ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第二章 中級編開始

第258話 OLサツキの中級編三日目の風呂上がり

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 どうにかこうにかお湯を足しつつスライム風呂を流し、追加で出してもらった泡風呂でさっと洗うと、サツキは髪を拭きつつ風呂を出た。緑のスライム風呂は確かに効果があった様で、身体は温まっているのに皮膚がスースーしていた。夏用の入浴剤みたいだ。

 服を洗濯カゴに入れたが、そういえば洗い方を教えてくれると言われたが結局まだ教わっていない。サツキはユラがいるであろう台所に向かう。釜戸に置かれた鍋から美味しそうな湯気が立ち上っているが、ユラはいない。

「ユラ?」

 サツキは書斎に向かうと、いた。床にはラムがゴロゴロと寝転んでおり、その横にユラが胡座をかいて座っていた。手にはワインの様な赤い液体が入ったグラスを持っている。

 ユラはパラパラと本をめくると、目的の場所を見つけたのだろう、嬉しそうにして顔を上げた。

「サツキ、さっきのスライム風呂の話。ほらちょっと来い」

 手招きされたので、サツキはユラの隣へと座った。横に置いてあった空のグラスをサツキに渡すと、瓶に入った赤い液体をコポコポと注いだ。

「はい、乾杯」
「これ媚薬入ってないよね?」
「入ってねえよ」
「じゃあ乾杯!」
「信用ねえなあ」

 はは、とユラが笑って、サツキとグラスを合わせた後、くいっと飲み干した。サツキもグラスに口を付けると、何とも飲みやすいお酒だった。ほんのりミントの様な爽やかな香りがする。

 まさか。

「スライム入ってないよね?」
「スライム入りだ」

 やっぱりか。ユラが新たにグラスにお酒を注ぎながら説明をする。

「スライムは結構需要があるから、初級ダンジョンには瓶を持っていくのが基本なんだよ」
「そういえばウルスラも持ってたね」
「売れるんだよ。まあ安いけどな、小遣い程度にはなる」
「は、ははは……」

 幸せそうにゴロゴロ絨毯の上を寝転がっているラムを前にして話していい内容だろうか、とも思うが。

「あ、そうだユラ、洗濯の魔法を教えてもらってなかったから教えて」
「明日明日。明日の朝、俺の分も一緒にやってよ」
「いやまあ明日でもいいけど……」

 やると言っていたことが予定通り為されないと、何となく居心地が悪くなる。これが真面目と言われる所以かもしれなかった。その点、ユラはその辺りはかなり適当そうである。これ位適当な方が、生きやすそうではあるのかもしれないが。

 少し羨ましく思った。

「でさ、洗濯よりもこっち。ほらここ読んで」
「ん? ここ?」

 ユラの胡座の上に乗せられたそこそこ大きな本を、サツキは上から覗き込み、ワクワクしているユラの横に少し近寄りつつ読み始めた。

 ある暑い夏の一日。マグノリアは余りにも暑い日々に嫌気が差しており、空気をひんやりとさせるブリーザラーの中級魔法にあたるウィンブリーズを連発して唱えたところ、とうとう夜になり魔力が尽きかけようとしていた、とある。

 やっぱりこの人阿呆だ。

 サツキは思った。
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