ヴァンパイアハーフだが、血統に問題アリっ!?

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
35 / 179
ヴァンパイア編。

34.もっと、要る?

しおりを挟む
『甲板で火をいてる馬鹿共がいるから、今すぐなんとかして来なさいっ!?』

 と、アマラに言われて来てみれば…
 シーフが炭を燃え散らしていた。
 そして、なにをしているかと聞くと、飯だと言う意味不明な答えが返って来た。
 思わず、雪路を見やる。

「おい、雪路ゆきじ
「なーに? ひゆう」
「いや、なにというか…なんだ?あれ」
御厨ミクリヤに聞かれてもねー?」
「お前に聞くしかねぇだろ、雪路」
「…おいシーフ、なにしてンだ?お前」
「? …ご飯?」
「や、火焚くのが飯になンのか?」
「ん。…おれ、半分イフリート・・・火、とか…熱? で、栄養補給…可能」
「ああ、そういえばアマラがシーフ君のこと、イフリートだとか言ってたけど…そういうこと」
「?」
「そう言や、少しおかしいな。火ぃ焚いてた筈なのに、全く暑くない」

 それに、あれだけ激しく燃えた後の灰に触れても、灰に熱を全く感じないのだ。普通なら、火傷してもおかしくない筈の温度だろうに。そして、

「…むしろ、少し気温下がってねぇか?」
「え?」
「あ、そういえば…少し肌寒いかも」

 自然、シーフへと視線が集まる。

「…ん。熱、奪った…ご馳走、さま?」
「…美味しいの?」
「? ・・・空気…は、美味しい…から、吸う?」
「え? いや、…呼吸はしないと死ぬ…でしょ?」
「ん…」
「え? は?」

 質問に質問で返され、たじろぐカイル。

 とりあえず、仕切り直そう。

「・・・あ~、シーフ?」
「?」
「アルは?」
「…まだ、寝てる。・・・起こす?」
「あ?いや、寝てんなら」

 起こさなくていい、そう言い終える前にシーフがアルの部屋の方へと歩いて行った。

※※※※※※※※※※※※※※※

 眠るアルを見下ろす。
 微かな呼吸の深い眠り。
 金のような、銀のような柔らかく淡い色合いの月色の髪。閉じた瞳を彩る長いまつげも同じ色。通った鼻筋。滑らかな頬。白い肌に、薄く色付く唇。眠るアルは、相変わらず綺麗。

 でも、起こすのも好き。
 普段おれは、起こされる方。だから、アルを起こすのは久し振り。楽しみ。
 白い頬にそっと触れ、耳元にささやく。

「…アル、起きて」

 勿論、起きる気配はしない。だから、起こす。
 薄く色付く唇を開かせ、そっと口付ける。柔らかい唇を割って入り、ゆるゆると精気を分け与えながら、ガリッと舌を噛み切る。口内にとろりと広がる血の匂いと暖かい液体を、ゆっくりとアルの口の中へと流して行く。

「…ん、ふ…」

 コクンと飲み込むのを確認し、動かない舌を絡め取り、噛み切った舌が治る度にまた噛み切り、血を流し込み続け、ゆっくりと口付けを深める。

「・・・・・・は、ぁ…」

 息継ぎをし、また口付ける。と、

「・・・ん…」

 アルの睫が小さく震える。そして、

「ん、ふ…ぁ…」

 ぼんやりと開く翡翠の瞳。いつもと違い、無防備な顔の幼げな表情。おれの、好きな顔。

「? ・・・しぃ、ふ…?」

 寝惚ねぼけたような舌っ足らずな声がおれを呼ぶ。

「ん。おはよ…アル」

 アルが覚醒きる前にチュッと軽く口付ける。と、とろんと落ちるまぶた。そして、

「っ!?」

 パッと開く翡翠。残念。覚醒きた。

「・・・おい、なにしてンだ?シーフ」

 低い声が言う。不機嫌に。

「…アルを、起こした?」
退けやこのアホっ!?」

 と、ベッドから蹴落とされた。
 ちゃんと目を覚ましたアルは、いつものアル。寝惚けたアルは、非常に可愛い。多分、おれとレオにぃ養父ちち養母ははしか知らないだろう。ちょっと兄貴とリリアンに優越感。

「・・・ふゎ…」

 身を起こしたアルの欠伸。下ろしたままの月色の髪が、さらりと揺れる。

「…よく、寝た?」
「そこそこ」

 ぷいとそっぽを向いての返事。

「もっと、要る?」
「・・・」

 迷うように揺れる翡翠。だから、ベッドに腰掛け、そっとアルの頬へ手を添えて…

「ん…」

 精気を分けながら、チュッと軽く触れるだけのキス。嫌がる様子はない。

「血と、どっちがいい?」
「・・・じゃあ、手首」
「首からでも、いい…」
「…多分、加減できないぞ?」
「ん。いい。吸血キス、して?」

 アルの翡翠の瞳が、薄赤の燐光を帯びる。普段よりも艶めいた表情が、ゆっくりと寄せられ・・・首筋を吐息がくすぐる。柔らかい唇が首元に落ち、血管を探るように彷徨さまよい・・・

「っ…は、ぁ・・・アルっ…」

 牙が、皮膚を突き破る。痛いのは、最初だけ。すぐに気持ちくなる。同時に、どっと精気が吸われて行く。容赦の無いエナジードレイン。

 ちょっと嬉しい。アルが遠慮も配慮も容赦も無く牙を突き立て、エナジードレインをするのは三人だけ。養母とレオ兄とおれの三人。しかも、首への吸血キス相思相愛とくべつな意味を持つ行為。

 これは、魔力が強くて濃い父や兄貴にはできなくて、アルがリリアンには絶対にしないこと。
 やはり、アルをおれで満たすのは、気分が悦い。
 少々難点があるとすれば、おれもアルの血が欲しくなるところ・・・だろうか?
 ヴァンパイアは愛するモノの血を欲し、愛するモノを自分の血で満たしたいという欲望を持つ因果な種族。これは、本能に根差した欲求だ。

 兄貴みたいに、アルの意志を無視するのはいやだから我慢する。けど・・・ふと、思った。
 …おれやアルが、『それ』を我慢できるのは、両方共母方の血が濃いからなのかもしれない。ヴァンパイアとしての本能が、純血の兄貴に比べると、薄いのかもしれない…と。

「・・・はぁ…」

 段々、くらくら…して、来た。
 感覚的に、血はそんなに減っていない。けれど、精気を…吸われ、過ぎた…よう、だ。
 ああ…眠く、なって・・・
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...