ヴァンパイアハーフだが、血統に問題アリっ!?

月白ヤトヒコ

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ヴァンパイア編。

3.アホな口上を述べて高笑う変態が現れた。

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「さて、と…行くか」

 夜まで街をふらつきながら様子を見ていた。街の雰囲気は悪くない。
まあ、夜もそうだとは限らないが…

 とりあえず、ビンゴブックに載っていた賞金首を狙うか。
 やっぱり、女子供を狙うようなクズを狩るべきだろう。そういうクズは個人的にも嫌いだし。

 と、なると、女装かな? 一応、今の格好でも釣れるとは思うが、万全を期するなら、より弱そうな格好だな。

 普通の街娘が着るような服装に着替え、カツラを被って夜道を歩く。勿論、犯罪の多い道だ。
 夜道なぞ全く怖くはないが、いかにも恐々と歩いている風に、わざとのろのろキョロキョロ道を歩く。

 ひたひたと、背後から聴こえて来る足音。少し速度を上げてみる。と、足音もついて来る。どうやらかかったようだ。

 更に人通りが少なくなって来て・・・

「女、止ま、ぐがっ!?」

 声を掛けて来た男の様子が変だ。

「?」

 振り返ると、

「やあ、危なかったね。けど、もう大丈夫だよ。君を狙っていた変態はおにーさんが叩き伸めしたから安心してね?」

 低く柔らかい声でにこりと微笑む長身の男。銀の髪に薄い琥珀の瞳。

「・・・」
「あ、ボクは怪しいモノじゃないから安心していいよ?」

 親切心なのだろうが、思い切り水を差されてしまった。どうしたものか…

「さあ、お嬢さん。おにーさんが安全な場所まで送ってあげよう」

 サッと慣れた様子でオレの肩を抱こうとする男を、スッと避ける。

「そんなに警戒しなくても大丈夫だって。おにーさん、女の子には優しいんだからさ? もう怖くないよ、大丈夫」

 と、また肩を抱こうとする自称おにーさんを避ける。どうでもいいが、チャラいな? このヒト。

「って、君? そんな男放っといて、早く安全なとこ行こうよ。ね?」

 しゃがみ込み、自称おにーさんが倒した男の顔を確認する。一応、ビンゴブックには載っている顔だが…露出狂か。小者だな。大した額じゃない。けどまあ、性犯罪を一人駆逐した…感じか?

「え? ビンゴブック? もしかして、わざとこんなとこ歩いてたりするのかな?」

 頷く。

「…なにか、事情があるんだね・・・よしっ、おにーさんが手伝ってあげよう! 警邏けいら隊の所へ運べばいいかな?」

 手早く露出狂男を縛ると、ソイツを引きって歩き出す自称おにーさん。

「?」
「賞金首を狙うなんて危ない真似、可愛い女の子一人にはさせられないよ」

 ・・・お節介な、ヒトだった…

 自称おにーさんと一緒に警邏隊の詰所へ行き、換金。賞金を折半にしようとしたら断られた。だが…

「お金? そんなのは要らないよ。そんなものより、ボクは…君からのキスが…」

 スッと頬へ伸ばされた手を避ける。

「あ、嫌だった? ごめんごめん。無理強いは嫌いだからやめとく。けど、もうこんな危ない真似はしちゃ駄目だよ?」

 サッと引く自称おにーさん。
 チャラいが、こういうところは悪くない。嫌よ嫌よも好きのうち、というのは愚か者の理屈だ。嫌なものは当然、嫌に決まっている。

 送って行くというのをかたくなに固辞。自称おにーさんと別れ、適当な露地を歩いていると…

「娘、光栄に思うがいい。今宵の我が獲物に選ばれたことを。その血は我がかてとなり、永久とこしえとなる。クハハハッ!!」

 高い場所からマントをひるがえし、アホな口上を述べて高笑う変態が現れた。なんと言うか、かなり恥ずかしい奴だ。そう思って見上げていると、

「フッ、あまりの恐怖に声も出ないか…」

 いや、あまりにあまりなので、呆れているだけだ。可哀相な頭というか…

「さあ、その血を我に捧げよ!」

 建物の屋根から飛び降りた男が、オレの方へ向かって来た。

「そういうの、むしろダセぇから」
「へ? ブハっ!?」

 向かって来る男の顎に、逆手に握り込んだナイフの柄を叩き込む。変則的なアッパーカット。男が仰向けに倒れる。

「うわ、弱…」
「な、な、な、なにが起こったっ!?!? 僕は吸血鬼に成ったんだぞっ!?」
「あ~、はいはい。吸血鬼に、成った、ね? OK。なら、判るよな? ハンターがいるってことくらいはさ?」
「っ!? ヴァンパイアハンターか、女っ!?」
「いや? どっちかというと、バウンティハンターだな」

 獲物はなにも、吸血鬼だけじゃない。必要なら人間も、他の種族だって狩る。

「ハッ、人間が、ヴァンパイアになった僕に敵う筈ないだろうがっ!?」
「人間、な? ふっ…」
「な、なにがおかしいっ!?」
「いや? マジで雑魚だなぁと思って」

 おそらくコイツは…

「ぼ、僕を馬鹿にするのかっ!!」

 激昂した男が突っ込んで来る。

「? 馬鹿だろ。マジで」

 だって…

「ほら? 弱い」

「カ、ハっ・・・」

 ナイフで心臓を一突き。これだけで、もう死んだ。パタリと倒れる男。起き上がる様子は無い。

「これだから人間から転化したてはなぁ…しかもコイツ、生きてた頃から弱かったんじゃね?」

 恥ずかしくて残念で…可哀相な奴。

 吸血鬼には種類が幾つかある。大まかに分けると、生きている吸血鬼と、死んでいる吸血鬼の二つ。生きているのは、真祖しんそや真祖の子孫達。そして、死んでいる吸血鬼というのは、真祖やその子孫達につくられた吸血鬼達。

 まず、真祖というのは自然発生したヴァンパイアのこと。絶対数が非常に少ない。けど、滅茶苦茶に強い。出鱈目でたらめな程に…

 次に、そんな真祖の子孫達。これは、真祖よりは数が多い。真祖が人間と交わって生まれたモノや、真祖同士で交わって生まれたモノ、あとは真祖から分裂して生まれたりとか、割と様々だ。基本的には真祖の血を受け継いでいる為、なかなか強い。が、その強さは血の濃さと魔力に依存する為、ピンキリ。まれに、非常に弱い個体も存在する。

 そして、それらに創られた吸血鬼。所謂いわゆる、伴侶や従者、使役されるモノ。吸血鬼の血を受け、仮初かりそめの生を生きるモノ達。これにも、種類が幾つか。

 吸血鬼が伴侶とする為や従者にする為に、生きたまま吸血鬼に成ったモノ達。これは、生きている吸血鬼と言えないくもないが…線引きが難しい。本人の同意が有れば、特に問題は無い。

 問題は、死体から創られるモノ達と、遊び感覚で創られるモノ達だろう。これは随分と昔に規制されているのだが…数十年から百年程の周期で、退屈を持て余した馬鹿な吸血鬼共が思い出したように流行らせるのだ。あと、永遠の生命などといううたい文句に誘われる人間達。むしろ、こっちの方が深刻か・・・

 良識のあるヴァンパイアはそんなことはしないというのに…まあ、死体から創られたパチモンのヴァンパイアもどきの吸血鬼や、遊びで創られた雑魚吸血鬼は弱い個体が多いから、人間でも鍛えて装備を充実させれば仕留められなくもないけど。

 消えもしない死体を見下ろす。
 人間から転化した吸血鬼というのは、兎に角選民意識が強い。殊更ことさら人間を馬鹿にしたり、蔑む傾向がある。
 確かに、コイツは選ばれたのかもしれない。但し、暇を持て余した馬鹿共の退屈凌ぎに、だ。おそらくは暇潰しのゲーム感覚で…そんなのに選ばれるなんて、憐れな奴。

 おそらく、生きたままヴァンパイアの血を摂り込んだのだろう。一度仮死状態になってからの蘇生か…転化ほやほや。だから、死体がまだ残っている。流れ出た血は、灰になっているが…

 ということは、コイツをオモチャにして遊んでいる馬鹿がこの近くにいるということだ。放っておいたら、こういう憐れな馬鹿が増えるだろう。これはもう、行くしかないな。

 と、その前に、この死体の処理をしないと。多分ショボいけど、賞金貰って。それから、この近辺に住んでいるヴァンパイアの情報を探って・・・潰す。
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