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ヴァンパイア編。
34.もっと、要る?
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『甲板で火を焚いてる馬鹿共がいるから、今すぐなんとかして来なさいっ!?』
と、アマラに言われて来てみれば…
シーフが炭を燃え散らしていた。
そして、なにをしているかと聞くと、飯だと言う意味不明な答えが返って来た。
思わず、雪路を見やる。
「おい、雪路」
「なーに? ひゆう」
「いや、なにというか…なんだ?あれ」
「御厨に聞かれてもねー?」
「お前に聞くしかねぇだろ、雪路」
「…おいシーフ、なにしてンだ?お前」
「? …ご飯?」
「や、火焚くのが飯になンのか?」
「ん。…おれ、半分イフリート・・・火、とか…熱? で、栄養補給…可能」
「ああ、そういえばアマラがシーフ君のこと、イフリートだとか言ってたけど…そういうこと」
「?」
「そう言や、少しおかしいな。火ぃ焚いてた筈なのに、全く暑くない」
それに、あれだけ激しく燃えた後の灰に触れても、灰に熱を全く感じないのだ。普通なら、火傷してもおかしくない筈の温度だろうに。そして、
「…むしろ、少し気温下がってねぇか?」
「え?」
「あ、そういえば…少し肌寒いかも」
自然、シーフへと視線が集まる。
「…ん。熱、奪った…ご馳走、さま?」
「…美味しいの?」
「? ・・・空気…は、美味しい…から、吸う?」
「え? いや、…呼吸はしないと死ぬ…でしょ?」
「ん…」
「え? は?」
質問に質問で返され、たじろぐカイル。
とりあえず、仕切り直そう。
「・・・あ~、シーフ?」
「?」
「アルは?」
「…まだ、寝てる。・・・起こす?」
「あ?いや、寝てんなら」
起こさなくていい、そう言い終える前にシーフがアルの部屋の方へと歩いて行った。
※※※※※※※※※※※※※※※
眠るアルを見下ろす。
微かな呼吸の深い眠り。
金のような、銀のような柔らかく淡い色合いの月色の髪。閉じた瞳を彩る長い睫も同じ色。通った鼻筋。滑らかな頬。白い肌に、薄く色付く唇。眠るアルは、相変わらず綺麗。
でも、起こすのも好き。
普段おれは、起こされる方。だから、アルを起こすのは久し振り。楽しみ。
白い頬にそっと触れ、耳元に囁く。
「…アル、起きて」
勿論、起きる気配はしない。だから、起こす。
薄く色付く唇を開かせ、そっと口付ける。柔らかい唇を割って入り、ゆるゆると精気を分け与えながら、ガリッと舌を噛み切る。口内にとろりと広がる血の匂いと暖かい液体を、ゆっくりとアルの口の中へと流して行く。
「…ん、ふ…」
コクンと飲み込むのを確認し、動かない舌を絡め取り、噛み切った舌が治る度にまた噛み切り、血を流し込み続け、ゆっくりと口付けを深める。
「・・・・・・は、ぁ…」
息継ぎをし、また口付ける。と、
「・・・ん…」
アルの睫が小さく震える。そして、
「ん、ふ…ぁ…」
ぼんやりと開く翡翠の瞳。いつもと違い、無防備な顔の幼げな表情。おれの、好きな顔。
「? ・・・しぃ、ふ…?」
寝惚けたような舌っ足らずな声がおれを呼ぶ。
「ん。おはよ…アル」
アルが覚醒きる前にチュッと軽く口付ける。と、とろんと落ちる瞼。そして、
「っ!?」
パッと開く翡翠。残念。覚醒きた。
「・・・おい、なにしてンだ?シーフ」
低い声が言う。不機嫌に。
「…アルを、起こした?」
「退けやこのアホっ!?」
と、ベッドから蹴落とされた。
ちゃんと目を覚ましたアルは、いつものアル。寝惚けたアルは、非常に可愛い。多分、おれとレオ兄、養父と養母しか知らないだろう。ちょっと兄貴とリリアンに優越感。
「・・・ふゎ…」
身を起こしたアルの欠伸。下ろしたままの月色の髪が、さらりと揺れる。
「…よく、寝た?」
「そこそこ」
ぷいとそっぽを向いての返事。
「もっと、要る?」
「・・・」
迷うように揺れる翡翠。だから、ベッドに腰掛け、そっとアルの頬へ手を添えて…
「ん…」
精気を分けながら、チュッと軽く触れるだけのキス。嫌がる様子はない。
「血と、どっちがいい?」
「・・・じゃあ、手首」
「首からでも、いい…」
「…多分、加減できないぞ?」
「ん。いい。吸血、して?」
アルの翡翠の瞳が、薄赤の燐光を帯びる。普段よりも艶めいた表情が、ゆっくりと寄せられ・・・首筋を吐息が擽る。柔らかい唇が首元に落ち、血管を探るように彷徨い・・・
「っ…は、ぁ・・・アルっ…」
牙が、皮膚を突き破る。痛いのは、最初だけ。すぐに気持ち悦くなる。同時に、どっと精気が吸われて行く。容赦の無いエナジードレイン。
ちょっと嬉しい。アルが遠慮も配慮も容赦も無く牙を突き立て、エナジードレインをするのは三人だけ。養母とレオ兄とおれの三人。しかも、首への吸血は相思相愛な意味を持つ行為。
これは、魔力が強くて濃い父や兄貴にはできなくて、アルがリリアンには絶対にしないこと。
やはり、アルをおれで満たすのは、気分が悦い。
少々難点があるとすれば、おれもアルの血が欲しくなるところ・・・だろうか?
ヴァンパイアは愛するモノの血を欲し、愛するモノを自分の血で満たしたいという欲望を持つ因果な種族。これは、本能に根差した欲求だ。
兄貴みたいに、アルの意志を無視するのは厭だから我慢する。けど・・・ふと、思った。
…おれやアルが、『それ』を我慢できるのは、両方共母方の血が濃いからなのかもしれない。ヴァンパイアとしての本能が、純血の兄貴に比べると、薄いのかもしれない…と。
「・・・はぁ…」
段々、くらくら…して、来た。
感覚的に、血はそんなに減っていない。けれど、精気を…吸われ、過ぎた…よう、だ。
ああ…眠く、なって・・・
と、アマラに言われて来てみれば…
シーフが炭を燃え散らしていた。
そして、なにをしているかと聞くと、飯だと言う意味不明な答えが返って来た。
思わず、雪路を見やる。
「おい、雪路」
「なーに? ひゆう」
「いや、なにというか…なんだ?あれ」
「御厨に聞かれてもねー?」
「お前に聞くしかねぇだろ、雪路」
「…おいシーフ、なにしてンだ?お前」
「? …ご飯?」
「や、火焚くのが飯になンのか?」
「ん。…おれ、半分イフリート・・・火、とか…熱? で、栄養補給…可能」
「ああ、そういえばアマラがシーフ君のこと、イフリートだとか言ってたけど…そういうこと」
「?」
「そう言や、少しおかしいな。火ぃ焚いてた筈なのに、全く暑くない」
それに、あれだけ激しく燃えた後の灰に触れても、灰に熱を全く感じないのだ。普通なら、火傷してもおかしくない筈の温度だろうに。そして、
「…むしろ、少し気温下がってねぇか?」
「え?」
「あ、そういえば…少し肌寒いかも」
自然、シーフへと視線が集まる。
「…ん。熱、奪った…ご馳走、さま?」
「…美味しいの?」
「? ・・・空気…は、美味しい…から、吸う?」
「え? いや、…呼吸はしないと死ぬ…でしょ?」
「ん…」
「え? は?」
質問に質問で返され、たじろぐカイル。
とりあえず、仕切り直そう。
「・・・あ~、シーフ?」
「?」
「アルは?」
「…まだ、寝てる。・・・起こす?」
「あ?いや、寝てんなら」
起こさなくていい、そう言い終える前にシーフがアルの部屋の方へと歩いて行った。
※※※※※※※※※※※※※※※
眠るアルを見下ろす。
微かな呼吸の深い眠り。
金のような、銀のような柔らかく淡い色合いの月色の髪。閉じた瞳を彩る長い睫も同じ色。通った鼻筋。滑らかな頬。白い肌に、薄く色付く唇。眠るアルは、相変わらず綺麗。
でも、起こすのも好き。
普段おれは、起こされる方。だから、アルを起こすのは久し振り。楽しみ。
白い頬にそっと触れ、耳元に囁く。
「…アル、起きて」
勿論、起きる気配はしない。だから、起こす。
薄く色付く唇を開かせ、そっと口付ける。柔らかい唇を割って入り、ゆるゆると精気を分け与えながら、ガリッと舌を噛み切る。口内にとろりと広がる血の匂いと暖かい液体を、ゆっくりとアルの口の中へと流して行く。
「…ん、ふ…」
コクンと飲み込むのを確認し、動かない舌を絡め取り、噛み切った舌が治る度にまた噛み切り、血を流し込み続け、ゆっくりと口付けを深める。
「・・・・・・は、ぁ…」
息継ぎをし、また口付ける。と、
「・・・ん…」
アルの睫が小さく震える。そして、
「ん、ふ…ぁ…」
ぼんやりと開く翡翠の瞳。いつもと違い、無防備な顔の幼げな表情。おれの、好きな顔。
「? ・・・しぃ、ふ…?」
寝惚けたような舌っ足らずな声がおれを呼ぶ。
「ん。おはよ…アル」
アルが覚醒きる前にチュッと軽く口付ける。と、とろんと落ちる瞼。そして、
「っ!?」
パッと開く翡翠。残念。覚醒きた。
「・・・おい、なにしてンだ?シーフ」
低い声が言う。不機嫌に。
「…アルを、起こした?」
「退けやこのアホっ!?」
と、ベッドから蹴落とされた。
ちゃんと目を覚ましたアルは、いつものアル。寝惚けたアルは、非常に可愛い。多分、おれとレオ兄、養父と養母しか知らないだろう。ちょっと兄貴とリリアンに優越感。
「・・・ふゎ…」
身を起こしたアルの欠伸。下ろしたままの月色の髪が、さらりと揺れる。
「…よく、寝た?」
「そこそこ」
ぷいとそっぽを向いての返事。
「もっと、要る?」
「・・・」
迷うように揺れる翡翠。だから、ベッドに腰掛け、そっとアルの頬へ手を添えて…
「ん…」
精気を分けながら、チュッと軽く触れるだけのキス。嫌がる様子はない。
「血と、どっちがいい?」
「・・・じゃあ、手首」
「首からでも、いい…」
「…多分、加減できないぞ?」
「ん。いい。吸血、して?」
アルの翡翠の瞳が、薄赤の燐光を帯びる。普段よりも艶めいた表情が、ゆっくりと寄せられ・・・首筋を吐息が擽る。柔らかい唇が首元に落ち、血管を探るように彷徨い・・・
「っ…は、ぁ・・・アルっ…」
牙が、皮膚を突き破る。痛いのは、最初だけ。すぐに気持ち悦くなる。同時に、どっと精気が吸われて行く。容赦の無いエナジードレイン。
ちょっと嬉しい。アルが遠慮も配慮も容赦も無く牙を突き立て、エナジードレインをするのは三人だけ。養母とレオ兄とおれの三人。しかも、首への吸血は相思相愛な意味を持つ行為。
これは、魔力が強くて濃い父や兄貴にはできなくて、アルがリリアンには絶対にしないこと。
やはり、アルをおれで満たすのは、気分が悦い。
少々難点があるとすれば、おれもアルの血が欲しくなるところ・・・だろうか?
ヴァンパイアは愛するモノの血を欲し、愛するモノを自分の血で満たしたいという欲望を持つ因果な種族。これは、本能に根差した欲求だ。
兄貴みたいに、アルの意志を無視するのは厭だから我慢する。けど・・・ふと、思った。
…おれやアルが、『それ』を我慢できるのは、両方共母方の血が濃いからなのかもしれない。ヴァンパイアとしての本能が、純血の兄貴に比べると、薄いのかもしれない…と。
「・・・はぁ…」
段々、くらくら…して、来た。
感覚的に、血はそんなに減っていない。けれど、精気を…吸われ、過ぎた…よう、だ。
ああ…眠く、なって・・・
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