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ローズが死ぬのが嫌だった。
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「ねぇ、コルドちゃん。知ってるかしら?」
紅い唇が弧を描き、甘ったるい声が言う。
「すごく悪いことをした人は、首を切られて殺されちゃうのよ?死刑なんだって」
愉しげに、クスクスと笑みを含んで。
「赤ちゃんなのに首を切られちゃうだなんて、コルドちゃんはどんな悪いことをしたのかしら?」
首の疵痕を優しく這う細い指先。
「・・・」
黙っていると、リーシュが愛おしげに微笑む。
「きっと、コルドちゃんは生まれたことが間違っていたのよ♥️可哀想にね♪」
慈愛に満ちた顔で、どろどろとした毒々しい言葉を優しく紡ぐ甘ったるい声。
「私はね、そんな惨めで憐れなコルドちゃんが本当に、心の底から大好きなの♥️」
爛れそうな程に熱い愛の言葉。
「愛してるわ♥️愛してる♥️大好き♥️」
甘ったるい声が何度も繰り返し告げ、首に絡んだ指にじわじわと力が籠り・・・
「っ!?」
厭な、夢を見た。最悪だ。
※※※※※※※※※※※※※※※
ローズねーちゃんはお腹を十針も縫う大怪我で全治四週間程。幸い、傷が浅くて内臓も無事。
もっと出血が多かったらヤバかったそうだ。
見習いの娘はやはり頭を殴られていたらしく、たんこぶ一つで全治三日程。一応、頭なので四十八時間は様子見で入院したというが、問題無く退院。
オレは・・・首に引っ掻き傷と爪痕、絞められたことに因る指の形の内出血が沢山と炎症。
内出血には湿布を貼った方が熱と炎症が早く引くが、引っ掻き傷が多くて湿布が貼れないと言われた。
声が潰れて首全体が痛い。外も、中も。呼吸をする度、ヒューヒューと鳴る喘鳴が煩わしい。
唾液を飲み込むのも辛い。
飲食が非常に大変だ。
無論、暫くは喋るの禁止。
熱も出て入院中。
体調も気分も最低最悪だ。
あの忌々しいクソ女め・・・
※※※※※※※※※※※※※※※
熱が下がり、医者の許可の下、警察の取り調べ。
「まずは、君の名前を聞かせてくれるかな?」
怖がらせまいとした…多分、精一杯の優しい口調。ゴツいオッサンの・・・
「・・・」
「おじさんに教えてくれないか?」
「・・・」
「黙っていたらわからないよ?」
と言うので、仕方なく包帯を巻いた首を見せ、口を指して手を横に振る。
「あ~…もしかして、声出ない?」
コクンと頷き、首を仕舞う。
「弱ったな…喋れない子供にどうやって取り調べしろってんだよ?」
ボヤくオッサン。
「二日前の夜、怖いことがあった?」
小さい子供に訊ねるような口調。
この調子で口を開けないままだと、絶対にストレスが溜まる。だから、
「あ、君」
オッサンの後ろで調書を書こうとしている別のオッサンに紙とペンを要求。
「え?なに?欲しいの?紙とペンが?」
うんうん頷く。
「え~と?どうします?」
「渡してやれ」
と、紙とペンをゲット。
『コールド』
「君は、字が書けるのか?」
『yes』
「それなら、君のわかる範囲でいい。二日前の夜のことを教えてくれ」
『二日前の夜、ローズが出掛けるのが見えたので追い掛けた。帰る途中、ローズとその連れが黒尽くめの四人組みに襲われた。笛を鳴らすと、四人は逃げて行った。顔は見てない。その内の一人がリーシュだと推測。二人が倒れていて、ローズが重傷。腹部に刺し傷。着ていたコートで止血。その最中、背後からリーシュに首を絞められた。暫く意識が朦朧。気付くとライに介抱されていた。以上』
「…君は、あの女を知っているのか?」
『カーラの娼館の、五年前までのナンバーワンだった女。そのとき名乗っていた名前はリーシュ。本名は不明』
「五年前?君達は知り合いか?」
『五年程前、リーシュに首を絞められて殺されかけた。そして、ローズに助けられた。その騒ぎが原因でリーシュは娼館を追い出された。リーシュは、ローズを恨んでいる』
「殺されかけた?君が?」
『yes』
「…どうして、二日前は夜中に外へ?」
『ローズが出掛けたから』
「なぜ彼女を追った?」
『危ないと思ったから』
「危ない?理由は?」
『殺人事件。噂のやつ。殺されたのは、みんな化け物の噂があった。吸血鬼、人狼、バンシー。ローズにはサキュバスの噂。夜の外出は危険だと警告はした。だが、ローズの様子から、外出はやめないと思った。拠って、ローズの後をつけた。以上』
「・・・君は、自分がどれだけ危険なことをしたのかわかっているのか?」
オッサンの険しい顔。
『yes』
そんなの、判り切っている。
聞かれるまでも無く、確りと理解している。
『ローズが死ぬのが嫌だった。だから、追い掛けたのは正解だった』
オッサンが渋面を作る。
『ローズは助かった。一応』
「一応?」
『次が無ければ、助かる。だから、早期の犯人逮捕を望む。犯人達はヴァンパイアハンターなんかじゃない。ただの殺人犯だ』
紅い唇が弧を描き、甘ったるい声が言う。
「すごく悪いことをした人は、首を切られて殺されちゃうのよ?死刑なんだって」
愉しげに、クスクスと笑みを含んで。
「赤ちゃんなのに首を切られちゃうだなんて、コルドちゃんはどんな悪いことをしたのかしら?」
首の疵痕を優しく這う細い指先。
「・・・」
黙っていると、リーシュが愛おしげに微笑む。
「きっと、コルドちゃんは生まれたことが間違っていたのよ♥️可哀想にね♪」
慈愛に満ちた顔で、どろどろとした毒々しい言葉を優しく紡ぐ甘ったるい声。
「私はね、そんな惨めで憐れなコルドちゃんが本当に、心の底から大好きなの♥️」
爛れそうな程に熱い愛の言葉。
「愛してるわ♥️愛してる♥️大好き♥️」
甘ったるい声が何度も繰り返し告げ、首に絡んだ指にじわじわと力が籠り・・・
「っ!?」
厭な、夢を見た。最悪だ。
※※※※※※※※※※※※※※※
ローズねーちゃんはお腹を十針も縫う大怪我で全治四週間程。幸い、傷が浅くて内臓も無事。
もっと出血が多かったらヤバかったそうだ。
見習いの娘はやはり頭を殴られていたらしく、たんこぶ一つで全治三日程。一応、頭なので四十八時間は様子見で入院したというが、問題無く退院。
オレは・・・首に引っ掻き傷と爪痕、絞められたことに因る指の形の内出血が沢山と炎症。
内出血には湿布を貼った方が熱と炎症が早く引くが、引っ掻き傷が多くて湿布が貼れないと言われた。
声が潰れて首全体が痛い。外も、中も。呼吸をする度、ヒューヒューと鳴る喘鳴が煩わしい。
唾液を飲み込むのも辛い。
飲食が非常に大変だ。
無論、暫くは喋るの禁止。
熱も出て入院中。
体調も気分も最低最悪だ。
あの忌々しいクソ女め・・・
※※※※※※※※※※※※※※※
熱が下がり、医者の許可の下、警察の取り調べ。
「まずは、君の名前を聞かせてくれるかな?」
怖がらせまいとした…多分、精一杯の優しい口調。ゴツいオッサンの・・・
「・・・」
「おじさんに教えてくれないか?」
「・・・」
「黙っていたらわからないよ?」
と言うので、仕方なく包帯を巻いた首を見せ、口を指して手を横に振る。
「あ~…もしかして、声出ない?」
コクンと頷き、首を仕舞う。
「弱ったな…喋れない子供にどうやって取り調べしろってんだよ?」
ボヤくオッサン。
「二日前の夜、怖いことがあった?」
小さい子供に訊ねるような口調。
この調子で口を開けないままだと、絶対にストレスが溜まる。だから、
「あ、君」
オッサンの後ろで調書を書こうとしている別のオッサンに紙とペンを要求。
「え?なに?欲しいの?紙とペンが?」
うんうん頷く。
「え~と?どうします?」
「渡してやれ」
と、紙とペンをゲット。
『コールド』
「君は、字が書けるのか?」
『yes』
「それなら、君のわかる範囲でいい。二日前の夜のことを教えてくれ」
『二日前の夜、ローズが出掛けるのが見えたので追い掛けた。帰る途中、ローズとその連れが黒尽くめの四人組みに襲われた。笛を鳴らすと、四人は逃げて行った。顔は見てない。その内の一人がリーシュだと推測。二人が倒れていて、ローズが重傷。腹部に刺し傷。着ていたコートで止血。その最中、背後からリーシュに首を絞められた。暫く意識が朦朧。気付くとライに介抱されていた。以上』
「…君は、あの女を知っているのか?」
『カーラの娼館の、五年前までのナンバーワンだった女。そのとき名乗っていた名前はリーシュ。本名は不明』
「五年前?君達は知り合いか?」
『五年程前、リーシュに首を絞められて殺されかけた。そして、ローズに助けられた。その騒ぎが原因でリーシュは娼館を追い出された。リーシュは、ローズを恨んでいる』
「殺されかけた?君が?」
『yes』
「…どうして、二日前は夜中に外へ?」
『ローズが出掛けたから』
「なぜ彼女を追った?」
『危ないと思ったから』
「危ない?理由は?」
『殺人事件。噂のやつ。殺されたのは、みんな化け物の噂があった。吸血鬼、人狼、バンシー。ローズにはサキュバスの噂。夜の外出は危険だと警告はした。だが、ローズの様子から、外出はやめないと思った。拠って、ローズの後をつけた。以上』
「・・・君は、自分がどれだけ危険なことをしたのかわかっているのか?」
オッサンの険しい顔。
『yes』
そんなの、判り切っている。
聞かれるまでも無く、確りと理解している。
『ローズが死ぬのが嫌だった。だから、追い掛けたのは正解だった』
オッサンが渋面を作る。
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