ヴァンパイアハーフだが、血統に問題アリっ!?

月白ヤトヒコ

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ヴァンパイア編。

50.さあ、数百年振りの狩りを開始しようっ!

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 奴が目覚めたことは判っていた。が、その足取りはようとして知れず・・・だった。だが、とうとう奴の足取りを掴んだとの連絡が上がって来た。

 緩く波打つ艶やかな黒髪に金色の瞳。白皙の美貌を持つ、妖艷な美少年の目撃情報。
 そして同時に、その近辺で吸血鬼を灰も残さず燃やし尽くした業火の発生。

 間違いない。奴だ。

 子殺しの始祖・・・イリヤ。

 奴が現れたその場所を聞いて、頭が痛くなった。

 その場所は、アレクがいた場所だったからだ。

「・・・どう、思う。スティング」
「さぁて? 偶然、だと思いてぇとこだが、そんな楽観視できるような奴でもねぇだろ」
「・・・」

 スティングの言葉に、強く拳を握り締める。

 それは、奴がアレクを追っている・・・ということに、他ならないのだから。

 意図的にか、無意識にか・・・

 奴には、アレクが生きていることを徹底的に隠した。だから、意図的である可能性は低い。
 低いが・・・

 アレクを戻す、か?
 それとも、このまま様子を見るか・・・

 できれば手元に置いて、自分で守りたい。
 だが、それはできない。
 俺の手元に置くことは、奴とアレクの遭遇確率を高めるだけだ。それは絶対に避けたい。

 アレクを、奴と遭わせて堪るか。

 血に染まる月色の髪など、思い出したくもない。アレクの、呼吸と心臓が止まった瞬間など・・・

「・・・奴は、どう動くか・・・」
「なんで奴は、これまで動かなかったよ? いつもなら、もっと早い段階で動いてただろ」

 スティングが言う。

 それは俺も思っていたことだ。
 今回の奴は、動きがいつもと違う。
 アレクの後を追っているのか、違うのか・・・

「・・・アレクの動向は?」
「アルは今、聖女がいた街から動いてません」

 レオンハルトが答えた。

「なぜ、動かない?」

 一週間程前に、あの街へ入ったというが・・・

 あの街は、アレクの母親…リュースと俺が出逢った…というか、リュースを拐った場所。
 アマンダという聖女として、リュースが軟禁され、人間の権力者共に酷使されていた地。
 アレクにとっても、面白い場所ではないだろう。

「そう言うなって。船の進路を決めンな、船の連中だろ。アルが口出しはできねぇんじゃねぇか?」
「だとしても、自分で移動はできる筈だ」
「俺に言うな。あ、そう言や、アルから消してほしい奴がいるって連絡来てたぜ?」
「? ・・・奴、ではないよな?」

 判ってはいるが、確認する。

「応。全く別の奴だな。エレイスの抹殺リストの上位に入れてくれってよ」
「どんな奴だ?」
「名乗っている名前はトール。自称ギャンブラー。特徴、ストレートの紫がかった漆黒の髪。くら蘇芳すおうの瞳。垂れ目気味で、右目の下に泣き黒子ぼくろ。褐色の肌。ジプシー系。百八十以上の長身の男。花街の受けはかなり良い。度を越した女好き。人間ではない。種族不明。今すぐ抹殺リスト上位に望む。迅速な抹殺を希望する。アレクシア・・・以上です」

 レオンハルトが手紙を読み上げる。

「・・・なんだ? それは」
「だから、俺に訊くなよ? ローレル」
「というか、アレクシア…と書かれていることが問題では? いつもの手紙はアル、ですから」

 レオンハルトの指摘。

「アルがそう言って来たのは初めてだな? 愚息」
「ああ、問題になりそうな連中は、そもそもアルには近付けなかったからな」

 アレク自身が、アレクシアと名乗ることはほぼ無い。ということは、それに相当する事態ということだろう。抹殺を望む、か・・・

 アレクとアダマスとの関係に関して、なんらかの情報が漏れた…と、考えるべきか? だとするなら、アレクシアとの表記も頷ける。

「・・・スティング。動かせる者は?」
「アルが殺せなかった奴…となると、それなりに実力がある奴を出さねぇといけねぇンだが・・・」

 アレクは弱い。それは事実だ。だが、決してアレクが無能ということではない。

 アレクは弱いが、千年を生きたアンデッドの吸血鬼を、単独で狩れるだけの実力は備えている。
 おそらく、装備を整えて手段を・・・選ばなければ・・・・・・、傲った純血種の若いヴァンパイアを殺すことも可能だろう。
 アレクは弱いからこそ、暗殺技術が高い。そういう風に、スティングが教育した。だが、地力が低い為、アレクの攻撃が通らない相手がいることも事実。暗殺技術が高くとも、その攻撃力自体が高いワケではないのだ。
 暗殺は、基本的には一撃で仕留めるものだ。その一撃を外したり、相手に防がれてしまうと弱い。

 この狼達が規格外なだけだ。

「無理だな。今、俺とレオンハルトとクレアは動けねぇ。その下の連中は、奴の捜索。ンで、奴が稼働中ンときは、ヴァンパイア、吸血鬼の使い勝手のいい連中は動かせねぇ。下手に動かすと、消される。実力の無い連中も同様。奴が稼働中は、使えンな少数精鋭のみ。毎度ながら、他に手ぇ回す余裕は無ぇよ」
「やはりそうか・・・」

 ヴァンパイアやアンデッドの吸血鬼は総じて能力が高い。エレイスの仕事には欠かせない人材なのだが、周知の通り、奴は子殺しの始祖。
 基本的には自分の血筋のモノしか殺さないが、それも気分次第。当てにはならないだろう。

 奴の活動再開に伴い、奴の血筋のモノ達には避難勧告を出している。だから、報告にあった、消された吸血鬼達は、全て奴の血筋ではない筈なのだ。
 気紛れにヴァンパイアや吸血鬼の命を刈り取る奴は、ヴァンパイアの天敵とも言える存在だ。

 奴の血筋ではないと言っても、殺されないとは限らない。それは気休め程度にしかならない。
 今回のことが、それを証明している。

「アルには悪いが、少し我慢してもらう」
「わかった」
「・・・」
「不満そうだな? 愚息」
「いつまで、アルを待たせるんだ?」
「あ? ンなの、奴を仕留めるか、奴が活動を停止するまでに決まってンだろ。俺らの働き次第だ。寝言言ってンじゃねぇぞ? 愚息が」
「なら、さっさと仕留めてやる」

 レオンハルトの緑灰色の瞳がギラリと光る。

 そう簡単に仕留められたら、数千年も俺ら子孫は奴に苦しめられていない。やれやれと、苦笑するスティングと目が合った。

「装備はどうなっている?」
「ああ、ビアンカの加護を付与している」

 ビアンカは、シーフェイドの母親。イフリータという炎の聖霊だ。彼女の加護を得ることで、ある程度の炎熱耐性を付与することができる。
 尤も、ビアンカの加護も、あの糞爺イリヤの業火にどこまで耐えられるかは不明だが・・・

「ンじゃ、装備が整い次第、出るぞ」
「わかった」
「呉々も、無茶はしないように」
「応」
「はい」
「ま、それはそれでいいンだがよ。フェンネルの方はどうすンだ? クレアも動くぜ?」
「リリアナイトの船にでも放り込んでおくさ」
「リリアン、納得しますか?」
「フェンネルがアレクに逢いに行くのを邪魔しろとでも言っておく。そうすれば、フェンネルを船に留めておくだろう? リリアナイトは」

 海上の、人魚の領域テリトリーである船の中なら、さすがの奴も手出しはできない筈だ。

「では、奴の追跡を頼む」
「応。手前ぇも装備整えてろ」
「ああ。存分に、奴を追え」
「ククッ・・・」
「アルの、為に・・・」

 爛々と光る深緑と緑灰色の瞳。
 たぎる狼を、野に放とう。

「わたしも後で合流する。そして、この手で必ず、奴を殺してやる・・・」

 さあ、数百年振りの狩りを開始しようっ!
 狩るか狩られるか、互いのどちらかが死ぬまで永遠とわに終わらぬ狩りをっ!!
 獲物は、我らが始まりの真祖にして、我らに仇なす子殺しの始祖・・・イリヤだっ!!!
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