【完結】ディープキス

コハラ

文字の大きさ
72 / 83
10話

札幌の夜【6】

しおりを挟む
 森山君の柔らかな唇に塞がれた瞬間、緊張の糸が解けた。湯煎にかけられたバターみたいに頭の奥が溶けていく。

 甘い痺れが全身を支配して立ってるのもやっとだった。しがみつくように森山君の背中に腕を回して鼓動が伝わりそうな程、密着した。

 森山君がくれるキスはゆっくりした動きからどんどん深くなっていく。唇を貪るような激しい動きに体の奥が熱くなる。

 もっと森山君を感じたい。求められたい。
 そう思った瞬間、好きだって気持ちが溢れて、うるっとした。

 好き過ぎて泣けてくる。
 森山君が大好き。こんなに強い気持ちになるなんて。

「嫌でしたか?」

 森山君が唇を離して、心配そうにこっちを見た。
 頬に流れる涙を親指で拭いてくれる。

「違うの。森山君の事が大好きだなって思ったら、涙、止まらなくなっちゃった」

 森山君の瞳が大きく見開いた。

「俺の事、好きなんですか?」
「うん。大好き」
「夏目さんよりも?」
「好きな人は森山君しかいない」

 次の瞬間、鼻先が潰れるぐらいギュッて抱きしめられた。

「やっぱり昨夜の言葉は夢じゃなかった」
「昨夜の言葉?」
「昨夜も葵さん、夏目さんよりも好きだって言ってくれたんです」

 言われてみればそんな事を言ったような気がする。

「朝になって覚えてないって言われて、俺、地獄に突き落とされましたから」
「言ってくれればいいじゃない」
「信じてくれない気がして」
「ごめんね。森山君をいっぱい悩ませて」

 森山君が眼鏡を取って、人差し指で目を拭った。

「もしかして泣かせちゃった?」

 からかうような調子で言うと、森山君がこっちを見て「目にゴミが入っただけですから」と言って、またキスをくれた。

 ついばむような優しいキスから、すぐに激しい口づけになっていく。もっと欲しい、もっと、もっと……。

 私からも夢中になってキスをした。好きだって気持ちを伝えるように。
 森山君の全てが愛しい。シトラスの香りが混ざった汗をかいた肌の匂いも、よく動く柔らかな唇も、荒々しく口の中を動き回る舌も、全力で愛しさを伝えるような抱擁も。

 森山君に愛されたい。もっと強く結ばれたい。
 求めるように強くセーター越しの背中を抱きしめた時、森山君がハッとしたように唇を離した。

「葵さん、お腹空いたでしょ」

 えっ? 夕飯? 確かにまだだけど、急にどうしたの?

「上のレストランに行きませんか?お寿司屋さんありますよ」

 森山君が距離を取るように背を向け、ドアの方に歩いた。
 何だか慌てて私との距離を取ろうとしてる気がする。

「ちょっと待ってよ」

 後ろから追いかけて、腕を掴んだ。

「森山君、どうしたの?」
「どうって別に」
 声が沈んでる。
「ちゃんと話して。なんか森山君、私から逃げようとしてる?私の事がもう嫌になったの?」
「違いますよ」
「じゃあ、どうしたの?」

 森山君がため息をついた。

「この先に進んでいいのかと思ったんです」
「どういう事?」
「シナリオの事もありますし……」

 そう言って森山君は考えるように頭をかいた。

「いや、違うな。怖いんだな。本当に好きな人を抱いた事がないから。葵さんの事が好きすぎてこれ以上、どうしたらいいかわからないんです」

 なんて可愛い事を言うんだろう。愛しさが込みあがってくる。
 堪らず森山君に抱き着いた。

「あ、葵さん」

 戸惑ったような声が頭の上でする。

「もう、感動させないでよ。また泣いちゃうでしょ」
「だって本当にそう思うから」
「森山君、大好きよ」

 背伸びをして森山君の唇に短いキスをした。

「好きだから森山君に抱かれたい。ダメ?」

 眼鏡の奥の瞳が驚いたように大きくなった。

「これ以上我慢できませんよ」
「何を我慢するの? 私たち好き同士なのよ」
「葵さん、もう離しませんから」
「いいよ」

 頷いた瞬間、また唇を塞がれた。甘いキスに心と体が満たされていく。
 森山君が大好き。愛しくて堪らない。

 それから、私たちはベッドに移動した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Fly high 〜勘違いから始まる恋〜

吉野 那生
恋愛
平凡なOLとやさぐれ御曹司のオフィスラブ。 ゲレンデで助けてくれた人は取引先の社長 神崎・R・聡一郎だった。 奇跡的に再会を果たした直後、職を失い…彼の秘書となる本城 美月。 なんの資格も取り柄もない美月にとって、そこは居心地の良い場所ではなかったけれど…。

わたしの愉快な旦那さん

川上桃園
恋愛
 あまりの辛さにブラックすぎるバイトをやめた。最後塩まかれたけど気にしない。  あ、そういえばこの店入ったことなかったな、入ってみよう。 「何かお探しですか」  その店はなんでも取り扱うという。噂によると彼氏も紹介してくれるらしい。でもそんなのいらない。彼氏だったらすぐに離れてしまうかもしれないのだから。  店員のお兄さんを前にてんぱった私は。 「旦那さんが欲しいです……」  と、斜め上の回答をしてしまった。でもお兄さんは優しい。 「どんな旦那さんをお望みですか」 「え、えっと……愉快な、旦那さん?」  そしてお兄さんは自分を指差した。 「僕が、お客様のお探しの『愉快な旦那さん』ですよ」  そこから始まる恋のお話です。大学生女子と社会人男子(御曹司)。ほのぼのとした日常恋愛もの

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?

キミノ
恋愛
 職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、 帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。  二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。  彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。  無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。 このまま、私は彼と生きていくんだ。 そう思っていた。 彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。 「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」  報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?  代わりでもいい。  それでも一緒にいられるなら。  そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。  Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。 ――――――――――――――― ページを捲ってみてください。 貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。 【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

ズボラ上司の甘い罠

松丹子
恋愛
小松春菜の上司、小野田は、無精髭に瓶底眼鏡、乱れた髪にゆるいネクタイ。 仕事はできる人なのに、あまりにももったいない! かと思えば、イメチェンして来た課長はタイプど真ん中。 やばい。見惚れる。一体これで仕事になるのか? 上司の魅力から逃れようとしながら逃れきれず溺愛される、自分に自信のないフツーの女子の話。になる予定。

契約書は婚姻届

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」 突然、降って湧いた結婚の話。 しかも、父親の工場と引き替えに。 「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」 突きつけられる契約書という名の婚姻届。 父親の工場を救えるのは自分ひとり。 「わかりました。 あなたと結婚します」 はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!? 若園朋香、26歳 ごくごく普通の、町工場の社長の娘 × 押部尚一郎、36歳 日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司 さらに 自分もグループ会社のひとつの社長 さらに ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡 そして 極度の溺愛体質?? ****** 表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。

Melty romance 〜甘S彼氏の執着愛〜

yuzu
恋愛
 人数合わせで強引に参加させられた合コンに現れたのは、高校生の頃に少しだけ付き合って別れた元カレの佐野充希。適当にその場をやり過ごして帰るつもりだった堀沢真乃は充希に捕まりキスされて…… 「オレを好きになるまで離してやんない。」

処理中です...