8 / 88
契約結婚を望む理由は
8
しおりを挟む
若佐先生は現在所属している法律事務所の所長から孫娘との縁談を執拗に勧められており、それが断ろうにも断れずに困っているとの事だった。自分が所属する事務所の所長でもあり、今後の事を考えて、穏便に縁談を断れないか方法を模索していたらしい。
「所長も決して悪い人ではないんです。うちの祖父と昔から懇意にしていて、私の事も実の孫の様に可愛がってくれました。ただ、その勧めてくる孫娘というのが、現在高校三年生との事でして……。さすがに歳の差があるかと思っています。犯罪者に間違われてもおかしくありません……」
「そうなんですね……」
「どのみち、いま抱えている案件を片付けたら、事務所を辞めて独立するつもりでした。ただ、その間も所長は結婚を勧めてくると思うので、体よく断る理由が欲しかったんです。そこで、貴女に協力して頂けないかと思いまして」
「協力するのは問題ありません。ただ、何をすればいいんですか」
「とりあえずは、私と籍を入れて下さい。戸籍上、夫婦関係になってしまえば、所長も何も言えないでしょう。貴女の事はこれまで内密にお付き合いしていた恋人で、ようやく籍を入れたとでも言うので」
「それ以外にする事は……」
「特にありません。夫婦らしい事は何も。
ああ、貴女のご両親には、ご挨拶をしなければいけませんね。急に結婚されたら、ご両親も困ってしまうでしょう。とりあえずは、貴女をご自宅までお送りしながら、ご両親に簡単にご挨拶をして、後日、改めて正式にご挨拶に伺おうかと思います」
「じゃあ、私も若佐先生のご家族に、ご挨拶を……」
「……私には家族はいません、両親は子供の頃に亡くなり、私を育ててくれた祖父母も数年前に他界しました」
「すみません……」
余計な事を言ってしまったと、私は肩を落とすが、若佐先生は「気にしないで下さい」と端的に言っただけであった。
「朝食を終えたら、貴女をご自宅までお送りします。実は今日の夜にはホテルを引き払って帰らなければならないんです」
「そうなんですね」
「しばらくは貴女の裁判と結婚の用意で、こっちにも来るかと思います。貴女に会う事もあるでしょう。でも二人きりの時には無理に夫婦の振りをしなくてもいいです。貴女は貴女のままでいて下さい」
「はい……」
若佐先生の支払いで朝食を済ませると、若佐先生と連絡先を交換して、自宅まで若佐先生の車で送ってもらう。
自宅に帰った時、両親は今にも怒りだしそうな様子で、私達を出迎えてくれたが、若佐先生が自己紹介をしながら、私と結婚を前提に付き合っている恋人だと言った途端、両親の興味は若佐先生に移ったようだった。
私との出会いや馴れ初めを聞かれて、若佐先生がそつなく作り話を答えると、それで気分を良くしたようで、若佐先生が帰ってからも、ずっとご機嫌の様子だった。それを良い事に、私はこっそり自室に戻ったのだった。
「所長も決して悪い人ではないんです。うちの祖父と昔から懇意にしていて、私の事も実の孫の様に可愛がってくれました。ただ、その勧めてくる孫娘というのが、現在高校三年生との事でして……。さすがに歳の差があるかと思っています。犯罪者に間違われてもおかしくありません……」
「そうなんですね……」
「どのみち、いま抱えている案件を片付けたら、事務所を辞めて独立するつもりでした。ただ、その間も所長は結婚を勧めてくると思うので、体よく断る理由が欲しかったんです。そこで、貴女に協力して頂けないかと思いまして」
「協力するのは問題ありません。ただ、何をすればいいんですか」
「とりあえずは、私と籍を入れて下さい。戸籍上、夫婦関係になってしまえば、所長も何も言えないでしょう。貴女の事はこれまで内密にお付き合いしていた恋人で、ようやく籍を入れたとでも言うので」
「それ以外にする事は……」
「特にありません。夫婦らしい事は何も。
ああ、貴女のご両親には、ご挨拶をしなければいけませんね。急に結婚されたら、ご両親も困ってしまうでしょう。とりあえずは、貴女をご自宅までお送りしながら、ご両親に簡単にご挨拶をして、後日、改めて正式にご挨拶に伺おうかと思います」
「じゃあ、私も若佐先生のご家族に、ご挨拶を……」
「……私には家族はいません、両親は子供の頃に亡くなり、私を育ててくれた祖父母も数年前に他界しました」
「すみません……」
余計な事を言ってしまったと、私は肩を落とすが、若佐先生は「気にしないで下さい」と端的に言っただけであった。
「朝食を終えたら、貴女をご自宅までお送りします。実は今日の夜にはホテルを引き払って帰らなければならないんです」
「そうなんですね」
「しばらくは貴女の裁判と結婚の用意で、こっちにも来るかと思います。貴女に会う事もあるでしょう。でも二人きりの時には無理に夫婦の振りをしなくてもいいです。貴女は貴女のままでいて下さい」
「はい……」
若佐先生の支払いで朝食を済ませると、若佐先生と連絡先を交換して、自宅まで若佐先生の車で送ってもらう。
自宅に帰った時、両親は今にも怒りだしそうな様子で、私達を出迎えてくれたが、若佐先生が自己紹介をしながら、私と結婚を前提に付き合っている恋人だと言った途端、両親の興味は若佐先生に移ったようだった。
私との出会いや馴れ初めを聞かれて、若佐先生がそつなく作り話を答えると、それで気分を良くしたようで、若佐先生が帰ってからも、ずっとご機嫌の様子だった。それを良い事に、私はこっそり自室に戻ったのだった。
11
あなたにおすすめの小説
ホストと女医は診察室で
星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
【完結】京都若旦那の恋愛事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
藍生蕗
恋愛
大学二年生、二十歳の千田 史織は内気な性格を直したくて京都へと一人旅を決行。そこで見舞われたアクシデントで出会った男性に感銘を受け、改めて変わりたいと奮起する。
それから四年後、従姉のお見合い相手に探りを入れて欲しいと頼まれて再び京都へ。
訳あり跡取り息子と、少し惚けた箱入り娘のすれ違い恋物語
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
私が育てたのは駄犬か、それとも忠犬か 〜結婚を断ったのに麗しの騎士様に捕まっています〜
日室千種・ちぐ
恋愛
ランドリック・ゼンゲンは将来を約束された上級騎士であり、麗しの貴公子だ。かつて流した浮名は数知れず、だが真の恋の相手は従姉妹で、その結婚を邪魔しようとしたと噂されている。成人前からゼンゲン侯爵家預かりとなっている子爵家の娘ジョゼットは、とある事情でランドリックと親しんでおり、その噂が嘘だと知っている。彼は人の心に鈍感であることに悩みつつも向き合う、真の努力家であり、それでもなお自分に自信が持てないことも、知っていて、密かに心惹かれていた。だが、そのランドリックとの結婚の話を持ちかけられたジョゼットは、彼が自分を女性として見ていないことに、いずれ耐えられなくなるはずと、断る決断をしたのだが――。
(なろう版ではなく、やや大人向け版です)
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる