イフルート

如月りょう

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序章

始まるイフルート

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「生き返れるのか?!」
「もちろん。神は嘘をつかないからね。ただしさっきも言ったけど、ゲームを攻略したらね」

 神と名乗るこの女性は、言ってる内容や態度のせいかあまり信じることができないが、嘘にしてはこの真っ白の世界神の間にわざわざ連れて来るメリットや、ここで嘘を付くメリットどちらもないように感じる。

「そのゲームっていうのは、何をすればいいんだ?」

 俺は一番気になったゲームの内容を聞いた。生き返る、ということは簡単なゲームなわけがないと察していた。もしかして今からこの世界で殺し合いとか、1年間正座できるか、なんてことをさせられるかも……。……正座はないな。

「めちゃくちゃ考えてるみたいだね。じゃあそろそろ正解発表といきますか」

 神の言葉に俺はごくりと固唾を呑む。


「あなたにはこれから女の子と付き合ってもらいます!!」

 
いえーい! とハイテンションな神に唖然とする俺。

「え、つきあうって、あの交際するって意味の??」
「その通り! あなたは女の子に告白をして付き合いなさい! 以上!」

 色々な感情が胸の中を交差する。

「ちょちょ、ちょっと待てよ! 俺告白したことな……じゃなくて! そんなんで生き返させてくれるのか?!」

 動揺のあまり、うまく言語化できなかったが、言いたいことをなんとか神に伝える。

「ふふ、びっくりした? てっきり殺し合いとか言われるんじゃないかっていう顔してたもんね」

 思っていたことを指摘されて俺はうっ、と少し後ずさってしまった。

「そんな殺伐としたことは私嫌いなのよね~。もっとラブアンドピースがいいじゃない!」

 先程、俺を羽交締めしたやつがよく言うよ。というツッコミは心の中にしまい、エセ平和主義者の神は目をキラキラさせながらそう語った。

「……付き合うって言ったが、女の子なんてこの世界にいるのか? 女の子どころか動物の気配すら感じないが」
「そりゃそうよ。さっきも言ったけど、この神の間は私の領域で、あなたの魂を私が呼んだの。だから当然ここには私達2人しかいない。だからあなたにはこれからゲームをするにあたって移動してもらいます」
「移動? どこに?」
「どこだと思うー?」

 ねぇねぇーとあからさまに俺をからかってくる神に 「こいつ……!」 と思ったが、気を悪くしてゲームをしないなんて言われたらたまったもんじゃないので、仕方なく俺はぐっと堪える。

「……わからない」
「ま、そうだよね。じゃあもったいぶらずに言うね」

 神は俺から視線を外すと、すーと息を吸い、はーと吐いてから俺の方をもう一度見る。

「今からあなたが行く世界は、もしも7月21日にあなたが事故にあわず、無事に7月22日を迎えたときの世界。名付けて 『イフルート』 。ここに移動してもらって彼女を作ってもらうわ」

 神は先程までの雰囲気と違い、真剣な表情で俺にそう説明した。今までのどの話よりも現実味がなかったが、何故か一番信憑性があった。

「そんなことができるのか。さすが神だな」
「でしょー」

 前言撤回。やっぱり簡単に信じるのは怖いな。

「で、詳しいルールとか色々あるんだけど、説明するのはここまで! とりあえず行ってきてくださーい」
「なんでだよ! そのルールが大事じゃないのか?!」
「そうだよー。でもそんな簡単に教えてもらおうなんて都合が良すぎじゃない?」

 う、確かにと思ってしまった。

「でも私も鬼じゃないから救済処置はあるよ」
「まじですか! よっ! さすが神、さいきょー!」
「いえーい! もっと褒めてー」

 薄々気づいていたが、この神ちょろいな。と俺の中の悪い部分がひょっこり顔を出す。

「救済処置は2点。まずひとつめは、イフルート内で私を見つけたら何でもひとつだけ質問をしていいわ。その質問に必ず答えるから。ただ出会うかどうかは運だからあまり期待しないことね。そしてふたつめは、あなたがこの神の間に戻ってきたらゲームのルールをひとつ教えるわ。以上の2点が救済処置よ」
「ちょっと待てよ」

 俺は神の説明で引っ掛かることに気づく。

「どうしたの?」
「今からイフルートっていう世界に行くんだろ? それなのにこの神の間に戻ってくることができるのか? できるとしたら任意で戻ってこれるってことか?」
「いや、任意で戻ってくることはできないわ。戻ってこれる条件はたったひとつ。ゲームオーバーになったときだけよ」
「ゲームオーバー?! ゲームオーバーがあるのか?」

 確かにゲームと言えばゲームオーバーという設定がついてくるのは普通だが、このゲームにおいてゲームオーバーがあるとは思っておらず、俺は思わず動揺してしまう。

「あるよ、ゲームだもん。どんな条件でゲームオーバーになるかはここでは教えないけど。―――じゃあそろそろ準備はいい?」
「ちょっと! あと何かひとつでいいから教えてくれよ! お願いします! 超絶可愛い神様!!」

 俺はダメ元で頭を深く下げて神に願いを乞う。頭を下げたまま視線だけちらりと神を見る。
神の表情はわからない。

「もーしょうがないなぁ。素直すぎるのも困ったもんね。じゃあ最後にルールをひとつこの場で教えてあげる。特別よ、と・く・べ・つ」

 言い終わるとともに、チュッと投げキッスをしてきた。ゲームオーバーにならないと教えないと言っていたルールをひとつ教えてくれるぐらいには先程の言葉が嬉しかったようだ。

「 『ルール1、対象の女の子を攻略するまで生き返ることができません』
以上! さぁいってらっしゃい!!」
「いや、それもう知ってるやつー!!!!」

 突然足元に穴が空き、俺は落下しながら悲しく叫んだ。
 遠ざかり小さくなっていく穴から神が手を振っているのが見える。そして再び何も見えなくなった。
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