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獣医師パトリックの場合。
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パトリックは、今日も彼らに見蕩れていた。
黒や栗、鹿毛、赤茶など、艶やかな毛並みに、美しく躍動するしなやかな筋肉と身体のライン。
シャープな顔立ちや、愛嬌のある顔、美しい顔に、ちょっと面白い顔などなど。
個体に拠って性格が変わり、賢い子や少し気難しい子もいれば、優しい子、プライドの高い子、食いしん坊な子、ちょっとおバカな子など、様々だ。どの子も皆、それぞれに愛嬌と可愛らしさがあり、みんながとても愛おしい。
彼らは、神が創り出した至高の生物。
パトリックは昔から、馬が大好きで大好きで堪らなかった。
なのでパトリックは、獣医になった。
軍の専属獣医。実質的な、馬だけの医者。
パトリックは四六時中馬のことを考え、馬に囲まれて過ごしていたい。だというのに、なぜか偶に、変な依頼が来るのが困りものだ。
身元不明……明らかに身分のある男の去勢を極秘でさせられたり、だとか・・・
まあ一応、動物で慣れてはいる。
しかし、パトリックは本来獣医だ。
他所へ行けと言いたくなったが、とある筋からの絶対に断れない依頼だったので、仕方なく遂行することにした。
ソイツは処置をされることを酷く嫌がり、暴れて脱走しようとした。それを護衛?が押さえ付けて麻酔をしたりだとか、処置後の世話で顔を合わせる度、パトリックへ罵詈雑言を浴びせて来て色々と大変だった。
王族の自分にこんなことをしてただで済むと思っているのか……云々、大層喧しく吠える馬鹿な奴で心底うんざりしていたが、世話の手抜きをするとコロッと簡単に死んでしまう上、極秘依頼ということもあり、他人へ任せることなど論外。どうしても直接顔を合わせる必要があったのだ。
そして、実は一番凄かったのは、護衛?の聞かなかったことにしろ!的なプレッシャーの方だったりする。
パトリックは、めんどうなので返事をせず、罵詈雑言の嵐や身分云々については全部適当に聞き流したが・・・
無事、処置の経過が良好なことを確認して動かせる状態になってから、あの馬鹿はどこかへ運ばれて行った。修道院は嫌だ、助けろ…だのなんだの言っていたが、無論無視した。そもそも、罵詈雑言を浴びせた相手に助けろと言って来るとは、相当残念な頭をしていたのだろう。
あんな五月蝿い馬鹿は、二度とごめんだ。
次が無いことを切に祈りたい。
・・・まあ、大抵はどこぞの馬鹿(それも割と大物関係者)がやらかした不始末のけりなので、そういうことが無くならないと判っている辺りが非常に虚しいのだが・・・
そういえば、親戚の外科医…ドクター・リド侯爵が王都へ呼ばれて暫くの間グラジオラス辺境伯領を離れて、向こうで奔走させられると零していた。
とりあえず、頑張れと言っておいたが・・・
その少し前には、子爵位叙勲予定の騎士アイラが馬鹿王子と婚約破棄できたと嬉しそうにしていたと報告があったから・・・きっとそういうことなのだろう。と、パトリックは思った。
アイラは、パトリックの馬好き仲間だ。なので、おめでとうと婚約破棄を手紙で祝っておいた。
それに触発され、パトリックも昔、とある令嬢に婚約破棄をされたことをうっすらと思い出した。
黒や栗、鹿毛、赤茶など、艶やかな毛並みに、美しく躍動するしなやかな筋肉と身体のライン。
シャープな顔立ちや、愛嬌のある顔、美しい顔に、ちょっと面白い顔などなど。
個体に拠って性格が変わり、賢い子や少し気難しい子もいれば、優しい子、プライドの高い子、食いしん坊な子、ちょっとおバカな子など、様々だ。どの子も皆、それぞれに愛嬌と可愛らしさがあり、みんながとても愛おしい。
彼らは、神が創り出した至高の生物。
パトリックは昔から、馬が大好きで大好きで堪らなかった。
なのでパトリックは、獣医になった。
軍の専属獣医。実質的な、馬だけの医者。
パトリックは四六時中馬のことを考え、馬に囲まれて過ごしていたい。だというのに、なぜか偶に、変な依頼が来るのが困りものだ。
身元不明……明らかに身分のある男の去勢を極秘でさせられたり、だとか・・・
まあ一応、動物で慣れてはいる。
しかし、パトリックは本来獣医だ。
他所へ行けと言いたくなったが、とある筋からの絶対に断れない依頼だったので、仕方なく遂行することにした。
ソイツは処置をされることを酷く嫌がり、暴れて脱走しようとした。それを護衛?が押さえ付けて麻酔をしたりだとか、処置後の世話で顔を合わせる度、パトリックへ罵詈雑言を浴びせて来て色々と大変だった。
王族の自分にこんなことをしてただで済むと思っているのか……云々、大層喧しく吠える馬鹿な奴で心底うんざりしていたが、世話の手抜きをするとコロッと簡単に死んでしまう上、極秘依頼ということもあり、他人へ任せることなど論外。どうしても直接顔を合わせる必要があったのだ。
そして、実は一番凄かったのは、護衛?の聞かなかったことにしろ!的なプレッシャーの方だったりする。
パトリックは、めんどうなので返事をせず、罵詈雑言の嵐や身分云々については全部適当に聞き流したが・・・
無事、処置の経過が良好なことを確認して動かせる状態になってから、あの馬鹿はどこかへ運ばれて行った。修道院は嫌だ、助けろ…だのなんだの言っていたが、無論無視した。そもそも、罵詈雑言を浴びせた相手に助けろと言って来るとは、相当残念な頭をしていたのだろう。
あんな五月蝿い馬鹿は、二度とごめんだ。
次が無いことを切に祈りたい。
・・・まあ、大抵はどこぞの馬鹿(それも割と大物関係者)がやらかした不始末のけりなので、そういうことが無くならないと判っている辺りが非常に虚しいのだが・・・
そういえば、親戚の外科医…ドクター・リド侯爵が王都へ呼ばれて暫くの間グラジオラス辺境伯領を離れて、向こうで奔走させられると零していた。
とりあえず、頑張れと言っておいたが・・・
その少し前には、子爵位叙勲予定の騎士アイラが馬鹿王子と婚約破棄できたと嬉しそうにしていたと報告があったから・・・きっとそういうことなのだろう。と、パトリックは思った。
アイラは、パトリックの馬好き仲間だ。なので、おめでとうと婚約破棄を手紙で祝っておいた。
それに触発され、パトリックも昔、とある令嬢に婚約破棄をされたことをうっすらと思い出した。
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