雨宮課長に甘えたい

コハラ

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佐伯リカコの本心

《5》

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「はい」と、桜色のハンカチを今日子さんが差し出してくれた。

「えーと」

戸惑っていると、今日子さんがハンカチでポンポンとお化粧が崩れないように目の周りを拭いてくれた。

それで泣いていた事に気づいた。

「ごめんなさいね。先生、冗談半分で言ったと思うんだけど」
「いえ」
「辛い恋をしているのね」

今日子さんが同情するようにこっちを見た。

「私もね。先生に苦しい恋をしていたの。だから、わかるわ」

胸に沁みる言葉だった。
この人も、辛い思いをして来たんだと思ったら、また涙が滲んだ。

滲んだ涙も今日子さんは拭いてくれた。

「すみません」
「いいのよ。私で良ければ話を聞くわ。これでも結構口は堅いのよ」

今日子さんがふふと笑う。
穏やかな表情に救われる。

辛い恋をして、今、幸せそうにしている今日子さんは希望のように見えた。
私も今日子さんのように笑える日が来るかな。

席に戻るとふぐ刺が来ていた。ふぐの食感を楽しめるように身は厚めに切ってあるらしい。

塩で食べるのも美味しいと教わって、食べてみた。

うまっ!

甘みのある身に、程よい歯ごたえ。

幸せ――。

「美味そうに食べるな。俺のも食べるか?」

望月先生がふぐ刺のお皿を差し出した。

「さっきは悪かった」

ボソッと言われた言葉に、今日子さんが言った通り、先生は意地悪だけど、悪い人ではないんだと思った。

「では、遠慮なくいただきます」

三切れ取ると、「とり過ぎだろ」と望月先生に言われる。

「じゃあ、もう一切れ」

さらに一切れ取った。

「これで先生の謝罪は受け入れてあげますから」

私の言葉に「まいったな」と言って先生が笑う。

それから先生とは打ち解けられた。
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