ヴァンパイアハーフだが、血統に問題アリっ!?

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
54 / 179
ヴァンパイア編。

49.どっちが冒涜者だか? 全く・・・

しおりを挟む
 ・・・ヤバい。

 そろそろ本格的に金欠だ。財布が、心許ない。

 買い食いとかができない。

 まあ、結構金になる物は持ってるよ?
 気軽に売れない程・・・高価な物ばかりをさ?

 宝石や貴金属類、ASブランドの刀剣類、雛型のゼロ番などの貴重品・・・まともに売れる物が無い。いや、元から売るつもりも無いんだけどね?

 最低額何百万とかの宝石で買い物は普通に無理。

 血液のストックも無いと、不貞寝ふてねもできないんだよねー。起きたとき困るしさ? まさか、血か精気を・・・って、船のヒト達襲うワケにも行かないだろう。

 なんかいい獲物いないかな?と、ビンゴブックを捲る。が、この地方は聖女信仰が強い土地柄か、強盗や殺人などの凶悪犯は少ない。人外の犯罪者も、この地域には少ない。
 代わりに、詐欺やら怪しい宗教が多い。

「はぁ・・・」

 奇跡や、治癒? 聖女の再来? 病気の治る水? お布施がどうたら・・・とかさ?

 聖女の名を悪用する詐欺師共の横行・・・

 彼女リュースの娘としては、全く面白くねぇ。

※※※※※※※※※※※※※※※

 ということで、資金調達がてら怪しい宗教団体へアタックしに来てみたワケだ。

 まずはここ。

 なんだっけ? 祈るだけで救われる・・・だとか、死期の心を安らかに? という団体。

 祈るのはいいけど、金取るってどうよ? しかも、なに? 多く寄付したら、聖女の加護? 意味不明なんだけど? ということで、行ってみよー!

 無論、最初はこっそりと潜入したよ?
 けど、八つ当りも兼ねてるからさ。
 ここ最近の鬱憤うっぷんを晴らさせてもらおうと、来るなら来い! で、バッタバッタと警備の人間やら狂信者共を薙ぎ倒している最中だ。

「よ、っと」

 通路の真ん中。オレを殺す気で振るわれた槍を、壁に向かって跳んで避ける。更に壁を蹴り、身体を捻って天井を足場に、空中でくるんと前転。

「なっ!?」

 警備兵の肩へ踵落とし。

「ぐっ、がァァっ!?!?」

 ゴキリと鈍い音。肩の骨が砕けたようだ。
 よし、進もう。

 勿論、手加減はしている。
 まだ、誰も殺していない。せいぜいが骨折程度。

 ちなみに、服装は目立たないよう黒尽くめのアサシンスタイル。髪の毛もまとめて黒いキャスケットの中に突っ込んでいる。靴も、消音の軽量仕様に交換して来た。
 いつものブーツよりも少し速く走れる。金属を仕込んでいることは変わらないが、軽量仕様なので殺傷力は低めだ。
 あと、変な仮面。一応、顔バレ防止の為に黒いアイマスク的なやつを装備した。
 ぶっちゃけ、かなりの不審人物だと思う。
 まあ、仕方ないけどさ。

 目標は、教祖的な中心人物と、宝物庫。
 中心人物を潰すついでに金品を頂く予定だ。
 一応、被害者の人達に返すべきだとは思うけどさ? まあ、団体を潰す手間賃ってやつ。
 悪いとは思うけど、オレも慈善じゃないんだ。現金も欲しいし、八つ当りも込みだからね。

「止まれっ! ここは通さんぞっ!!」

 通路を抜けると、少し開けた場所。広間か? に辿り着いた。剣を持った人間が五人。少なくね?

 とりあえず、剣を壊すか。ソードブレイカーとマインゴーシュを取り出す。

 ソードブレイカーとは、その名前の通りに剣を破壊する為の剣のことだ。
 刃が、根本近くから二つか三つ程に枝分かれした特殊な形状。その枝分かれした根本で剣を受け止め、それを梃子てこの原理でパキッと折る為の剣。武器破壊の為の武器となる。一応、普通に剣としても使えるよ? 少し見た目がゴツくて、扱いにくいけど。
 オレのこれは、二つに枝分かれしたやつ。

 マインゴーシュというのは、左手という意味を持つ短い短剣のこと。刀身が三十センチも無いが、柄に手首をカバーする覆いが付いていたりする。
 これはどちらかというと、サブウェポン的な扱いが多いかな?右手で長剣を、左手にマインゴーシュを構えるスタイルが多い。
 二刀流のときに、盾代わりにしたりね?
 サブや盾扱いで短いけど、頑丈で切れ味もいい。リーチの短さに油断していると、マインゴーシュにグサリ・・・ということも少なくない。
 実は、長剣をサブに。マインゴーシュをトドメの本命に使う剣士がいたりもするからね。

 まあ、今回は切れ味を披露する気は無いけどね?
 ソードブレイカーを左手に、マインゴーシュを右手に構える。左手という意味だからって、右で使えないことはないからさ?

 そして、ダッシュ。

 剣が振るわれる前に、ソードブレイカーに剣を挟み込み、グッと手首を返し、相手の剣を水平に。そして、マインゴーシュの柄を叩き込む。

 はい、一人目。

 パキンっと澄んだ音を起てて呆気なくへし折れる剣。ご愁傷さまだ。
 剣は、露骨に品質での差が出るからな。ま、品質の差をものともしない達人なら別だが・・・そんな奴は非常に少ない。
 驚き顔で固まり、隙だらけになった警備兵の首へと回し蹴り。意識を刈り取る。

「なっ!? や、やれっ!!」

 うん。遅いから。
 振るわれた剣をギンっとソードブレイカーで受け止め、今度は剣を折らずに腕を振り抜いて相手を振り回し、別の警備兵へとぶつける。

「「うぐっ!?」」

 はい、二人脱落。

 まあ、ヴァンパイアとしてはかなり非力な方で、最近負けっ放しな感じだけど・・・人間の男程度の相手なら、膂力では負けない。一応、鍛えている人間の男以上の腕力はあるんだ。

 人外には怪力なヒトが多いから、その程度あんまり意味無いし、全く自慢にならないけどね・・・

 そして、またダッシュ。

 剣を掻い潜り、相手の懐へ。正拳ならぬ、マインゴーシュの手首カバーをガツンと顎へ叩き込む。

 はい、残りは一人。

「おのれ、こうなれば刺し違えてでも!!」

 なーんかこの人間、軽く目ぇイっちゃってンだよね。どうするかなぁ?

 ガギン! と、ソードブレイカーで剣を受け止める。と、折られることを警戒したのだろう。刃の間に挟み込む前に、ざっと剣を退いて離れて行く相手。ヒットアンドアウェイか。

 …割と、剣を使えるようだしさ?

 武力を持つ狂信者って怖いんだよねー。
 ということで、腕を潰そう。

 ソードブレイカーを仕舞い、ナイフを投げる。

「ふんっ、こんなものっ…」

 顔面を狙ったナイフ二本が弾かれ、

「ぅぐっ!?」

 両足を狙ったナイフはヒット。

 残念。ナイフは四本でした。
 次いで、絲でナイフを引き戻す。と、同時に体勢を崩した相手に向かってダッシュ。

「ぐっ、がっ!?」

 擦れ違い様にマインゴーシュを振るい、スパッと両腕の腱を斬り、返すその柄で後頭部をガツン! 倒れる相手。とろりと床を流れる血。

「ふぅ・・・」

 おっさんの血に興味は無い。が、失血死されても後味が悪い。仕方ないから、止血しよう。両腕、両足を拘束がてらにぐるぐると止血。

 あとは放置しても構わないだろう。

 さて、行くか。

 広間を抜けると、頑丈な扉。
 押すと、鍵が掛かっているようで開かない。

 鍵穴に水を入れ、余分な水を抜いて鍵の形に凍らせる。合鍵の完成。それを回すとガチャリ。
 鍵の外れた扉を開く。

 中は、礼拝堂のような場所。

「なんの用でしょうか。冒涜者よ」

 よく通る低い声が響いた。
 白を基調とした、如何にもな教祖の格好。

 どっちが冒涜者だか? 全く・・・

「お前が教祖か?」
「我が教団の教祖はの聖女様。わたしが教祖などとは、畏れ多い。あなたの目的はなんですか? もしも俗世の浅ましき・・・」

 なんか言ってンな。よくわからんことを。

 聖女は神が遣わした奇跡…云々うんぬん

 いや、それ全く違うから。
 手前ぇらが勝手に祭り上げてンな、オレの愛しいヒトだから。その、愛しいヒトの名前を騙《かた》って、金儲けに利用とか? ンなのゆるすワケねぇだろ。

「黙れ?」

 アイマスクを外し、教祖へ視線を向ける。バッと距離を詰め、

「そ、の顔はっ・・・聖女様っ!?」

 驚愕の顔の、その瞳を覗き込む。
 そして、支配する。

「他人をおとしいれようとしたり、あざむこうとすると、舌が動かなくなる」

 強く、深く暗示を掛ける。
 こういう、弁舌を武器にするタイプは、それを封じられるとなにもできなくなる。
 ついでに、宝物庫の場所を聞く。
 アイマスクを直して、と。

「つか、祈るだけで救われる筈ないだろ。本気で他人を救いたいなら、医者にでもなれっての。さあ、眠れ。起きたら、オレの顔を忘れろ」

 パチン、と指を鳴らすと倒れる教祖。

 さ、宝物庫へ行こうっと。

※※※※※※※※※※※※※※※

 そして、やって来た宝物庫。

「あれ? アルゥラ」

 なんかいたしっ!?!? とりあえず、

「死ね!」
「ハッハッハ、アルゥラも盗賊か? お揃いだな?」

 投げたナイフが軽く避けられる。笑顔でっ! 絲で引き寄せるも、またサッと避けられる。

「それにしてもアルゥラ、泥棒は静かに、這入はいる場所の連中に気付かれずにこっそりやるもんだぜ? 相変わらずうっかりさんだな? アルゥラは。まあ、そういうところも可愛いけどなっ!」

 蘇芳の瞳がパチンとウインク。

 ああ゛、殺してぇっ!

 つか、オレは教団潰しに来たんだから、騒ぎ起こしてなんぼだってのっ!

「そんなうっかりさんなアルゥラを、俺が確りサポートして外までエスコートするから安心してくれ。大船に乗ったつもりで任せろ!」

 胸を張って差し出される褐色の手の平。が、

「うをっ!」

 突き刺そうとしたマインゴーシュを避ける。

「チッ…」
「ふっ、そう照れなくてもいいんだぜ? 大丈夫、アルゥラの愛はちゃんと俺に伝わってるからさ」

 バッと両手を広げ、役者張りの恥ずかしい台詞。

 もう本っ当、ヤだ。
 コイツ早く死なねーかな?

 ウザい馬鹿を無視して、脱出しよう・・・としたら、付いて来られたっ!?

「待てよ、アルゥラ。盗賊の先輩として、エスコートしてやる。無論、感謝は要らないぜ? だから、愛を籠めてトール♥️って呼んでくださいっ! 是非ともっ、ハートマークは忘れずにっ!」
「・・・死ね」
「ふっ、俺はな? アルゥラ。アルゥラからトール♥️って、ハートマークで呼んでもらって、いちゃラブな感じになるまでは死ねないんだっ!!」

 本気で頭悪い感じのことを、真顔で主調する馬鹿。しかもナイフを避けながら。

 なんでオレ、こんな馬鹿をれないんだ?

 こんな、馬鹿を・・・

「さあ、俺の胸に飛び込んでおいで!」

 気持ち悪い。

「消えろっ!」

 こうして、更なる八つ当りに拠って・・・
 この夜は、複数の宗教団体を壊滅させた。

「俺の華麗な怪盗振り、格好よかっただろ? 惚れてもいいんだぜ? アルゥラ」
「消え失せろっ、変態野郎がっ!?」
「ハッハッハ、またな? アルゥラ」

※※※※※※※※※※※※※※※

 数ヵ月後、とある宗教団体の施設に、無償で怪我や病気を治療する病院が建てられたという。

 宗教団体の施設だった為、周辺住人は大層怪しんだが、意外にもまともな治療がされ、しかも無償。その為、この病院は後に貧民の救いの場として活躍したという。

 なんでも、ある朝教祖が目覚めたら、神の啓示が頭に響いたとか・・・詳細は不明。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...