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こういう話はもっと怖がれっての。
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大通りを見渡せる場所。
「ったく、遅ぇンだよ。チビが」
待ち合わせ到着で早速噛み付かれる。
「そうか?時間の指定はなかったぞ」
「あ?昼前っつっただろがよ?昼前」
「太陽はまだ、真上じゃない」
「っるっせぇな。俺待たせンな。チビが」
この程度はレイニーの挨拶みたいなもの。聞き流せばとうということはない。
「早く来たって暇なだけだろ」
「だから、手前ぇがなかなか来ねぇから俺が暇してたンだっての」
「はいはい」
とはいえ、レイニーよりも早く来てたら来てたで、「ンな面したガキが一人で同じ場所に長時間うろちょろしてンじゃねぇ」とか言うんだろうし…全方位に悪態を吐かずにいられないというのも、なかなか面倒だと思う。
ちなみに、ンな面というのは、綺麗な顔という意味だ。昨日の子は…あの顔は別格だが、オレは観賞に耐えうる顔をしているらしい。あと、ホリィも。
ホリィは、綺麗がちょっと崩れた感じの愛嬌が可愛い系らしい。
オレは綺麗系だそうだ。
ま、顔が良くて得したことはほぼ無いが。
「さっさと見ろよ」
「んー」
レイニーに促され、昼時で人通りの多くなった大通りを見下ろす。
「・・・あっちから歩いて来る労働者風の二人組と、角で酒持ってる奴、道に座ってる浮浪者も、多分ヤバい人」
普通の人に紛れているヤバい人を、なんとなく見分けることができる。
一応、身寄りの無い孤児の必須スキルだが、うちの中では多分、特にレイニーとオレがそういうことに敏感なんだと思う。
レイニーは、三歳くらいで院長に拾われたらしい。
土砂降りの雨の中、それもかなり酷い状態で。
殴られて痣だらけ、そして栄養失調で痩せた身体。昏い瞳で言葉も上手く話せなかったという。
オマケに、名前まで無かったらしい。
虐待と育児放棄。
およそ三歳にしてゴミを漁っていた子供は、その場で院長に拾われ、土砂降りの雨にちなんでレイニーと名付けられたという。
そんなレイニーは、他人の悪意と害意に敏感だ。危なそうな奴も、なんとなく判るという。
オレもまあ、虐待されたからな。
勿論、家でや院長にではない。
数年前まで、ババアが世話している女達の中に質の悪い…というか、ガチでヤバい女がいた。
小さい頃、その女にねちねちといびられたのだ。あの女は首を絞めるのが好きで…一度、マジで死にかけた。
呼吸が止まって息を吹き返さないオレに、その女は半狂乱になって騒ぎを起こしたらしい。
別のねーちゃんに人工呼吸をされて息を吹き返したが、その騒ぎで虐待が発覚。それでその女は、ババアのところを追い出された。
以来、オレもヤバい奴がなんとなく判るようになった。
全く以て自慢できない経緯だ。
スノウ以外はあのことを、みんな知っているし。
「チッ…やっぱ増えてやがるか。あの高利貸し、結構な因業爺だったからな」
レイニーの舌打ち。
「一応、警官も増えてんじゃね?」
「まあな」
「…どっちも捜査中ってやつ?」
殺人事件の。
「…どっちも動いてやがるクセに、まだなんもわかってねぇらしいぜ?普通なら、とっくに参考人くらい見付けてねぇとおかしいンだ。街の人間…堅気の奴なら、警察に。裏の奴なら、犯人は殺されても文句は言えねぇ。それが嫌なら、警察に保護を求める筈だ。それなのに、両方が探しているにも関わらず、まだ情報さえ流れてねぇ。誰かが庇っているか…」
レイニーは言う。
掏摸師だけあって、横の繋がりがあるのだろう。ちなみに、レイニーが掏摸師だと知っているのはオレとホリィだけ。そして、ホリィが美人局をしているのを知っているのも、オレとレイニーだけだ。
他の兄妹は、レイニーとホリィがそれぞれ便利屋をしていると思っている。
あまり家から出ないウェンとチビ共に無駄に心配を掛ける必要もないからな。
あの高利貸しは、かなりあくどいこともしていたようだ。死んで喜ぶ者は多かったが、裏では困る者も少なからずいたらしい。
「庇っているにしても、そういうきな臭い話はどこからか流れて来る筈だが…それも流れねぇ程の箝口令でも敷かれてンのか?ま、高利貸しと犬食いの浮浪者を殺った奴は同じだって話だがな?」
「…殺されたのは吸血鬼と人狼の化け物だって、あの馬鹿馬鹿しいやつか?」
「お前、ガキのクセに醒めてンのな?こういう話はもっと怖がれっての」
「怖いのは人間の方だろ」
一番上までボタンを留めた服の上から首を撫でると、
「・・・ま、お前はそうか…」
レイニーが嫌そうに顔を顰めた。
お前は、と言うレイニーも多分同じだろう。
架空の化け物なんかより・・・オレ達は、人間の方が余程怖い。
「ったく、遅ぇンだよ。チビが」
待ち合わせ到着で早速噛み付かれる。
「そうか?時間の指定はなかったぞ」
「あ?昼前っつっただろがよ?昼前」
「太陽はまだ、真上じゃない」
「っるっせぇな。俺待たせンな。チビが」
この程度はレイニーの挨拶みたいなもの。聞き流せばとうということはない。
「早く来たって暇なだけだろ」
「だから、手前ぇがなかなか来ねぇから俺が暇してたンだっての」
「はいはい」
とはいえ、レイニーよりも早く来てたら来てたで、「ンな面したガキが一人で同じ場所に長時間うろちょろしてンじゃねぇ」とか言うんだろうし…全方位に悪態を吐かずにいられないというのも、なかなか面倒だと思う。
ちなみに、ンな面というのは、綺麗な顔という意味だ。昨日の子は…あの顔は別格だが、オレは観賞に耐えうる顔をしているらしい。あと、ホリィも。
ホリィは、綺麗がちょっと崩れた感じの愛嬌が可愛い系らしい。
オレは綺麗系だそうだ。
ま、顔が良くて得したことはほぼ無いが。
「さっさと見ろよ」
「んー」
レイニーに促され、昼時で人通りの多くなった大通りを見下ろす。
「・・・あっちから歩いて来る労働者風の二人組と、角で酒持ってる奴、道に座ってる浮浪者も、多分ヤバい人」
普通の人に紛れているヤバい人を、なんとなく見分けることができる。
一応、身寄りの無い孤児の必須スキルだが、うちの中では多分、特にレイニーとオレがそういうことに敏感なんだと思う。
レイニーは、三歳くらいで院長に拾われたらしい。
土砂降りの雨の中、それもかなり酷い状態で。
殴られて痣だらけ、そして栄養失調で痩せた身体。昏い瞳で言葉も上手く話せなかったという。
オマケに、名前まで無かったらしい。
虐待と育児放棄。
およそ三歳にしてゴミを漁っていた子供は、その場で院長に拾われ、土砂降りの雨にちなんでレイニーと名付けられたという。
そんなレイニーは、他人の悪意と害意に敏感だ。危なそうな奴も、なんとなく判るという。
オレもまあ、虐待されたからな。
勿論、家でや院長にではない。
数年前まで、ババアが世話している女達の中に質の悪い…というか、ガチでヤバい女がいた。
小さい頃、その女にねちねちといびられたのだ。あの女は首を絞めるのが好きで…一度、マジで死にかけた。
呼吸が止まって息を吹き返さないオレに、その女は半狂乱になって騒ぎを起こしたらしい。
別のねーちゃんに人工呼吸をされて息を吹き返したが、その騒ぎで虐待が発覚。それでその女は、ババアのところを追い出された。
以来、オレもヤバい奴がなんとなく判るようになった。
全く以て自慢できない経緯だ。
スノウ以外はあのことを、みんな知っているし。
「チッ…やっぱ増えてやがるか。あの高利貸し、結構な因業爺だったからな」
レイニーの舌打ち。
「一応、警官も増えてんじゃね?」
「まあな」
「…どっちも捜査中ってやつ?」
殺人事件の。
「…どっちも動いてやがるクセに、まだなんもわかってねぇらしいぜ?普通なら、とっくに参考人くらい見付けてねぇとおかしいンだ。街の人間…堅気の奴なら、警察に。裏の奴なら、犯人は殺されても文句は言えねぇ。それが嫌なら、警察に保護を求める筈だ。それなのに、両方が探しているにも関わらず、まだ情報さえ流れてねぇ。誰かが庇っているか…」
レイニーは言う。
掏摸師だけあって、横の繋がりがあるのだろう。ちなみに、レイニーが掏摸師だと知っているのはオレとホリィだけ。そして、ホリィが美人局をしているのを知っているのも、オレとレイニーだけだ。
他の兄妹は、レイニーとホリィがそれぞれ便利屋をしていると思っている。
あまり家から出ないウェンとチビ共に無駄に心配を掛ける必要もないからな。
あの高利貸しは、かなりあくどいこともしていたようだ。死んで喜ぶ者は多かったが、裏では困る者も少なからずいたらしい。
「庇っているにしても、そういうきな臭い話はどこからか流れて来る筈だが…それも流れねぇ程の箝口令でも敷かれてンのか?ま、高利貸しと犬食いの浮浪者を殺った奴は同じだって話だがな?」
「…殺されたのは吸血鬼と人狼の化け物だって、あの馬鹿馬鹿しいやつか?」
「お前、ガキのクセに醒めてンのな?こういう話はもっと怖がれっての」
「怖いのは人間の方だろ」
一番上までボタンを留めた服の上から首を撫でると、
「・・・ま、お前はそうか…」
レイニーが嫌そうに顔を顰めた。
お前は、と言うレイニーも多分同じだろう。
架空の化け物なんかより・・・オレ達は、人間の方が余程怖い。
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