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しおりを挟む稽古はなんと次の日から始まった。
時間がないからって毛皮とか薬草とか道中手に入れた素材はおばさんに任せた。
稽古には隊長が常に参加していた。
もちろん副隊長のアリアもだけど。
時折いなくなったりしたけど、報告とかなんかあるんだと思う。立ち場があるしね。
そんな事よりもみんなが私の言う事に素直に従ってみるみる上達していくのが新鮮だった。
副隊長をみて練習に励んできたらしく、所作なんかが近いのが功を奏していた。
アリアの師匠。
それがこの町の警備隊の中でそれ程の存在なんだと感じた。
トリスはもちろんだけど、やっぱり信頼というのはすごい。そう思っていた。
日々の稽古の最後に行う立ち合いには皆自分の行く先にある高みとして良い教材になったに違いない。
隊長とアリアにはいつもとはべつの鎧を着てもらって立ち合いをしていた。
間合いの確認のためだ。
15分と時間制限を決めた立ち合いで2人には私を殺す気持ちでかかって来るように言った。
私は鎧だけを斬る。
毎日毎日切り刻まれる鎧。
2人にとってはいつでも殺せると言われているのと同じことだった。
私に剣は届かない、けど自分の鎧は砕かれる。
隊員達の前でコテンパンにされ続ける毎日に2人は耐え続けた。
全てはみんなが強くなるため。
でもそれは人族にとっての事だ。
強くなり守ることに必死になる人族がいる。
逆にグレンと密約して宝玉を賭けの材料にする人族もいる。
なんてちぐはぐな、、、。
ある日の稽古終わりに2人に、隊長のセイヅとアリアに真意を聞いてみる事にした。
コツコツ。ノックだ。
「隊長どうぞー!」
アリアの部屋でお茶を飲んでいるとセイヅが来た。
「リーナ、改まって聞きたい事とはなんだ?」
セイヅは簡潔だ。
レヴィの手をぎゅっとしながら私は聞いた。
「2人はさ、アリアの理由は知ってるけど、、セイヅはどうしていまのお仕事をがんばっているの?」
ソファーに腰を下ろして「ふぅ」とひとつため息をつくとセイヅは言った。
「魔王復活の話を知っているな?」
「うん、でも「自称魔王」でしょう?魔王は封印されてアメリアにいるんだし」
「マキナ、外しなさい」
えっ?という顔をしながらマキナが部屋を出る。
「アリア、君には聞いておいてもらう」
ごくりと息をのむアリア。
「もったいぶらないでよ」
イラついてみせる私。
「すまない。私は、性は変えているがランジー家の末席に名を連ねる家の出でね。子爵とは面識もある、アメリア首都での任務中だったがアリアの剣技が凄まじいのを知った子爵から共に領地北端の警備を言いつかった」
「お貴族様が?こんな辺境に?」
「続きがある。この町に数年前に聖剣を携えた剣士が滞在したという情報を得たのが発端だ。偶然にもアリアはその者に剣技の指南を受けたと聞いた」
「これが聖剣っていう訳?」
指で刀身のあなをぐるぐるしてみせる。
うなづくセイヅ。
「セイヅ、知らない訳じゃないと思うけど、、聖剣には赤い宝玉がはまってるの。これはそれなりに出せばアメリアで買えるレプリカだよ?」
知識総動員の私。レヴィはしかめっつら作戦だ。
「判っている。だが、、、。ひとつ質問させてくれ」
「なぁに?」
「アリアの話では以前はもう1人仲間がいたそうだが?魔術に研鑽がある女性とやらはどうした?」
「クロイツの方にいっちゃったよ」
「あ、、」
アリアは切なそうに俯く。
「そうだったか、すまない。クロイツは技術の国だからな、、アメリアにはない技術を求めたのか」
「たぶんね、、たくさんは語るタイプじゃないから、、で?剣が上手な私をどうしたかったの?」
セイヅは意を決したように言った。
「アメリアから「先代の魔王」が脱出した」
アリアは目をまん丸にして驚いた。
こんな所まで情報が?
またトリスを捕まえるつもりなの?
それか、もしかしなくてもアメリアはまた戦争するつもりだ。
それだからここにこの辺境に戦力をもたらしたんだ。
くそぅ、私がアリアに剣を教えなかったらこんな事にならなかったかもしれない。
トリスのことがバレてるとして、グレンの事は??
時間稼ぎにしかならなかったのかも?
まだ他にもスパイがいたら?
こいつも今殺すべき?
でもでもアリアの目の前で??
むり、、、、、。
アリアはかわいいもん。
ぎゅ
うんレヴィ。
「ほんとうに?魔王はほんとうにアメリアから逃げたの?」
かまをかける事になっちゃうけど仕方ない。
私はセイヅを睨みながら、更に剣に手をかけて聞いた。
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