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なにもかも、上手く行っていたんだ。
しおりを挟む綺麗好きな俺には、我慢できなかった。
ある日。我慢の限界が来てアイツを殴り、いつもの流れで蹲ったアイツの腹を蹴ってしまった。
アイツは苦しそうに呻いて、腹を押さえて動かなくなった。
いつものように、気絶したのだと思って放置した。
その翌朝。俺の着る服の準備がされてないこと、食事の匂いがしないことに不機嫌になっていると・・・
アイツが、血溜まりの中で気絶していることに気が付いた。
これは、さすがに死なれるのはまずいと思って、慌てて救急車を呼んだ。
朝に帰って来たら、妻が倒れていたと救急隊員に告げ、親族の経営している病院へ連れて行くように指示を出した。
緊急手術が行われた。そして、流産を覚悟してくださいと言われた。
アイツは・・・本当に妊娠していた。妊娠を告げられてはいたが、腹も薄かったし。なにより、俺にはそんな実感が全く無かった。
けど、でも、そうか。死んだのか。
手術が終わり、面会謝絶が解けたので様子を見に行くと・・・アイツは、腹を撫でて泣いていた。
取り敢えず、口止めをしておいた。妻が、家で転んで流産した。そう、救急隊員に言ったし。医者とも口裏を合わせてある。親族が経営している病院だから、俺の不利にならないようにカルテを書いてもらった。
これで安心だ。
そして、こうやって俺がせっかく見舞いに来てやっているというのに、コイツは俺の方を見ない。救急車を呼んでやったのは俺だ。入院の手配もしてやった。普通は、そんな俺に感謝して然るべきじゃないか?
それとも・・・これ見よがしに、俺を責めているつもりか?
「お前が腹を庇わないから、俺の子供が死んだじゃないか」
頭に来てそう言ったが、アイツは反応しなかった。
更に苛立ったが、コイツは今重傷人。そして、ここは病院だ。
さすがに、今ここでコイツを殴るのはまずい。
我慢した。
何度も我慢して我慢して――――
アイツが退院して、家に帰って来たときにようやくコイツを殴れるのだと、嬉しくて堪らなくなった。
ああ、やっぱり俺にはコイツが必要不可欠なんだと、強く強く実感した。
コイツがいない間、どうにもイライラして、仕事中にミスを繰り返してしまった。同僚や上司には、妻が入院して……と言って、気を使わせておいたが。
やっぱり、サンドバッグが無いと駄目だな。
そう思っていたが――――
ある日、会社の後輩に告白された。
アイツよりも若い女に好意を寄せられて、俺もそう悪い気はしない。
ダメ元で告白とか言って、なのに俺にキスをして来た。これは、そういうことだよな? 俺が結婚していても構わない。遊びましょう、というお誘い。
俺は、後輩の誘いに乗ってやることにした。
アイツは……まぁ、いい。煩くなにか言うようなら、黙らせればいいだけ。そう思っていたが、アイツがなにか言うことはなかった。
仕事をして、そのストレスをアイツを殴ることで解消。仕事は上手く行って、可愛い後輩とも関係を持って・・・
上手く行っていた。
なにもかも、上手く行っていたんだ。
なのに、あの女が!
あの、馬鹿女がっ!!
アイツに、俺と別れろと言いにうちまで来ていた。離婚届に、アイツの名前まで書かせてっ!! 俺は、アイツと別れる気は無いって言っていたのにっ!?
妊娠までしているだとっ!? ふざんなよなっ!!
あの馬鹿女とは遊びだ。そもそも、俺が既婚者でも構わないと言って来たのは、そして俺を誘惑して来たのはあの馬鹿女だ。俺が既婚者で、妻と別れるつもりは無いって言ったんだから、お前は遊び相手だって、察しろよなっ!?
なに本気になって、勝手に俺と結婚しようとしてんだよっ!?
怒りが収まらないまま、俺は早朝から家を出た。
そして、あの女と話を付け、階段から突き落とし――――
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
ああ……ああ、ようやくお前の気持ちがわかったよ!
жжжжжжжжжжжжжжж
ドン引くくらいの外道野郎……((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
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