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番外。セディー視点10
しおりを挟むある日のこと。
その日は、明るいうちにネイトが僕の部屋に来た。
ぽかぽかとした日差しが窓から入って来て、その光に照らされたネイトの瞳がきらきらと薄茶から綺麗な明るい翠色に見えた。
「わぁ! ネイトの瞳は、お日様に透けると色が変わるんだね! 綺麗な翠色だよ♪」
「? なぁに? セディー」
ネイトは多分、僕の言った意味がわかってなくてきょとんと首を傾げた。ただ、僕が喜んでいることに対して、にっこりと笑ってくれた。
「お日様の光でネイトのおめめがね、おばあ様のおめめとおんなじ色になって、とっても綺麗だったんだよ」
「おばあしゃまのおめめ?」
「そう、おばあ様のおめめと一緒」
「えへへ」
ネイトが照れたように笑ったときだった。ガタン! と、いきなり音がした。
音の方を見ると、母が酷く怒ったような顔をして立っていた。母が立ち上がったときに椅子が倒れたようだった。
「出て行きなさい、ネイト」
なにが気に障ったのか、低い声でネイトを見下ろす強い怒りの籠ったブラウンの瞳。
「っ……」
ビクリと、ネイトは急に不機嫌になった母を不安そうに見上げる。
「母上?」
「セディーは今から休むの。あなたがいたらセディーが休めないのよ、ネイト。邪魔だから早く出て行きなさい。早く!」
「! セディー、ごめしゃい」
そう言って、泣きそうな顔でネイトは部屋を出て行ってしまった。
「ネイト!」
ついさっきまで、笑っていたのに。
ネイトは僕に謝る必要なんてなかった。なにも悪くない。僕がネイトと遊びたくて遊んでいただけ。
「母上っ、僕は!」
「だって、ネイトの相手をすると疲れるでしょう? これでゆっくりできるわ。よかったわね、セディー」
「……よく、ない。なんでっ、ネイトを……」
「なぁに? セディー、どうしたの?」
「僕は、ネイトと遊びたかったのに!」
「ネイトと遊んであげるだなんて、セディーは優しいのね。でも、無理はしなくていいのよ? 嫌なら嫌だって言っていいの」
にっこりと微笑む母。
なんで母が笑っているのかが、わからなかった。
そして、その日からネイトが外にいるのを見掛けると母は、
「外で遊べないセディーが可哀想だと思わないの?」
「どうしてそんな酷いことができるの?」
「ネイトはセディーのことを考えないのね」
「ネイトの健康を、セディーに分けてあげられればいいのに」
と、『セディーが可哀想』だと言ってネイトのやることなすことにケチを付け始めた。
ネイトは、優しいから・・・母のその言葉を真に受けて、悲しそうな顔で、
「ごめんなさい、おかあさま」
と従ってしまう。
ネイトは一緒に暮らしているうちに、家族というものがわかって来たようで、僕のことを兄だと認識してくれた。そのこと自体はとても嬉しいと思った。
けど、同時に――――
母を、『お母様』だと認識して、母に好かれないのは自分が『悪い子』なのだからと思っていることが、可哀想で仕方ない。
ネイトはとっても優しい子なのに・・・
悲しい顔はさせたくないのに。
ましてやそれが、『セディーの為』という『僕のせい』であるなら、尚更だ。
ネイトに酷いことを言わないでほしい、やめてほしいと幾ら母にお願いしても、
「セディーは優しいのね」
と、取り合ってもらえない。
僕の方がネイトに酷いことをしているのに、ネイトはいつも僕に優しくて・・・
そうやって母に邪険にされているうち、ネイトは段々お昼には僕のところに来なくなってしまった。
夜に来て――――
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