おっす、わしロマ爺。ぴっちぴちの新米教皇~もう辞めさせとくれっ!?~

月白ヤトヒコ

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おーい、そこの娘っ子! そんな大層な殺気出してどうしたーっ?

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「ふぅ……いよいよとなったら……」

 短い間だけど……最初は飼い主? から引き離して、ちょっと警戒されていたけど。一緒に旅をして過ごすうちに、段々と仲良くなった。野盗共を蹴散らし、手ずから食べ物を分け与え、夜はくっ付いて眠ったりもした。でも……

 肉、食いてぇっ!! というワケで、我慢の限界が来たらいずれはこの軍馬君を食べるしかないだろう。生きとし生けるものは、食欲には敵わない。わたしのための尊い犠牲だ。仕方ない。

 ただ、問題は……一人で馬の解体は難しい。手持ちの刃物も、馬を解体するには心許ないけど……う~ん、刃物に魔力を通して強化すればイケるかな? そして、最大の問題。数百キロもの肉を抱えて移動するのは、ちょっと骨が折れそうだと言ったところだろうか? まあ、骨や可食不可の部位を除けばある程度重量は減るだろうけどなぁ。

 一応? 生肉は足が早いけど。まあ、浄化とか風系統の魔術の組み合わせで傷むのをうんと遅くすることができる。最悪、食中毒になっても自分に浄化と治癒を掛ければ大丈夫っしょ。

 なんて思いながら、じっと軍馬君を見詰めていたら……

 身の危険を察知したのか、ヒヒーン! と怯えたような嘶きを上げて、逃げやがった!

「ああっ!? ちょっ、待てっ!?」

 逃げられたら肉が食べられなくなる! と、慌てて身体強化で馬を追い掛けていると・・・

 ドドドドドっ!! と、背後からこちらへ駆けて来る馬の足音。こんなときに野盗か! と、軍馬君を追い掛けるか応戦するか、一瞬の逡巡。

 とりあえず、相手の姿を確認と思ってチラリと後ろを振り向くと……

「うわっ、騎士っ!?」

 こ、こっちの国の正規騎士だったりするっ? ど、どうしよ? えっと、敵対の意志は全く無いから……うん。軍馬君追い掛けよ! と、走り続けることにした。すると、

「おーい、そこの娘っ子! そんな大層な殺気出してどうしたーっ?」

 低い嗄れ声がわたしに向けられた。

 ん? 大層な殺気? わたし、そんなの出してた?

「あの馬になんぞ恨みでもあるのかー?」

 仕方ない。あの騎士様、この国の正規軍の騎士かもしれないし。無視して、なんぞ言い掛かりでも付けられたら面倒なことになりそうだし。

 軍馬君が走り去るのを断腸の思いで見詰め、ゆっくりと足を止めた。それに合わせ、背後からの馬の蹄の音もスピードが落ちてわたしの横で止まった。

「で、どうした娘っ子」

 と、わたしを見下ろす騎士様は……思ったよりもおじいちゃんな騎士様だった!

「えっと、その……ここ数日、お肉が手に入らなくて……いよいよとなったら、馬を潰して肉を食べるしかないかと考えていたら、馬が逃げちゃいまして」
「……娘っ子。あの立派な軍馬を食う気だったのか? そんなに餓えてんのかよ。ほれ、これでも食ってちっとは腹の足しにしろ」

 ガッシリしたおじいちゃん騎士が、ぽんと馬上からわたしに包みを放った。

「ハッ! 有難く頂きます!」

 はしっとキャッチして、包みの甘い匂いに目を細める。中身は……パンのような、でもパンにしては硬い焼き菓子のような? わからないけど、でもこれ絶対美味しいやつだ!

 ボリボリと、香ばしいお菓子? を貪る。なんだか、食べたことのあるような気配というか……? なんだろ? ん? 祝福……っぽい感じ?

「おお、そんな腹減ってたか。もっと食えと言いたいところだが、生憎とシスの野郎から強奪した非常食は残ってなくてな。いや、飴玉くらいはあったか……?」

 ガサゴソとおじいちゃん騎士が懐を探り、更にぽんと小さな瓶をわたしへ放った。中には、きらきらと輝く透き通った飴玉が二個入っている。

「わーい、ありがとうございます騎士様!」

 お菓子? を食い尽くし、瓶を開けて飴玉を一粒。そっと大事に口へ入れる。

「あぁ……角砂糖より美味しい♪」
「……娘っ子。馬にやる角砂糖を食う程に餓えていたのか。よし、お前にめし食わしてやる。俺に付いて来い」
「ふぇ? え? きひはま?」

 カラコロと口の中で飴玉を転がし、

「騎士様? どうしてですか?」

 もう一度ちゃんと言い直す。

「俺は……まあ、一応騎士に戻りはしたが、そう呼ばれるのはガラじゃねぇ。俺はトマスだ。トム爺とでも呼べ。それに、な。その……」

 トムさんはそっと目を逸らし、ぼそりと言った。

「この辺りは、少し前に魔獣や野盗共を一掃してな。で、また変なのが寄り付かないようちょくちょく見回りに来てたんだ。だから、その……この辺りに獣がいないのはそのせいでな。悪いな、娘っ子」
「あ~……」

 道理で。ここ数日野盗の類も見なかったワケか~。そっか……まあ、正規の国軍なら定期的に賊や魔獣の討伐をするのは当然。今回は、偶々わたしがこの道を通る少し前にそれが行われたということ。

「そういうことで、詫び代わりにめし食わせてやる」

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