ヴァンパイアハーフだが、血統に問題アリっ!?

月白ヤトヒコ

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ヴァンパイア編。

128.随分と最悪な目覚めもあったものだ。

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 走った閃光・・・雷、がっ!?

 顔面に突き刺さり、皮膚を焼き、眼球を、血液を沸騰させて蹂躙するっ!!!

「あ゛あ゛あ゛ぁぁァぁあアぁっ!?!?」

 脳髄が焼かれる激痛に、のたうち回る。

 雷、雷、雷・・・

 こっ、の……痛み、はっ!?!?

 早くっ、早く早く、再…生っ、をっ!?

 焼けた脳髄、脳幹、悩の再生・・・

 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・

「っ……っ!?!? ・・・・・・は、ぁぁ・・・」

 頭蓋が焼ける激痛と、自分の絶叫とで目を覚ますとは、随分と最悪な目覚めもあったものだ。

 なんか知らないけど、頭と顔面が焼かれたらしい。痛む顔面の再生を急ぐ。

「・・・ああ、クソっ…頭と顔面が痛い」

 掠れた声。その声を聞く耳も遠い。視界も悪い。くらくらと目眩めまいもする。

 火傷は治りが遅いんだ。痛いし、嫌になる。

 なんだっけ?なにがあった?

 僕は・・・?

 確か、ローレルとり合って・・・?

 ああ、記憶が飛んでる。繋がらない。

 次に見たら、絶対殺す。けど・・・

「今は、いつだ? そして、ここは?」

 戻って来た感覚で、辺りを見渡す。

 見覚えの無い場所。

 なにかの会場。

 潮の匂い。そして、一定の揺れと波の音。

 船の中か?なんで僕は、こんな場所にいる?

 そして、僕を警戒するようにナイフを構え、怪我でもしたのか、額を押さえている女がいる。

 その女から、胸糞の悪くなるローレルと、他種族の混ざった匂い。そして、僅かに漂っている、アークの匂い・・・・・・

 もしかして、これ・・のせいか?
 僕は、無意識にこれを追ってここへ・・・?

「ねぇ、君はなに?」

 その女の目の前に移動して、聞く。

「っ!?」

 ひるがえそうとしたナイフを持つ腕を掴んで止める。

「アレク様っ!?」

 叫んだのは、床に座り込む人魚。

 アレク?この女の名前か?

 その顔を隠すのは、額を押さえる手と長いプラチナブロンド。金のような、銀のような淡い色の髪。

「?」

 とても、見覚えのある色彩。そして・・・

「・・・君、混血だよね?」

 ローレルの匂い。混血。淡い月色の髪。女。

「顔を、見せろ」

 額を押さえる手を顔から引き剥がして、下からその顔を覗き込んだ。

「っ!?」

 あらわになったのは、翡翠・・に浮かぶ銀の瞳孔。

「・・・え? なん、で・・・?」

 僕は、これ・・色違い・・・を知っている。

 に浮かぶ銀の瞳孔。

 僕は、この顔・・・を知っている。

 幼いながらも、挑むように僕を見上げた顔。

 僕は、この匂いを知っている。

 道理で、アークの匂いがするワケだ。

 だってこれ・・は、昔アークが血を与えた・・・・・・・・・混血のガキなんだから。
 そしてその後、僕が血を与えた・・・・・・・んだから。

 アークと僕の血が、混ざった匂い。

 僕は、この混血を知っている。

「あ、ははっ・・・ハ、ハハハハハハハハっ!? 凄いっ!? 凄いよ、ローレルっ!? 本当に驚いたっ!? 絶対殺したと思っていたのに、まだ生きてたっ!? ずっと君を、僕から隠してたんだねっ!」

 あのとき、僕が壊したローレルの娘っ!!!

 なぜか、自然と吊り上がる口元。

 驚きと共に広がる、楽しい気分。

 ゴクリと、喉が鳴る。

「な、にをっ……」

 けれど、僕を睨む翡翠・・の瞳には、なぜか僕を知っている様子が見えない。

「? あれ? 覚えてないの? 僕のこと。あんなに痛め付けてやったのに・・・?」

 なんだろう・・・
 こう、そこはかとなく・・・
 胸がざわつくような・・・?

「クッ……」

 白い手が、額の方へ行こうとするのを阻止。

「ああ・・・もしかして、あのとき・・・・みたいに、また・・記憶が飛んでたりする?」

 それなら、納得だ。

「あ、の…と、き…?」
「やっぱり、覚えてないんだ?」

 ナイフを持つ腕を軽く引く。と、

「ぅ、ぐぁっ!?」

 ゴキン! 鈍い音を起ててその肩が外れ、だらりと力無く腕が垂れてカランとナイフが床に落ちた。

「相変わらず脆いな? 君は」
「アレク様っ!?!?」

 上がった悲鳴は、なぜか人魚のもの。

「アレク、か・・・君って、そんな名前だったんだね。知らなかったよ」

 それは、昔より幼くはないが、見慣れた・・・・苦痛に喘ぐ顔。変わったことと言えば、赤くない瞳・・・・・と、幼女から成長したことくらいだろうか?

「初めて逢ったときも、こうして・・・」
「放っ、触るなっ!?」

 蒼白な顔へ手を伸ばした。嫌がって逃げようとすることを、許さなかった。

「嫌っ、ヤだっ!?」

 震える声と、恐怖に見開く瞳を無視して・・・

「っ! ぃ、ゃ・・・ゃ、めて・・・」

 額へと手をかざし・・・

いやあァぁァあぁぁぁっ!?!?!?」

 絶叫を上げ、厭がって怯える君の、その本性を無理矢理引きり出して・・・それ・・を砕いた。

「僕は、君を壊したんだ」

 死に掛けの君に僕の血を与えたことで、自分の名前もわからなくなる程に壊れて、瞳の色が赤くなったから。

「ねぇ、思い出したかな?」

 そんな君に、気紛れに名前を付けたんだ。

「ルチル」

 赤を意味する言葉名前を。

※※※※※※※※※※※※※※※

「っ! この声はっ!? あっちかっ!?」

 アルゥラも、この船にいたのかっ!?

 そして一体、なにが起きているんだっ!?

「クソっ!? 早く行かないとっ!?」

__________

 寝ぼけイリヤ、漸くお目覚めです。
 寝ぼけてた方が色々とマシですが・・・

 ルチルは印欧語で赤を意味するそうです。

 そして次回、アルの正体を明かします。
 もう判っている方は、いつまで引っ張るんだよ?と思っていることでしょうが、もう少しお待ちください。
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