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深夜のファミレスで
《5》
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アイスコーヒーじゃない。いろんな甘い味がする。
不味くも美味しくもないこの得体の知れない液体は何?
視線を向けると雨宮課長が悪戯っ子みたいな笑みを浮かべた。
「アイスコーヒーだと思った?」
「これ何ですか?」
「見せかけアイスコーヒー」
「はあ?」
「面白いだろ」
「面白いって……」
雨宮課長ってこんな子どもっぽい事する人だったの?
ぷっ。
可笑しい。
普段とのギャップがあり過ぎる。
厳しい顔で私の企画書のダメ出しをしていた人と同一人物とは思えない。こんな茶目っ気がこの人にあったなんて。
クスクス笑うと雨宮課長が「やっぱり中島さんは笑顔が似合うね」と優しい笑みを浮かべた。
ああ、そうか。私を笑わそうとしてこんな事を……。
「雨宮課長、何を混ぜたんですか?」
「全部のジュース」
クスッと笑ってから、雨宮課長も自分のアイスコーヒーに口をつけた。
「うーん、複雑怪奇な味だ」
雨宮課長が眉を顰めて渋い顔をする。
「それもアイスコーヒーもどきですか?」
「中島さんにだけに出すのはズルイでしょ。同じの二つ作って来たよ」
公平というか、変な人。
でも、今夜は映画館で会えたのが雨宮課長で良かった。
張り詰めていた気持ちが少し和む。
笑ったからかな。
「『ショーシャンクの空に』良かったよね」
思い出したように雨宮課長が口にした。
先ほど、上映していた映画だ。
泣いていたから、全く見られていなかったけど、目を閉じていても場面が浮かぶ程、繰り返し見ている大好きな作品だ。
「やっぱ。ラストシーンがいいよね。何度見てもスカッとするな」
激しく同意。
アンディとレッドが再会する、あのラストはいい。
原作のスティーブン・キングの小説では書かれなかったシーンだったけど、ダラボン監督は観客が最後に見たいシーンを撮ってくれた。
気づくと映画談義になっていた。まず冒頭のシーンから答え合わせをするように雨宮課長と話した。ドローンなんてない時代だから、アンディが刑務所に行くシーンは実はヘリコプターから撮った映像であると雨宮課長が教えてくれる。
雨宮課長ってこんなによく話す人なんだ。
映画が大好きなんだ。
急に親近感を覚える。
不味くも美味しくもないこの得体の知れない液体は何?
視線を向けると雨宮課長が悪戯っ子みたいな笑みを浮かべた。
「アイスコーヒーだと思った?」
「これ何ですか?」
「見せかけアイスコーヒー」
「はあ?」
「面白いだろ」
「面白いって……」
雨宮課長ってこんな子どもっぽい事する人だったの?
ぷっ。
可笑しい。
普段とのギャップがあり過ぎる。
厳しい顔で私の企画書のダメ出しをしていた人と同一人物とは思えない。こんな茶目っ気がこの人にあったなんて。
クスクス笑うと雨宮課長が「やっぱり中島さんは笑顔が似合うね」と優しい笑みを浮かべた。
ああ、そうか。私を笑わそうとしてこんな事を……。
「雨宮課長、何を混ぜたんですか?」
「全部のジュース」
クスッと笑ってから、雨宮課長も自分のアイスコーヒーに口をつけた。
「うーん、複雑怪奇な味だ」
雨宮課長が眉を顰めて渋い顔をする。
「それもアイスコーヒーもどきですか?」
「中島さんにだけに出すのはズルイでしょ。同じの二つ作って来たよ」
公平というか、変な人。
でも、今夜は映画館で会えたのが雨宮課長で良かった。
張り詰めていた気持ちが少し和む。
笑ったからかな。
「『ショーシャンクの空に』良かったよね」
思い出したように雨宮課長が口にした。
先ほど、上映していた映画だ。
泣いていたから、全く見られていなかったけど、目を閉じていても場面が浮かぶ程、繰り返し見ている大好きな作品だ。
「やっぱ。ラストシーンがいいよね。何度見てもスカッとするな」
激しく同意。
アンディとレッドが再会する、あのラストはいい。
原作のスティーブン・キングの小説では書かれなかったシーンだったけど、ダラボン監督は観客が最後に見たいシーンを撮ってくれた。
気づくと映画談義になっていた。まず冒頭のシーンから答え合わせをするように雨宮課長と話した。ドローンなんてない時代だから、アンディが刑務所に行くシーンは実はヘリコプターから撮った映像であると雨宮課長が教えてくれる。
雨宮課長ってこんなによく話す人なんだ。
映画が大好きなんだ。
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