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黒百合は愛の花。その1

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「えっ、マリフ君らしき子森に行ったの?」
「ええ浅い所で薬草採取するって。風貌はその多分マリフ君とかだと思うぞ。それにマリフとか言う子の前に、もう一人獣人の女の子も森に行ったぞ」
「ちょっと森の様子がおかしいので立ち入り禁止措置を取るかも知れないのよ」

 ギルド職員と門番のやり取りだが。


 当然森の浅い所で薬草採取に勤しむ僕には知るよしも無い。


「森の様子がおかしい?」
「昨日マリフ君がバンリを持ち帰ったのよ」
「えっ・・・」
「森の浅い所で薬草採取してる子が持ち帰れる物じゃ無いですよね」
「だから調査隊を派遣するのだけど、その前にマリフ君が行っちゃたみたいなのよ。あっ、来た来た・・・調査隊の冒険者達」
 ギルド職員は先に朝早く子供が2人森に行ってしまった事を調査隊に報告した。


 やっぱり薬草採取は難しいな・・・。
 コツを掴むのもアリだけど、先に何か稼げる方法を考えないと厳しそうだ。
 その内Uちゃんに寝泊まりする羽目に成る。
『あら、それは歓迎ですよご主人様』
「Uちゃん、それ僕にホームレスに成れと言ってる様なものだから」
『私目はご主人様の立派なホームですが』
「いやいや、この社会で自力で稼ぐ術が欲しいの」

『ご主人様ギルとマル召喚しておいて下さい。何やら不穏な空気です』
「えっ、あっうん。ギル・マル出ておいで」
「クウ~ン、クウ~ン」
「ギル・マル辺りを警戒して欲しい」
『『了~解』』

「ブォオー」
「!何だ」
「ワォ~ン」
 バリバリバリ。
 電撃魔法!。
 ギルかマルが何かと戦っているみたい。

「キャー、助けてえー」
「えっ」
 声がした方を見ると獣人の女の子が駆けて来る。
 しかし。
 ドスッドスッドスッ。
 その後ろから見えたものに足が震えた。

 オークだった。
 聞いても資料でも知ってはいたが、実物が目の前に迫ると、それは凄い迫力。

「たっ助けて」
 獣人の女の子が僕の足にすがり付いて来る。
 ギルもマルも未だ現れない。
 一か八か。
 僕は電撃魔法をイメージする。
『ご主人様が危なければ私目が緊急召喚されますので、思いきって殺っちゃって下さい』
 ・・・あんがとさんUちゃん。

 バリバリバリ・・・。
 オークはふらふらしているが倒れない。
 僕の魔法では弱かったか?。
「ガウー」
「ギル!」
「ガウガウッ」
 オークが首に噛みついたギルを払おうと暴れる度に血飛沫が上がる。
 しかしまだまだ倒れそうにも無い。

「ギル離れて。電撃魔法撃つから」
 さっとギルが離れた瞬間に。
「いっけぇ~」
 バリバリバリ。
 先程より幾ばくか威力が上がった気がする。

「う~、倒れないかあ・・・」
「バウッ」
 マルが現れてオークの脚に噛みついた。
「ガウッ」
 続けてギルもオークの首筋に再び噛みつく。
 さしものオークも力尽きたのか倒れ込む。
 ギルは止めの一撃とばかりに首の血管を噛み千切った。
 暫くして痙攣していたオークの手足が動きを止めて静かに地面に着いた。

「これどうしようかな?」
『私目の格納庫に送還して下されば、食肉処理致しますよ』
「えっ・・・出来るの?」
『出来ます』
「US-2にそんな機能無いよね」
『わっ私目・・・神仕様ですから・・・えっへん』
 思い切りドヤ顔のUS-2が浮かぶが・・・。
 そもそも飛行艇に顔は無いよね。
「・・・取り敢えずオーク送還」


『緊急召喚で顕現します』
「どうしたの」
『オーク20体及びオーク上位種2体接近中。ギルとマルでは対応不可につき、飛行艇緊急発進しますので、急ぎ発進可能な森の外へ走って下さい。ギル・マルご主人様の案内を』
『『バウッ』ウォッン』
 獣人の女の子はギルが背に乗せて走りだし、マルは僕の先導をして走る。

 森の奥からバキバキ・ドスッドスンと音が聞こえた所で、平坦な草原へ僕たちは脱出した。
 待ち構えていたUちゃんはドアを開けタラップを出していたので、獣人の女の子を僕は抱えて持ち上げタラップを昇る。
 少し重たくてマルが女の子のお尻を持ち上げてくれて助かった。
 情けない事に最後の段を僕は踏み外したが、ギルが頭突きで押し込んでくれた。
 そして最後はギルがタラップを駆け上り、タラップはしまわれて扉が閉まった。

 その直後窓からオークの大群が見えたけど、悠々と飛行艇は車輪を駆ってエンジン音と共に滑空していく。


 低空飛行の眼下に多くの冒険者達とギルド職員が見えたので、街道を滑走路にして着陸した。
 ちょっと凸凹で着陸距離が延びたが六百メートルぐらいだろう。
 草原を森に向かっていた一行は目の前の光景に驚いて固まっていた。
 中には槍を構え剣を抜いていた者が半数。

 僕が開けられたドアから降りて行くが、タラップが未だ完全に降りていなくて、最後草の上にずっこける。
 ギルとマルはそれを見て呆れ顔だ。
 そしてUちゃんにも怒られた。

「マリフ君大丈夫~」
「だっ大丈夫です」
 真っ先に駆け寄ってくれたのはギルド新人職員の獣人お姉さんだった。
元々ギルド職員には僕の飛行艇の事は周知されているらしくて驚いてはいない。
「森の浅い所にオーク20体とオーク上位種2体が確認されました」
「こちらでも町から近い森の浅い所でゴブリン50体以上が確認されてるわ。おそらくオーク以上の強い魔物が森の奥に現れたようね」

「確認、確認。ゴブリン以外にフォレストウルフ100体を確認及び、その他多くの魔物が森の奥から移動している模様。全員至急町に避難して迎撃体制を整える様に」
「スタンビートですか?」
「規模は小さいけどスタンビートに近いわね。未だそれ程には強くない魔物だから、籠城戦で対処可能だわ。マリフ君もその子連れて早く町に戻って。私達や冒険者も調査隊全員集まり次第町に戻るから」


僕はUちゃんやギルとマルを送還して獣人の女の子と町に戻った。

獣人の女の子はお礼を言うと親のもとに帰って行ったので、僕は町の城壁に登って魔物が来たら電撃魔法を放つつもりでいた。

「君は弓も持っていないがどうしてここにいる?」
「魔物が来たら魔法で攻撃しようと思って」
「んっ・・・届かんだろ」
「電撃魔法なので少しは広範囲に衝撃を与えられるかもです」
「「「「「「電撃!!」」」」」」
「いやいやそれ、高等魔法なんだが君は何者だ」
「あっ・・・え~と、新人冒険者です」

「「「「「「・・・無いわ~」」」」」」


「調査隊が帰って来ます。来ます・・・が、後ろからオーク数十にフォレストウルフ100体近くとゴブリンも多数来ます」
「何で捕食者と補食される側が一緒になって来るんだ?」
「おそらく森の中にかなり強い魔物がいて、それを恐れて逃げてるのだと思います」
「・・・俺が新人に納得させられてしまったよ。って、そうじゃないあれを迎撃して調査隊を中に入れるぞ。お前ら気張れよ!」


厳しい、追い付かれる。
人の足はそんなに速くない。
「Uちゃん魔物の中団に電撃魔法広範囲に全力でぶち込むから、緊急召喚で僕の言葉を待たずに顕現して機銃掃射をお願い。調査隊が中に入れる様にして」
『了解』

「いっくよお~。目一杯の広範囲に電撃をあの中団に・・・どりゃあ~」

バリバリバリバリバリバリ、バリバリバリバリ。

僕は魔力の枯渇でその場にへたり込んだ。


「Uちゃん後をおね・・・がい」





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