ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

文字の大きさ
260 / 731
第二章 中級編開始

第259話 魔術師リアムの中級編四日目の出社後

しおりを挟む
 リアムと祐介が出社すると、潮崎と木佐ちゃんが給湯室前で何やら楽しそうに話している。

「おはようございます」

 祐介が元気よく挨拶をしたので、リアムも慌てて挨拶をした。

「おはようございます!」

 まずは顔を見たら挨拶。これが社会人の常識だという。リアムはこういった組織に属したことがなく、冒険者登録をしてあるギルドでもここまで形式には拘らない。そもそもギルドに赴く時間もばらばらなので、同じ時間に出勤するという経験は初めてである。

「おはよう。今朝も仲いいね」

 潮崎が、リアムと祐介を見て感想を述べた。ちら、と執務エリアの方を一瞬見ると、安心させる様に笑いかけた。

「今日はあの人展示場の当番だから、今日は出社しないよ。ちょっとは穏やかに仕事出来るかね、ははは」
「ああ、今日は羽田さんの番でしたっけ」

 展示場の当番。一体何だろうか。

「祐介、当番とは何だ?」

 すると、祐介がにこやかに教えてくれた。

「前に話したでしょ? 家具の見本とかが置いてある所。いきなり商談になることもあるから、基本営業が誰かしら一人は行くことになってるんだよね。昨日までは松田さんが暫く担当してたんだ」

 そういえば、営業は八人いると聞いていたが、あと一人だけまだ会っていなかった。

「とすると、祐介もその内行くのか?」
「そこなんだよね」

 途端祐介の表情が曇った。そして潮崎に話しかける。

「潮崎さん、僕の当番、暫くスキップしてもらうことって出来ますか?」
「え? ん、まああっちの方が家が近い人は喜んで変わってくれるとは思うけど、何で?」
「あの……羽田さんがあんな感じだから、サツキちゃんを置いて行きたくなくて」

 祐介が言いにくそうに、だがきっぱりと言った。

「祐介、だが仕事は仕事だろう? 私は大丈夫だから」
「嫌だよ、だってまた家の前をうろつかれたりしたらどうするのさ」

 すると、木佐ちゃんがぎょっとした様にリアムと祐介を見た。

「え? 羽田さんが野原さんの家の前を?」
「ああ、木佐さんには言ってなかったね」

 潮崎が週末にあったことをさらっと説明すると、木佐ちゃんが自分の二の腕を抱き締めた。

「それ……ストーカーじゃないの」

 祐介が少し怖い顔で頷いた。

「あの人、最近明らかにエスカレートしていて、週末に二回もうちの周りを彷徨いてたんです。僕らが家に帰るとついて来てたし」
「え!? そうだったの!? それいつの話!?」

 潮崎が驚いた様に聞いてきた。潮崎は酔っ払って大騒ぎしている羽田は知っていて通報もしたが、その前のことは聞いていない。思っていたよりも状況が酷かったからだろう、潮崎の表情も曇ってしまった。

「あれの前の日です。休日出勤して散歩がてらとか言ってたけど、僕らがいない間にサツキちゃんちに行ってたみたいで」

 そこまで聞くと、潮崎がしっかりと深く頷いてみせた。

「分かった。これは営業皆に連絡しておく。当番は暫くはいいよ。だから今日、何が何でも社長に何があって羽田さんをあそこまで自由にさせているのか、必ず聞き出そう」

 四人は顔を見合わせると、こちらも大きく頷いたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

処理中です...