヒュ~ン・・・ドスンッ!!。
「いっ!?」
「「「「「ひええぇ~」」」」」

『あなたどうしたの?』
『あっいや、その・・・』
『なに?、人間を苛めたりしてないでしょうね。うん、クンクン・・・あら懐かしい』
『だろ』
『坊や使徒なの』
「はっ・・・違いますけど」
『それにしても妙に胆が座った坊やね』
「だってどうせフェンリルなんかに敵わないでしょ」
『いや、こいつ凄いぞ』

多分もう魔法は効かないだろうな。
だって挫いた足治ってるもの。

『ふ~ん・・・。まあ良いわ使徒様なら手出し無用だからね。ほらあなた行くわよ』
ヒューン。

ふえ~、フェンリルって空飛べるんだね。

「ぼっボウズお前何者なんだよ。フェンリル抑え込むとか」
「あれは僕のスキルなんですよ」
「すっスキルって・・・」
「内緒です」
「まっまあそうだよな、お互いな。でもフェンリル抑えるスキルって・・・」

それはそうときっと、崖から落ちた時のあの人の匂いだろうな。
だとしたらステッペンウルフも、フェンリルが現れたのも僕のせいだよな。
ご免なさい皆様。
綿花運んで帰りは小麦運ぶお仕事なのに、大変な目に会わせちゃって。

それにしても足挫きがこれ程役に立つとは。
だけど痛い。

フェンリルは使徒とか言ってたけど、んな訳無い。
忘れよう。


「うめえなあ、これ」
「僕のアイテムBOXに入れといたんですよ」
僕とアルバさんのパーティー4人それに、馭者さん3人、総勢8人分のカツ丼をUちゃんから召喚して貰った。
余計な魔物や神獣を呼び寄せてしまったせめてものお詫びだ。
言えないけど。
今日の野営地でUちゃんに晩のメニュー聞いたらカツ丼だったので・・・。

うん、堅パンはもう飽きた。

「おうボウズ晩飯御馳走さん。あんがとな。今日は前勤がボウズとうちのパーティーの2人だ。俺らは後勤の夜警だからよろしくな」
「はい、分かりました」

前勤と後勤とは夜中の夜警の交代制の事だ。

町も近く普通は魔物は滅多に出ないらしく、この夜は何事も無くて、翌日にはヨーゼの港町に着いた。

着いてから初めて町の名前を知った。
そう言えば綿花を運んだ町って名前何だっけ。
未だ看板の文字が完全に読めないから、意識しないと町の名前さえ覚えていない。
冒険者としては失格だよ。


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日本が世界に誇るUS-2だけども、高いし整備が大変で海難救助に特化してるので、軍用には向かない。
だから世界には買ってくれる国が無い。
凄すぎる性能も難しいもんだね。
今は山火事等の消火用にタンクを改良中だ。
改良されていればハワイの山火事とかに出動出来たかもね。
エンジンはロールスロイス製。
5番目のエンジンは知らないけど🤣。
5番目のエンジンは翼の回りに風を送り揚力を上げて、90キロの低速でも飛べる様にしたもの。
それが有るから離陸離水、着水着陸の距離が驚く程短い。
そしてそれが波高3メートルの着水を容易にしている。
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