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よわいひとのこが、つちのついたたべものたべちゃメッ、なの! ぽんぽんいたいいたいしたらこまるでしょ!
しおりを挟む「そういうことで、詫び代わりにめし食わせてやる」
「そういうことなら喜んで!」
と、トムさんの後ろに乗せてもらって移動することになった。
「そう言やお前、この辺りのもんじゃねぇだろ」
「ぁ~、はい。そーですねー」
「娘っ子一人で旅か? 親はどうした?」
「ぁ~……その、わたし物心付く前には孤児だったんで」
「そうか。そりゃ悪いことを聞いたな」
「いいえー。美味しいごはんくれるなら問題無しです」
「美味いかはわからんが、腹一杯食うといい。俺の奢りだ」
「わー、ありがとうございます♪」
美味しいごはん! 国を出る前から、温かくて美味しいごはんなんて随分と食べてない!
『おーい、もしもーし? ……ちゃ~ん? 聴こ……んでしょ? 返事くらいしてよー』
ふぅ……なんぞ幻聴が聴こえて来るとは。
『ねーってばー。国戻らない?』
『うっわ、言葉遣い悪っ!』
ああ、ヤだヤだ。幻聴が返事らしきものを返して来た。きっと、空腹のせいだ。
「うん? なんか言ったか? 娘っ子」
「いいえー。なんでもありませーん。あ、でも」
「でも、なんだ?」
「この辺りに来てから、なんか丸くて光る物体? が、視界の端にちょろちょろしてるんですよねー? なんです、あれ? この地方に生息してる光る虫かなんかですか?」
「うん……? 光る虫? ぁ~、俺はそういうの見たことねぇが……」
『はっはっは! チビ共を虫けら呼ばわりとは、アイツらが聞いたら泣くぞ』
と、横合いからケラケラ笑う声がした。
「え? あの虫、鳴くの?」
『はっはっは、ぷんすか怒るか悔し泣きするかどっちかじゃないか?』
「へー……って、ん? ハッ! 風の……」
『よう! 久し振りだな、欠食娘! 前に見たときとあんまり変わらんな? お前、やっぱりまだめし食わしてもらってないのか? ふっ、そんなお前には食べ物を恵んでやろう。ちょっと前まで地面に埋まっていたが、浄化すれば食えんだろ。なんせ、ヒト族には三秒ルールってやつがあるからな! ほら、手を出せ欠食娘』
相変わらず人の話を聞かない風の精霊は、一方的に喋って、片手を差し出したわたしに少し土の付いたお菓子をぽんと乗せる。
「わぁ、ありがとう風の兄貴!」
『はっはっは! 遠慮は無用だ、さっさと食っちまえ』
「うん」
頷いて、お菓子に付いた土を払ってお菓子をパッと浄化する。
「頂きまー……」
『たべちゃだめ~っ!!』
お菓子を口へ入れようと瞬間、小さい子供のような高い声が脳裏に響いて……?
「ああっ、お菓子が消えたっ!!」
『んあ? あ、チビ共』
わたしの、手の中からお菓子が消えたっ!?
「酷い! わたしのお菓子~っ!?」
『ちがうのだ、それはわれらのおかしなのっ! かぜのにぃににとられたのっ!?』
可愛らしい声が、ぷんすかと怒っているように響く。
「え? えー……このお菓子、盗品なの?」
『いいだろ、別に。昔のお前らみたいな行動してたヒトの子が菓子埋めてたから、ちっと貰っただけじゃねぇか』
『きょーかいないで、たべられなくなったおかしはわれらのなのっ!!』
『そーだそーだ!』
『ロマンシスとのけーやく!』
『あと、よわいひとのこが、つちのついたたべものたべちゃメッ、なの! ぽんぽんいたいいたいしたらこまるでしょ!』
うん? あれ? なんかわたし、怒られてる? あと、ぽんぽんいたいいたいって……なに? あと、風の兄貴の周辺に光る丸い物体? から子供みたいな声がするような気がするんだけど?
『かぜのにぃにも、よわいひとのこにばっちいおかしあげちゃメッ! ひとのこはびょーきなったら、おそらにかえっちゃうこもいるんだからね!』
『メッ!』
『にぃにメッ!』
丸い玉? の光が、声に合わせてぴかぴかと明滅する。
『ふっ、安心しろチビ共。なんせ、この欠食娘は自分で浄化、治癒が使えるからな! 多少腐ったもん食ったところで、そう簡単には死にやしねぇ! なんせ、俺がコイツに浄化魔術を教えたんだからな! な、欠食娘』
「ぁ~、そう言えば……昔、カビたパンを泣きながら食べてたとき。どこからともなく現れた風の兄貴に、『身体に悪ぃもんは全部浄化して食っちまえ!』って、教えられたなー」
今から……もう十年以上も前のことだ。ごはんがもらえなくて、お腹空いてたときに非常食として隠していたパンを思い出して……カビてるのに絶望して、でも空腹には勝てなくて。カビの少ないところをどうにかちびちび食べてるときだった。『そんなもん食ってっと、人間の幼体はすーぐ身体壊すぞー』と頭上から声がした。
不思議に思って上を見上げると、なんか人っぽいものが浮かんでいた。それが、わたしと風の兄貴との出逢いだ。「これしか、たべるの……ない」そうめそめそ答えると、『ぁ~、まあ食糧難ってな、どこの地域にもあるもんだからなー。なら、浄化魔術覚えろ。見たとこ、お前魔力強いからな。なんかこう、アレだ。穢いもんを、バシュっ!! と掃除するとか燃やすイメージの魔力で包んで無毒、無力化する感じ?』と、浄化魔術のコツを教えてくれた。
大分、感覚な感じの教え方だったけど。『よーし、覚えたな? なら、これからは身体に悪ぃもんは全部浄化して食っちまえ! あと、念の為に腹に身体強化掛けとけ。あ? 身体強化がわからねぇ? ああ、アレだ。身体頑丈になれって思いながらぐっと身体を魔力で覆うんだよ』って、言われて……誰? と、問う前に兄貴は消えた。
なんかこう、ちょっとヤバそうなものを食べるときの心得? を残して。
それから、数年に一度くらいの頻度でわたしが一人でいるときに声を掛けて来るようになって、『あ? 俺が誰かって? そうだな、俺は風の精霊だ。兄貴と呼べ!』と、食べ物を恵んでくれるようになった。『ほれ、そこに落ちてたからやる。ちょっと砂付いてっけど、払って浄化すりゃ食えんだろ』と、土や砂の付いたお菓子をくれたりした。
あ! さっきのトマスさんに貰ったお菓子! あれ、昔風の兄貴から貰ったお菓子に感じた祝福と似た魔力をしてるんだ! って、ことは……お菓子職人さんは風の兄貴の知り合い?
『ふびんなこ……』
『かわいそー』
「お陰で、浄化魔術は割と得意。毒や腐ったもの食べても死なない、胃腸が鉄壁の卑しい孤児って有名になったし」
あと、隠しておく食糧には浄化を掛けてから真空状態の結界を張っておけば、結構腐り難くなるってことも風の兄貴に教わった。
『ふっ、いいか。チビ共。この欠食娘の憐れさは、かなりのものだぞ。聞くも涙、語るも涙な話だ。よーく聞け。この欠食娘はな……』
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