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第1章『研究の結果と代償』

目覚メノ日

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周りがザワザワしているのがわかる、死んだのか、遺体でも残っててそれで葬式でも誰か開いてくれてるのかな?と目を開ける。
見たことのない木目の天井だ。
周りを見渡そうとすると身体中が悲鳴をあげる
「っつ!」思わず声が出る。

「目が覚めた!ピエール、彼が起きたとマルクス様を呼んで下さい!」
女性の声が聞こえる身体を起こそうとすると咎める様に「貴方は生きているのが不思議な状態だったんです、まだ身体を動かしてはなりません。」

「起き上がれないので申し訳ないのですが今の私の状態になるまでの経緯等を教えて頂きたい。」
私は絞り出す様にその場に居る顔を見れない彼女に聞く。
「それに関してはマルクス様が来てからにしてくださいね。後ええと、貴方の名前はなんというのでしょうか?」

私の名前もまだまだ知られていないものだ、ノーベル賞を三年連続で取得というギネスも持っていたのだが。
「私の名前は武田彰久、物理学者です。」
「学者さんですか、なのにあんな所でどうして…」
と彼女が言った直後ドアが開く音がする。
そして数人の人の足音が聞こえる。
「どうかな、若人よ、目覚めの方は」と壮年期は過ぎてるであろう男性の声が聞こえる。

さて私は皮肉屋であるがこの状況下で皮肉を返すのは出来ないな、大人しく適切に答えるか…
「身体中が悲鳴をあげてはいますが、一応は峠は越したのかなと思います、少ししたら動けます。」

それに対して男性は「駄目だ駄目だ、しばらくは寝ていなさい。これは治療に携わった人物全員の見解だ。」
その後私はお互いに名乗り合い彼が私を助けてくれたマルクス=ド=アールケインというこの地方の領主だという。

私と話していた女性は侍女のアリサという名前でずっと私を看護してくれていたのだという。
私を見つけた時は身体中の骨がグシャグシャで内臓も損傷が有ったのだという、まさに紙一重。
というかそこまでの負傷どうやって治したのか?

「すいません、どうして私の骨や内臓は治っているのでしょうか、そこまでの負傷もう一生寝たきりでもおかしくないと思うのですが。」
「ん?回復魔術を使ったからに決まっているではないか、それも数人がかりでかけたから後遺症も残らずしばらく寝ていればまた問題なく生活できる。」

回復魔術?そんなもの空想の世界じゃ有るまいし…
というかここはどこだ?
「申し訳ありません、此処はどこでしょうか、後今は何年でしょうか?」

マルクスは少し疑問が有るようだが答えてくれる。
「今は神歴158年第37週で、ここは私の領地のグエルトリスという場所だが?もしかして記憶がないのかね?」
ここは記憶がないと答えた方が良いだろう。
私は一部の記憶がないということをその旨を伝えるとマルクスは元気になるまでここに居るといいと言ってくれた。

「何故私にここまで優しくしてくれるのでしょうか、私は貴方に何も報いる方法がありません。」
「はっはっは、構わないのだよ、もう領地は大軍に蹂躙されるだけ…最後に君のような若人を救ったというのが残れば私が亡くなってもヴァルハラには行けるだろうとちょっとした打算もあるさ。」

何か戦争でも有るのだろうか?聞いてみるとするか、そう思った直後私は呻き声を低くあげる。
マルクスは申し訳なさそうに頭をかく。
「すまない、君はまだまだボロボロだ、寝ていなさい私はまた来るとしよう。」

マルクスと数人がドアを開け、立ち去る。

「アリサさん申し訳ないがまた起きたときに色々聞かせてください。」
そう言って私はまた意識を手放す。
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