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黒百合は愛の花 その2

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『ご主人様、ご主人様』
「んっ、Uちゃん?」

あっ、眠ってたのか・・・。
「これ」
気が付くと毛布がかけられ、獣人の女の子が僕にスープ両手で差し出して来た。
「あっ君はあの時の」
「わたしはウーヌ、ピューマの獣人よ。これ下の炊き出しから頂いて来たの、飲んで」
彼女から渡されたスプーンでお碗のスープを啜ると、じんわりと魔力が回復して身体が温まって来る気がする。

「わーわー、バウッ、ガウ、おりゃー、とりゃー、どっせい」
東西を山の崖に囲まれた城壁の外で冒険者そして、ギルとマル達が戦っている声がする。
「あっ僕も援護しないと」
立ち上がろうとしたが目が眩む。
膝が折れ地面に着きそうに成る処に、柔らかいけど決して豊かでは無い胸に顔が沈む。
「あっごめん」
「ううん、それより大丈夫?。かなりの規模の広範囲魔法使ったって聞いたよ。魔力枯渇して寝てたし」
「大丈夫・・・多分。行かなきゃ」

僕はまたよろけて思わず何か柔らかい物を掴んだがそこで途切れた。


気が付くとお日様がかなり傾いている。
「あっ」
僕は慌てて起き上がると辺りを見回す。
もう身体もふらつかないから、完全に回復した様だ。
城壁の外を見ると数体の魔物が大八車や戸板で運び込まれている。
街道の脇には穴が掘られ魔物を火葬してた。
後で聞いたけど、あれらは食えない魔物らしい。

傾く陽の中で無事に終わったのだと言う実感が涌いてくる。
タン・タン・タンと音がする方を見ると、獣人の彼女と数人の大人がやって来た。

「マーサさんにモルトバーグさん」
「「大丈夫?」大丈夫か?」
「はい、もうすっかり」
「良かったあ~」
「ありがとう。・・・え~と」
「ウーヌよウーヌ」
「あっ、ウーヌちゃんありがとう」
「こちらこそありがとう。マリフ君」


彼処に上がって来たのは、マーサさんモルトバーグさんそしてウーヌちゃん以外に、冒険者ギルドマスターと、新人のギルドの獣人のお姉さんだった。
その後で詳しい話をする為に、ウーヌちゃんと僕はマーサさんとギルマスと共にモルトバーグさんの邸宅に呼ばれた。
今夜は邸宅に泊まるらしく、途中でウーヌちゃんの家に寄って、ウーヌちゃんが子爵の邸宅に泊まる旨を御両親に伝えた。

ウーヌちゃんは子爵の邸宅が意外に質素な造りで驚いていた。
「隣の男爵様は結構贅沢してましたよ」
「あはは、僕は領主様の代行でこの町の執務官僚だからね。男爵様は領主だから、そこは違うよ」
「良く分からないけど、そうなんですね」
「う~ん、領地の1都市の役人のトップと言ったら分かるかな?」
「ああ~」

それから僕たちは事の顛末を説明した。
その後は夕食会で、僕とウーヌちゃんは御馳走に舌鼓を打った。
特にウーヌちゃんは満足顔で子爵様家族も顔をほころばせていたよ。

ウーヌちゃんがメイドさんにお風呂に連れて行かれた処で、僕に核心の問題が振られる。

「処でマリフ君はこの事件どう思う?」
子爵のその質問に。
「はい、未だ姿は見ていませんが、かなりの高位魔物が森に居ると思います」
「だよねえ~」
マーサさんは腕を組んで天井を見て言った。
ギルマスは少し困った顔で・・・。
「あの森は一旦立ち入り禁止だな。で、マリフ君とマーサ・・・何だと思う」
「オークの上位種が逃げ出すんだよ。少なくともオーガの上位種かそれ以上だろ」
「僕は魔物の事を殆ど知らないのですが、・・・Uちゃんでも探知不可能な凄い奴かと」
「「「はっ・・・探知」出来るのか」Uちゃんって?」
「はい僕の飛行艇のUちゃん(US-2)には、生き物を熱で広範囲に感知する機能が有ります」
「Uちゃんって噂の空飛ぶゴーレムかよ」
「「今更か」」
ギルマスって見てなかった?。

「じゃあ何か生き物の体温迄広範囲に感知するレーダーとか言う奴をも、魔法ですり抜けるとんでもないのがいるって訳か」
「マーサはそれに心当たりは?」
「・・・キメラ」
「「なっ・・・」」
「古代文明の遺物で有るあ奴等なら・・・」

あ奴等って、複数いるんだ。
そんな伝説の化け物が。

「だって体温の広範囲感知システムって、古代文明のレーダーとも名前が一致するし、そんなのあ奴等しか防ぐ術を知らないだろ」
「成る程」
「キメラとなると調査隊も出せんな。うちにはそんなSクラスの冒険者はいない。このまま何処かへ行くのを待つしかないな」
「「そうか・・・」衛兵でも無理だから」

兵隊さんでも駄目なんだ・・・。

「町を襲ったりは・・・」

「キメラは人が研究して作ったものだ、基本的に手を出さなければ、人は襲わない」
「そうなんですか」
「「まあ」そう言われているな」
「ギルマス、馬鹿な冒険者に手を出されても困る。確実に手を出さない様に通達しておいてくれ」
「はい各ギルド、各冒険者に通達致します。では私は急いで事に当たりますのでこれにて」

「あたしも商業ギルドやその他のギルド、他の町や王都の守護隊にも伝えるわ」
「私は領主その他の貴族そして国王陛下に連絡しておく。あっマリフ君、ありがとう。後は部屋にうちのメイドが案内するから、風呂に入って休んでくれ。・・・勿論ウーヌ君とは部屋は別だぞ」
最後僕に向かってニヤニヤしたのは何故?。

僕は顔が火照るのを抑え切れずに、黙って礼をしてその場をお暇した。

「あれは初な」
「昔が懐かしいなあ」

マーサさん・・・らいくあばーじんか!。
「ひゃーう」
案内してくれたメイドさんがハレモノヲサワルヨウナメツキで見ている。

やらかした。


お風呂を頂き部屋に戻るとウーヌがベッドに座っていた。
何故に?。

ウーヌはポンポンと隣に座るように促した。
僕は普通に座ると彼女は僕の腕を取り、頬にキスした。
「ありがとう。助けてくれて」
「いやいや、僕もいちおう男なので・・・」
「ウフっ、そうね」
「んっ」
びっくりした。
ウーヌは僕の唇にキスしたから。
しかも少し舌が絡まってきたし。
僕が固まっていると・・・。
「私男の人に胸を掴まれたの初めてだから、だから・・・責任取ってね」
そう言うと急いで部屋を出て行った。

出て行く時「あっ」って声がしたが、それは僕には大した事じゃ無い。
初めての女の子とのキスでボーとしている。

ふと気付いたら股間が膨張していた。
思わず「修行が足りん」ってペシッと窘めてやった。

そして顔をあげると・・・・・・。


「めっメイドさん何時からそこに・・・?」

「はい、ウーヌ様がマリフ様にキスをして、・・・マリフ様が・・・ご自身の物にしっぺをなさる迄。あっ、これはお着替えの下着ですが、子爵様より返却は不要でそのままお持ち帰り下さいとの事です。それでは失礼致します」

実に淡々と、そう実に淡々と喋って去って行ってしまわれた。


「全部かよ~。最初から最後まで全部かよ~。オチ○ポペチペチ迄かよ~」

「はあ~、もう寝よ」


翌朝に洗面台で僕がパンツを洗ってるのを見咎めたメイドに。
「あらまあ、うちの子も有りましたから。おめでとうございます。殿方(精通)におなりあそばされましたね」
って言われた。

「もう死にたい。ほんま」

それは僕の初めての夢精だったから。


それから僕はウーヌと二人でパーティーを組んで、町の両側の小高い丘陵地で薬草採取なんかをしている。
他の人も森に行けないから割と人目は多い。
だからイチャイチャはしてません。


本当にしてないから、そこのあなた笑わない。
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