いつかまたおなじ空のしたで

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「ウイナー！なんてどう？」
レヴィが叫んだ。
「勝者」か、かっこいいな！
「うんうん！かっこいい！」
バイコーン本人も気に入ったみたいで鼻を高くあげてレヴィに頬擦りをする。
「ウイナー。よろしくね？」
私が言うとほっぺたを舐めてきた。
顔の傷を舐め返すと、ぶるって尻尾を振って喜んだ。
ウイナーと3人て檻の中でごろごろしていると店主が戻ってきた。
「馬車のご用意が整いました！！」
バイコーンと転がって遊ぶ私達を観て店主は叫ぶように言う。
すっと立ち上がって服に絡みついた草を払う。
「ウイナーに馬車を見せておいてくれる？私は支払いをしてきます」
レヴィは頷く。寡黙な戦士はくたびれるって前に言ってた気がするけど？
くたびれるけどお気に入りなのかな？
店主について歩いて店内に進む。
お客さんなんていない。
「こっ！こちらがお見積もりになりますっ！」
店主はトリスに酷い目に遭った記憶が甦っているんだろう。緊張した雰囲気で書類を突き出してくる。
安い、、、、。
「ふぅ、、」
思わずため息をつく私。それ程こわがらせたのか。
「採算はとれますの？」
聞いてみた。
はっとして目を落とす店主。
やっぱりそうか、安くしないといけないと思ってるんだ。たしかに鉄の檻や魔鋼の枷を剣で斬ってしまう相手に今度は自分が斬られない保証なんてない。
けど、アメリアから捨てられた町に残ってくれたのはほんと有り難く思う。
だからこれからもこの町にいてほしい。
「困りましたわね、、前回は先生がご無理をお願いしたかもしれませんけれど、、。これでは私の家名に傷がついてしまいます」
ため息まじりに請求書？を返す私。
店主はそれを受け取ると、別の書類を出してきた。
は！？5倍じゃんか！？？
トリス、なにしたの？
「前回、お勉強頂いた分もお支払いいたしますので明細を頂いけます？」
店主の顔色が変わる。
「あっ！いえいえ。あの時はこちらに落ち度がございましたので、今回はこちらのみでお願いいたします！！」
また語尾が叫び気味になる店主。
「承知いたしましたわ」
私はバックから金貨を出してカウンターに並べる。
「アメリア金貨でよろしくて？」
「もちろんです！！」
バタバタとカウンターの裏に戻って金貨を数える店主は、ほう、と肩を撫で下ろして金貨をしまう。
「ありがとうございました！」
「こちらこそですわ」
会釈ひとつ、ひらりと身を翻して店を出る私。
外には立派な馬車と、走る気満々なウイナーをなだめているレヴィがいた。
男達が忙しなく働き隅々まで磨かれて、長らく置かれていたであろう馬車は輝きを取り戻していた。
店主が出てきた。
「良い買い物が出来ました。次回もよろしくお願いしますね？」
私が言うと、前回同様に深々と、でもシャンとして頭を下げる店主。
ウイナーをひと撫でしてレヴィと御者席に乗り込む。
「ウイナー！ゴーっ！」
レヴィの掛け声でウイナーは歩き始める。
値段が高いだけじゃない。この馬車はさすがの乗り心地だ。
門をくぐるとウイナーはまるではしゃぐ様に駆け出した。
「ウイナー！馬車壊れちゃうーっ！」
「あはははっ！」
サスペンションのおかげでおしりは痛くない。
これなら明日にでもお城に着けるだろう。
ひらひらとたなびくウイナーの鬣と尻尾を見ながら私とレヴィは振り落とされないようにしっかり抱き合った。
私達がどっちも手綱を持ってない事に気がついたのは、セレスティアナの結界に入ってしばらく経ってからだった。