【完結】自称ヒロインさんが『逆ハー』を成功させた理由~ちなみにわたくしは、絶対に厭ですが~

月白ヤトヒコ

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せっかくだから、逆ハー大団円ルートでクリアしたいのにっ!

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 そして――――

 卒業も近付いたある日のこと。

「ちょっと、来なさいよ!」

 と、またしても彼女に声を掛けられました。というか、腕を掴まれて人気の無い場所へと引っ張られて行きます。

 わたくし、前回彼女が評判通りに魔術を磨く気がない方だと知って、かなりがっかりしたので、もう彼女に用は無いのですが。

「ふん、ここなら邪魔は入らないでしょ」

 そう足を止めたのは、立地が不便であまり人の立ち寄らない女性トイレでした。

 確かに。ここなら彼女に侍る男子生徒や勘違い野郎共が容易く入っては来られないでしょう。

 入って来たら、学園側へ通報しましょう。

 卒業間近ですが、女子トイレに侵入するという案件をやらかすような輩です。仕方ありません。キッパリと、家の方へも連絡をして卒業資格を取り消して頂きましょう。

「アンタ、シナリオガン無視してどういうつもり?」

 彼女が、据わった目でわたくしを睨みます。

「言っとくけど、とぼけないでよね! アンタが、ヒロインである可愛いあたしをイジメて、惨めに破滅するキャラなのは乙女ゲームの世界として決められてることなんだから!」

 と、なにやら電波なことを宣う自称ヒロインな彼女。

「はあ……仕方ないですね。わたくしが転生者なのは認めましょう。ですが、シナリオとやらは知りません」
「はあっ!?」
「貴方が仰りたいのは、わたくしにゲームシナリオに沿った行動をしろ、ということのようですが。そもそもわたくし、貴方の知っているという乙女ゲームを知りません。ゲームはRPGや落ちゲーしかしたことありませんので。なので、キャラに沿った行動をしろと言われても困ります」
「知らないって、そんなっ!?」
「言われても困ります。というか、折角魔法のあるファンタジー世界なのですから、わたくしは魔術の研究に専念したいのです。邪魔しないでくれません?」
「やっ、だから違くてっ、あたしの邪魔するのがアンタでしょ!」
「そんなことを言われても困ります。それより、貴方。治癒魔術は上達して? 擦り傷以上の傷も治せるようになりましたか? 部位欠損まで完治させられると、聖女になれるそうですよ?」
「そんなことじゃないしっ! つか、魔術カンストさせようと思ったら誰のシナリオも進められないじゃん! あたしにノーマルな聖女エンド迎えろって言うのっ!?」

 キッとわたくしを睨む瞳。

「まあ、その辺りのことは全くわかりませんが・・・そうですか」

 道理で。魔術科の授業で彼女を見ないワケですね。本来なら、とっくに総合科から転科している予定でしたのに。彼女にやる気が無く、ご自分の魔術を育てたいと思わなければ、魔術の上達は見込めませんよね。

 それも、光の治癒魔術だなんて繊細な魔術・・・幾ら素養があろうとも、宝の持ち腐れですね。

「せっかくだから、逆ハー大団円ルートでクリアしたいのにっ! アンタがあたしをイジメないせいで、シナリオが進まないんだけど!」

 どうやら彼女は、逆ハー……逆ハーレムを狙っているようですね。

 そのシナリオでクリアするには、わたくしに虐められる必要がある、と。そう思って、わたくしに文句を言いに来たようです。

 普通は、隠しルートなどは何度も周回しなければ辿り着けないと思うのですが・・・

「大丈夫だと思いますよ? あなたの言うゲームのシナリオはわかりませんが、おそらく『逆ハーレム』というのは達成できると思います」
「え? そんなことできるのっ!?」
「ええ。おそらく、貴方は……」
「そうならそうと早く言ってよね! もう、アンタなんかに絡んで損したじゃない!」

 と、わたくしの話を聞かずに彼女は去って行きました。

 逆ハー……というよりは――――

❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅

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