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過去編。
『待ってるから。逢いにきてくれるのを』
しおりを挟む※ヤンデレ回です。
__________
その日、気が遠くなる程に逢いたいと、ずっとずっと探して捜して探して捜して探して捜して……待ち望んでいた匂いを、漸く嗅いだ気がした。
だから――――
その匂いに惹かれて、慎重にその匂いの元へと距離を詰めて行った。
これで漸く、長い永い、追い掛けっこが終わるっ!? と、逸る鼓動を抑え付けて。
それなのに、そこにいたのは――――
アークじゃ、なかった。
胸の軋むような深い落胆。
知らない、見たことも無い、けれど胸糞の悪くなる、知っている匂いをさせている幼い娘。
金のような銀のような長い髪をした、混血の娘。瞳孔に覗く銀色が、アダマスのガキを想起させる。
アークを殺そうとしたモノの末裔。だというのに、その幼い娘からうっすらと漂うのは、僕が焦がれる程に愛するアークの血の匂い。
胸に渦巻くのは、深い落胆から変わった――――焼け付く程の強い憤怒と、嫉妬の感情。
僕がもう、長い永い間、ずっとずっとずっとずっとずっと追い掛けているのに、全然追い付けなくて、逢ってくれないアークの・・・っ!?!?!?
きょとんとした、なにもわかっていないという表情で僕を見上げる小さな娘。
その表情すらも、酷く癇に障る。
「誰?」
僕へと誰何する澄んだ高い声。
「・・・僕、だよ」
「・・・」
答えた僕をじっと見詰めるその瞳に宿るのは、不思議がるような色。
「アーク、じゃないよね?」
瞬間――――
「・・・」
スッと、血の気が引くほどの激情が胸を支配する。
なにも知らないクセにっ!!!! アークのことをなにも知らないクセにっ!!!!
僕の方がアークのことを知っているのにっ!?!?
アークじゃないとこの小娘に言われたことが、心底から苛立たしいっ!?
初見で僕達を見分けたモノはいなかったのに・・・
ああ、殺そう――――
と、そう思った。「他の種族には酷いことをしないで。イリヤ」そんなアークの言葉も、頭から抜け落ちる程に。
「ぃ、ゃ……やめ、て……」
気付けば、僕は――――
「厭ぁああああァァっ!?!?!?」
アークの血の匂いのする、泣き喚く小娘の角を、無理矢理引き摺り出していて――――
パキン、となにかの割れるような感触と高い音がしていた。開いた手の中には、アークの血でなにかの術式の描かれた角の欠片。
倒れた小娘の額から、だくだくと流れる熱い真紅。漂うのは、どれ程薄くとも、どんなになにが混ざろうとも、絶対に判るアークの血の匂い。
ビクビクと痙攣する……愛しい愛しい僕の半身の残り香を大切に掻き抱き、手の中の欠片に描かれたその血へとそっと口付ける。
口の中に広がるのは、懐かしくて愛おしくて堪らない……美味しい血の味。
酷く渇く喉を、小娘の中に混じった薄いアークの血で、誤魔化すように舐め啜る。
「ああ、アーク。アーク、アークアークアークアークアークアークアーク……なんで? なんでこんな小娘になんか、君の血を分けてあげたの? なんで? どうして? 僕に逢ってくれないの? どこにいるの? アーク……愛してるのに。愛、してる。の、に……」
こんなにも寂しいのに。なんで来てくれないの? どうして? なんで僕を一人にするの? なんで傍にいてくれないの?
足りない半身。酷くなる喉の渇き。
君がいれば、僕は他のなにも要らないのに。
君以外には、他のなにも求めたりしないのに。
君以外に、誰も要らないのに。
君以外に、誰も求めたりしないのに。
なんで? なんで? なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで――――――――
「僕、から……逃げる、の? アーク」
ぽつりと、落ちた声に……
だくだくと流れ行く熱い真紅。腕の中の重み。手の中の紅い模様の描かれた白い欠片。
逃げる、アーク。
僕の許へは来てくれない、アーク・・・
「ぁ、あ・・・ああ、そう、だ。そうだ。アークが・・・僕に逢いたく、ないなら、逢いに・・・来てもらえばいい、んだよね? ふふっ、あはは・・・はははははははははっ・・・」
今、腕の中に在るのは、アークの残り香……アークが血を分けた小娘だ。
アークに僕以外の大事なモノが存在するなんて、腸が煮え繰り返りそうな程に腹立たしい。
でも、だからこそ・・・
「ふふっ」
半ばから折った角に小娘の血でメッセージを残し、金のような銀のような淡い色の髪をザクリと断ち切り、風に乗せてばら撒く。
『待ってるから。逢いにきてくれるのを』
意識の無い混血の娘を抱き上げ、死なれると困ると思い至り、最低限の止血をして、その場を後にした。
アークが来てくれることを楽しみにして――――
「ああ、アーク。早く来てくれないと、僕は・・・君のお気に入りを、壊してしまうかもしれないよ?」
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