透明少女と檻の中

さねうずる

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4 私はこうしてお話ししました。

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次の日も牢屋を覗きに来た。

今日はキリ花も一緒に持ってきてる。
キリ花は花弁が肉厚で割ると中がぷるぷるしている青色の花だ。
これもココ花のすぐ近くに群生しているのを私が見つけた。命名も私だ。切り傷に効くからキリ花。
塗ると傷の治りが早い。

昨日と同じ時間に鍵小部屋に行くと今日も昨日の2人組だった。
昨日の要領で鍵を取ると、夕食に行った2人組を見送る。

今日も鍵が落ちてるのは流石に不自然なので、鍵小屋の扉が閉め切らないように小さな石を噛ませておいた。

今日は長居しないようにしないと。

牢の前に着くと中の様子を伺う。
今日も水浸しの上、昨日よりずっと酷い怪我だ。
相変わらずぐったりしていて、起きている様子はない。

カチャッ

今日はタオルも食料も家から持ってきた。
タオルは昨日拝借したやつを洗っただけなんだけど。

黒さん(私命名)の顔を拭いて、頬に手を当てる。

うん。熱は下がってる。昨日のココ花が効いたみたい。
今日もぐったりしてるから心配だけど。

昨日と同じようにココ花の蜜を飲ませて、体を拭い、キリ花を特に深い傷にだけ少し塗っておく。
あまりやり過ぎると治ってるのが騎士たちにバレてしまうから。

ご飯はりんごとナナラの実を混ぜてすり下ろしてきた。
栄養価も高くて腹持ちする。
あと、普通はここら辺では採れないグラという穀物を水で煮たやつ。
グリードが魔法でいっぱい実らせてくれたので主食としてよく食べてる。

どちらも口移しで飲み込ませると、容器などはすぐに片付けた。
昨日の今日で流石にあの2人も早めに帰ってくるかもしれないから、早めにここを出たほうがいい。

今日はどこで寝ようかな・・・・。
昨日はあの後、朝になるまで蔵書室脇の小屋にお邪魔して寝た。
壊れた本が山積みにされていて、見るからに使ってなさそうだったから。
今日もあそこにお邪魔しようかな。

寝る場所を考えつつ、鞄を肩に掛け立ち上がる。
そう言えば・・・・この手錠の鍵ってあの小部屋にはないのかな?
黒さんの手を壁に固定している手錠を近くでまじまじと観察してみると、不思議なことに鍵穴みたいなものは見当たらない。
強めに引っ張ってみるもののガチャガチャ音がするだけで取れそうにない。

「無駄だ。この手錠は登録された魔力の持ち主しか解錠できない。」

小さい声だったが、静かな牢内では容易に耳に届く。
飛び上がるほど驚いて声の主を見ると、黒さんの目がジッとこちらを覗(うかが)っていた。

「お前、何者だ?」

・・・・・・・・・・・・

「話せないのか?」

コツン
踵を一つ鳴らす。

「人間なのか?」

コツン

「昨日助けてくれたのもお前か?」

コツン

「・・・・そうか。感謝する。今日はもう帰るのか?」

コツン

「分かった。・・・・・・・・明日も来るか?」

コツン

「・・・・・・・・待ってる。」


話しちゃった………………。

あれから蔵書室のほうへ向かう途中、黒さんとの会話を頭の中で何度も思い出す。

久しぶりに人と話した。
すごく・・・・ドキドキしたし、今も心臓がバクバクしてる。
私が音を立ててしまうと大抵の人は怖がるか気のせいだと思う。

でも、今日はちゃんと意思の疎通が取れた。
それに”待ってる”って。
誰かが自分の存在に期待してくれるなんて初めてだから、何だか凄くくすぐったい気分。

その日は何だかふわふわした心地で眠りについた。
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