いつかまたおなじ空のしたで

106

次の朝、くまは来なかった。
ほかのみんなも。
もう大丈夫。そう思ったんだと思う。
ありがとうみんな。
また一歩踏み出すんだ。
レヴィと2人、しっかり手を繋いで街道へ向かって進む。
森が開けてきた、、。
私は、もしもみんなが狩られたら嫌だなって思っていた。
私にも、トリスみたいにバリアーできないかな？
私はかちんとなった時とか「ばん！」って周りを吹き飛ばしたり出来ることがある。
あの逆、ふんわり包んだり出来たら、この森が荒らされないように出来たらいいのに。
そう思っていた。
やってみよう！
たぶん、、歌えばいいんだ。
優しいみんなが暮らす森がいつまでも健やかでありますように。
「レヴィ。私、バリアーやってみる」
「えっ？うんうん！がんばって！」
レヴィは一瞬戸惑ったけど、すぐ理解して私を背中からそっと抱きしめてくれた。
すうっといきをすって私は歌った。
「あーー、、らーー、うーらー、、、」
歌詞とかない。
柔らかなお日様と、木々の葉を撫でてそよく風、さらさら流れる小川や池に現れてはきえる波、芽吹く芽や石の下にいるうねうねした虫達、、みんなが健やかでありますように。
遠くから吠える声が聞こえてくる。
ありがとうみんな。
「ふぅ、、、、」
「リーナ、お疲れ様。すごくきれいだったよ！」
「ありがとう！」
また手を繋いで私達は森を出て街道に向かった。
街道沿いに行けばまた街があるだろう。
もう1人の子爵の領地への情報はそこできっと手に入る。
見えてきたランジー子爵領は復旧工事が開始されているようだった。
私達はブレスレットを着けて、なにくわぬ顔で街道を行き来する人々の流れに紛れた。
後にあの森が「迷いの森」と呼ばれ、旅人はおろか軍隊を持ってしても冒せない「聖域」のような扱いを受ける事になる事を私達はこの時はまだ知らない。